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そもそも、企業というものは社会の一部であり、社会に役立つことによってのみ成り立つ存在だ。あなたの会社の理念や綱領にもそう書かれているのではないだろうか。 その根底には当然、社会と企業との信頼という絆を前提としているはずだ。しかし、今やそこに大きなギャップがあるように感じる。全ての企業人は同時に社会における生活者であるが、企業人としての視点と生活者としての視点は同じレベルにあるだろうか。自分の勤めている会社を一人の生活者として信頼できない人も少なくないかもしれない。もはや売上高や従業員数などの企業規模が信頼の指標になり得ないことは誰もが知っている。企業不信の表現として「顔が見えない」という言葉も多く見かける。果たして企業はどうすれば信頼を得られるのか。 「CSRの訳を企業の社会的“信頼度”と訳してみてはどうか」と提案するのはGRI理事の後藤敏彦氏。たしかに Responsibility には、信頼や信頼性といった意味がある。“責任”という言葉からは「責任を果たすか、果たさないか」という2つの状態のみが連想されるが、“信頼度”はアナログで連続性のある状態がイメージできる。連載が進むにつれ明らかになるはずだが、CSRは「これこれをやっていればOK」という規制遵守的でデジタルな○か×かではなく、他と比較してより高いか低いかといった比較可能なものと捉えるべきである。後藤氏の提案はCSRの本質に迫るものといえる。本稿では、便宜上“CSR”という表記を用いるが、“企業の社会的信頼度”と読み替えていただければと思う。 「CSRとは何か」を考える前に「CSRとは何でないのか」を議論してみたい。(社)経済同友会が2003年3月にまとめた『「市場の進化」と社会的責任経営』という企業白書がある。CSRについて非常に良くまとまっており、A4で220ページを超える冊子だが、PDFで無償配布している。ぜひ入手すべき参考文献である(連絡先などは後述の「読んでおきたい参考文献」参照)。同白書に「わが国における典型的考え方」としてあがっている3点をまず見て欲しい。あなたの考えはいずれかに当てはまっていないだろうか。 ![]() ((社)経済同友会『「市場の進化」と社会的責任経営』P.7より引用) 同白書は以上3点を「いずれもCSRの一部であるが、その本質を表していない」と断じている。つまり、1は「企業の持つ経済的責任を主(社会的責任を従)」と考え、2は「CSRをコスト、フィランソロピー」と考え、3は「CSRを義務的取り組み、法令遵守」と考えているがいずれもではないということである。確かに上記のような考え方をしている企業人は多い。「今は不況で余裕がないからCSRなんてできない」という言葉も良く聞く。私自身、新聞雑誌などで言葉だけを知っていた時期は同じようなイメージを持っていた。しかしそうではないのだ。既成概念にとらわれず、一旦取り払ったところからCSRに向き合っていただきたい。 では、いったいCSRとは何か。 同白書はその答として「CSRの本質」3点をあげている。 |
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| ((社)経済同友会『「市場の進化」と社会的責任経営』P.7より引用) また、麗澤大学の高巌教授らによる『企業の社会的責任』(日本規格協会)には、「CSRとは、企業が、市民、地域、及び、社会を利するような形で、経済上、環境上、社会上の問題に取り組む場合のバランスのとれたアプローチということができよう(P.10)」とある。 これだけの説明では「具体的に何をすればよいのか?」という質問が出そうである。しかし、よく考えると人間関係においても信頼を得るためにどうすれば良いのかというのは簡単に答えられるものではない。日常的な生活の中での他人との関わりから信頼は生まれてくるはず。具体的な何かをしたからといって必ず信頼が得られるとも限らない。高教授も「CSRとは実際に何を指すのか、何に対応しなければならないのかという具体的な定義は、ほとんど不可能であると考えている。なぜならばCSRは、社会または市場との関係においてその内容が決まってくるものだからである。(『企業の社会的責任』P.11)」と書いている。 このようにCSRは、これまで企業が進めてきた環境問題と比べて具体的な課題がわかりにくいという特徴がある。そのため、どうしても人によって考え方に違いが出てくる。信頼を得るべき相手である“社会”には様々な立場があるがそのすべてに対応しようとすると、矛盾が生じてくる場合もある。ある人にとって都合が良いことが別の人にとって不都合であることは良くあることだ。それらをバランス良くそしてケースバイケースで考える必要がある。高度なバランス感覚と判断力・決断力を要するのだ。これはCSRの難しさともいえるが、逆に言えば面白さでもある。どこを探しても答のないこと、他人にとって最良の判断が自分にとってはそうではないことをまず認識して欲しい。難題を解くためのキーワードは、社会との対話である。ステークホルダーとの継続的で密度の高いコミュニケーションによってのみ何をすべきかという答が得られ、また、その対話の過程そのものが信頼度の向上につながる。つまりCSRそのものと捉えられる。 次回以降の連載で、CSRを取り巻く状況について詳しく紹介し、CSRが企業とともに社会をも変えていく考え方であることを示したい。CSRに興味を持った読者はぜひ、後述の参考文献を取り寄せてみて欲しい。 |
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(文責:編集部 大谷)(エコロジーシンフォニー2004年1月号) |
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