第1回 「今、なぜ環境会計なのか」

監査法人トーマツ 榎

 環境庁から、今年3月に「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン案」が公表されてから、「環境会計」という言葉がマスコミで紹介されることが多くなり、「環境会計」に対する問い合わせが非常に多くなりました。その問い合わせのほとんどが「環境会計の早期導入」に関するもので、環境会計を導入すること自体が目的であるかのように思われます。これは、一部のマスコミにより「環境会計」を導入している企業が環境先進企業であるかのような報道がされ、環境庁のガイドラインを導入すれば企業の評価が高くなるといった誤解からくるものと思われます。
 現在、環境会計の統一的な定義はありませんが、実務的には、「環境に関する会計情報の提供ツール」と考えればわかりやすいと思います。もう少し具体的に言えば「環境に関する会計情報」とは、

  1. 環境に関して
  2. どのような項目を
  3. どのような理由で
  4. どれだけ支出、または予定したのか
  5. その効果は
に関する情報と考えられます。

 このように、環境会計は環境保全に関する投入とその成果に関する会計情報を提供するツールですので、何のために環境会計を実施するのかを明確にすることが重要なことになります。つまり、提供される会計情報の利用目的がはっきりしないまま、相当のコストをかけて環境会計を導入し、情報を入手したとしても、どの程度の意義があるのか疑問です。
 企業にとって無関心ではいられないほどに環境保全に関するコストが増加してきている今日において、「環境」というキーワードだけで無制限にコストをかけていたのでは、厳しい経済環境の中で企業が持続的に発展していくことは非常に困難なものと思われます。

 環境に配慮しながら持続的発展を両立するために図に示す「環境経営」を実践する必要があると思われますが、そのために「環境会計」は非常に有効なツールとなります。
 したがって、環境会計を導入する目的としては「最小のコストで最大の効果を上げる」などの「内部管理目的」、あるいは「株主その他投資家、消費者、行政等への開示資料」といった「外部公表目的」が考えられますが、どのように経営に活用するかを企業自身が決定することが大切なことと思われます。
 今、なぜ環境会計なのかをじっくりと考えて、流行に流されるのではなく、意義のある取り組みを実践していくことが環境会計の発展のためにも必要なことではないでしょうか。

(つづく)

榎 宏 (えのき ひろし)略歴

監査法人トーマツ 大阪事務所 社員(パートナー) 公認会計士 会計監査、公開準備企業に対する指導業務等に従事。
その後環境マネジメントシステム導入に関するコンサルティング、環境報告書作成支援及び環境会計導入支援に特化し、環境経営、環境マネジメントシステム、環境報告書及び第三者意見、環境会計等に関する講演、企業内教育の講師、執筆活動を活発に行なっている。
著書:「自治体ISO 14001入門」(共著)、「建設業のISO 14001入門」(共著)、「環境報告書作成マニュアル」(共著)、「トーマツの環境会計入門」(共著)など

(エコロジーシンフォニー99/10月号)



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