OHSAS 18001 利用の手引き
OHSAS 18001が登場する背景
マネジメントシステムの規格がISOのヒット製品になったのを受けて、次にニーズがあると思われる「労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)」の国際規格化が1994年にカナダから提案されています。このとき参考にされたのが、やはり英国の国家規格BS 8800(Guide to occupational health and safety management systems)です。これが実現すれば、ISO 16000シリーズが割り当てられることになっていたようです。
日本でも通産省(当時)は推進する立場を示す一方、労働省(当時)・中央労働災害防止協会、日経連、連合などは「時期尚早」として賛成していませんでした。とはいえ労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格化ニーズがまったくないわけではないので、いずれまた俎板(まないた)に載せられるかも知れません。そのとき、この国際規格化は引き続きISOが取扱うのか、ILO(国際労働機構)になるのか、懸案事項になっています。
日本国内においても1999年4月に「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が労働省告示第53号として発表されています。これは仕様規格ではないため、審査登録制度に用いることを意図したものではありません。
ISO 14001のPDCAモデル
これにはアイルランド、南アフリカ、英国、日本の規格協会のほか、DNV、ロイド、SFS、SGS、TUVなどの審査登録機関、中央労働災害防止協会、高圧ガス保安協会、テクノファ、その他の有志機関が参加しました。したがってこの規格はISOの国際規格になっているわけではありません。
JAB(日本適合性認定協会)は国際規格にならないと取り扱わないようなので、JABから認定を受けたOHSAS 18001の審査登録機関というのは存在しません。審査登録を受ける場合には、UKAS(英国)やRvA(オランダ)など海外の認定機関から認定を受けた審査登録機関を選ぶ必要があります(または承知の上で無認定の審査登録機関を選ぶことになります)。
このOHSAS 18001は1999年4月に発行され、BS 8800を参考にしてISO 14001(1996年版)とISO 9001(1994年版)との両立性を意識して開発されました。とりわけ、規格要求事項や規格構成の上ではISO 14001と類似性が高いものになっており、P(Plan)−D(Do)−C(Check)−A(Act)のパートに分けて規格が書かれています。
ベースになったISO 14001は、その後の2004年11月に改訂されましたので、両規格の両立性・整合性を確保するためにOHSAS 18001の内容もそれに合わせて改訂作業が始められているようです。また、この機会にあわせて、英国規格協会ではISO事務局に対して労働安全衛生マネジメントシステムを国際規格化するために、再度WG(作業委員会)の設置を提案しているもようです。
その結果としてOHSAS 18001(1999年版)がいつどのように改訂されるのか、あるいはどのような規格に変るのか確かなことは分かりませんが、ISO 14001(2004年版)と類似した改訂内容になるのではないか、と思われます。2006年夏ごろまでにはOHSAS 18001改訂版のドラフトが発行されると見られています。
また、大きな流れとして、OHSMSのISO規格化がまた審議されています。これまでISO規格化については2回僅差で否決されていますが、前回までは反対していた国が賛成に回る動きもあり、情勢が規格化賛成過半数に変るかも知れません。
規格のシリーズ
マネジメントシステムの規格は、英国の国家規格であるBS 5750(Quality systems)のPart 1が1987年にISO 9001規格になったのが、国際的に登場した発端と言えるでしょう。それに次いで、英国の国家規格BS 7750(Environmental management systems)がベースになり、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO 14001が1996年に誕生しました。
しかし、1996年9月にロンドンで開催されたISOワーキンググループでは「時期尚早」との意見が多く、国際規格化の是非の最終判断はTMB(技術管理評議会)に委ねられ、結局、1997年2月になって正式に検討の棚上げ(見送り)が決まったのです。
その理由として
労働安全衛生マネジメントシステムの規格は、国際的コンソーシアムによってOHSAS 18001(Occupational health and safety management systems−Specifications)として開発されました。審査登録制度に使える労働安全衛生のシステム規格がぜひ欲しい、という各国関係者からの強い要請を受けて作られたものです。
日本規格協会ではOHSAS翻訳委員会と合同で、2005年6月に改訂作業について検討する準備に入ったとされています。さらに、厚生労働省、経済産業省、その他の関係機関と情報交換を行い、今後の対応を協議するようです。
OHSAS 18000シリーズ規格には次の2つがあります。
| 労働安全衛生マネジメントシステム要求事項−仕様 |
|---|
以下に示す内容は、OHSAS 18001の概要・概説です。とくに黒字で記載した部分は要求事項を説明したものであり、青字で記載した部分はシステム構築・実施運用のための解説・コメントです。
規格の内容そのものは、OHSAS 18001(労働安全衛生マネジメントシステム要求事項−仕様)を参照ください。
1 適用範囲
(概要は省略)目を通すべき内容が書かれているため、OHSAS 18001の規格を参照すること。
職場の労働安全衛生のリスクを管理し、そのパフォーマンス(労働安全衛生マネジメントシステムによって労災や事故がどのくらい低減されたかの成果・出来ばえ・実績のこと、3 用語と定義 3.13を参照)を向上させるためにこの規格が使えるとして、どのような適用が出来るか箇条書きされている。その内容はISO 14001の「適用範囲」に書かれていることと類似しており、審査登録のためのほか、自己宣言(自己適合宣言)にも利用できることが示唆されている。
自己宣言の事例はISO 14001ではちらほら見られるが、OHSAS 18001に適合していることの自己宣言はまだ事例がない。OHSAS 18001の認証を取得する方法はとらず、自主的にこの規格を利用し、この規格への適合性を自らの責任で検証・評価し、経営者が対内的・対外的に適合宣言する道もあるわけ。そうすれば審査登録のための費用はかからずに済み、職場の労災や事故の低減・防止に役立てられるのではないか、と思われる。
2 参考出版物
4 労働安全衛生マネジメントシステムの要素
4.1 一般要求事項
組織は、労働安全衛生マネジメントシステムを構築し、維持すること。その要求事項は4章に示してある。
ISO 14001:1996と同様の表現になっており、全般論的な記述となっている。
4.2 労働安全衛生方針
組織の最高経営層によって承認された労働安全衛生方針が存在しなければならず、その中には全体的な労働安全衛生の目標と、そのパフォーマンスを改善することの約束(コミットメント)を明確に陳述していなければならない。
また、この方針には次のことが求められている。
4.3 計画
4.3.1 危険源の特定・リスクアセスメント・リスク管理の計画
組織は、危険源の継続的な特定、リスクアセスメント、必要な管理手段の実施のための手順を用意すること。
危険源の継続的な特定、リスクアセスメント、必要な管理手段の実施のための「手順」が求められている。ここでいう継続的な(ongoing)の「オンゴーイング」とは継続させることであり、途絶えたり後退させないことを意味する。
これらの手順には、次の事項が含まれていること。
これらのリスクアセスメントの結果と管理活動の効果は、労働安全衛生の目標を設定する際に確実に配慮すること。
したがって目標の設定には、リスク管理活動によってどこまで達成すべきかも含めるようにすること。
また、この情報は文書化し、常に最新の状態に保つこと。
危険源の特定とリスクアセスメントの方法は、次のとおりであること。
4.3.2 法的及びその他の要求事項
組織は、適用可能な法的要求事項とその他の労働安全衛生の要求事項を特定し、参照するための手順を用意しなければならない。
ここの要求事項はISO 14001:1996とほぼ同じ内容となっており、法的要求事項(その他の要求事項を含む)には何があるのか、それを特定する「手順」が求められている。その他の要求事項には、条例・協定・労使協約・覚書・業界の取決めのほか、対外的に公約した順守事項も含まれる。また、それらの情報を関係者に閲覧できるようにしてやることも必要である。
この情報は最新の状態に保つこと。また、法的およびその他の要求事項についての関連情報を従業員と関係する利害関係者に周知すること。
こうして特定した労働安全衛生に関する法的要求事項/その他の要求事項は、従業員を含む関係者に周知させる義務がある。
4.3.3 目標
組織は、組織内の関連する各部門及び階層で、文書化した労働安全衛生の目標を用意しなければならない。
備考:目標は実施可能な限り定量化することが望ましい。
その目標を設定し見直す場合には、組織は法的およびその他の要求事項、労働安全衛生の危険源とリスク、技術上の選択肢、財政上、運用上、事業上の要求事項、利害関係者の見解に配慮しなければならない。
危険源とリスク、法的要求事項(その他の要求事項を含む)が特定できれば、それを考慮に入れて達成目標を定め、労働安全衛生マネジメントシステム(4.3.4参照)を作成して取り組めるようにする。この目標設定では、技術上の選択肢、財政上・運用上・事業上の要求事項、利害関係者の見解にも考慮する必要がある。
この目標はJIS訳では「関連する各部門及び階層」で必要と表現されているが、どの部門・階層でも一様に(すべて)要るというわけではなく、関連するところだけでよい。
備考には目標は定量化するように書かれており、達成状況が客観的に評価できるためには可能な限りそうすべきである。曖昧で抽象的でキャッチフレーズ的な目標では、得にならない。自分の首を絞めないように、達成状況がどうにでも評価できる曖昧な設定の目標を掲げている組織があるが、何のためのシステムであるかを考えると、結局は損である。
この目標は、継続的改善の約束を含めて、労働安全衛生方針に整合していること。
目標は継続的改善の約束(コミットメント)と併せて労働安全衛生方針と整合がとれているようにすること。つまり目標を達成することが、方針に沿うようになればよい。
4.3.4 労働安全衛生マネジメントプログラム
組織は、目標を達成するための労働安全衛生マネジメントプログラムを策定し、維持すること。これには次の事項を文書化することを含める。
労働安全衛生マネジメントプログラムは、定期的で計画された間隔で見直しをすること。必要な場合には、労働安全衛生マネジメントプログラムは、組織の活動・製品・サービス・運用条件に見合った変更ができるように修正すること。
このマネジメントプログラムは「定期的」で「計画された」間隔で見直すことが求められている。
4.4 実施及び運用
4.4.1 体制及び責任
組織は、労働安全衛生マネジメントを促進するために、組織の活動、施設、プロセスの労働安全衛生リスクに影響を及ぼす活動を管理し、遂行し、検証する要員の役割・責任・権限を定め、文書化し、周知すること。
組織(とくに役員や管理者)には労働安全衛生マネジメントシステムを実施運営し、労働安全衛生リスクを管理して目標を達成し、労働安全衛生パフォーマンスを改善するのに必要な経営資源を投入することが求められている。
労働安全衛生の最終責任は、最高経営者にある。労働安全衛生マネジメントシステムが組織内で運用されるすべての場所・領域で要求事項が適切に実施され、遂行されることを確実にするために、最高経営層(たとえば大規模組織においては理事や執行委員)から特別な責任をもたせた一員(労働安全衛生管理責任者)を指名する。
さらに役員や理事など最高経営層の中から管理責任者を任命し、労働安全衛生マネジメントシステムの構築、実施運用、維持を(最高経営層の代表として)務めさせるほか、その実施状況(成果)を最高経営層に報告させることが求められている。
経営層は、労働安全衛生マネジメントシステムの実施、管理、改善に不可欠な経営資源を用意しなければならない。
経営資源はヒト・モノ・カネだとよく言われるが、それだけではない。組織体制、技術・技能・技法、手順・基準、ノウハウ・情報、通信・伝達、作業環境、時間などソフト面も整備する必要がある。
経営層の指名者(労働安全衛生管理責任者)には、次の事項のための明確な役割・責任・権限を付与すること。
JIS訳では「経営管理責任を担うすべての者は、労働安全衛生パフォーマンスの継続的改善への関与を身をもって示さなければならない」となっているが、関与の原語はコミットメントである。最高経営層の面々は、労働安全衛生パフォーマンスを改善することに重要な責務(コミットメント)を負っており、そのことが「身をもって示さなければならない」と訳されているように、はっきりと示す(納得させられる)ことができなければならない。それだけ最高経営層には労働安全衛生に対する強い意識・責務・自覚が求められている。
4.4.2 訓練、自覚及び能力
職場で労働安全衛生に影響を及ぼす作業を遂行する要員は、能力があること。この能力は適切な教育、訓練、経験という点で明確にしなければならない。
ここでは労働安全衛生に影響を及ぼす職務(作業)に従事する要員には、それにふさわしい「能力」を持っていることが求められている。能力はISO 9001:2000やISO 14001:2004では「力量」と翻訳されており、「知識及び技能を適用するための実証された能力」つまり職務遂行能力(職能)のことで、適切な教育・訓練・経験などに裏づけされたものでなければならない。
組織は、関連する各部門及び階層で、そこで働く従業員が次の事項について自覚することを確実にするための手順を用意すること。
訓練の手順は、次のレベルの違いを考慮に入れること。
4.4.3 協議及びコミュニケーション
組織は、関係する労働安全衛生の情報を従業員及びその他の利害関係者に通知・聴取することを、確実ならしめる手順を用意すること。
従業員の参画と協議に関する取決めは、文書化し、利害関係者に周知しなければならない。
労働安全衛生に関する情報を従業員および他の利害関係者に周知させるとともに、吸い上げる手順を用意することが求められている。また、従業員が労働安全衛生に関するどのような取組みに参画し、労働協議などではどのような話になったのか、それらの取決めは文書に定め、利害関係者に周知する必要がある。次の要求事項も参考にすること。
従業員に対しては次のことが求められている。
労働安全衛生のマネジメントシステムにはシステム文書を用意することが求められており、その規定内容はISO 14001:1996とほぼ同じである。必ずしも「労働安全衛生マニュアル」を作成し、OHSAS 18001で規定されたことを労働安全衛生マニュアル(あるいは下位規定)に漏れなく定めることが求められているわけではない。備考にも、そのような注意が書かれている。
なお、「関連する文書のつながりを示す」とは「関連する文書を示唆してやる」「関連する文書には何があるのか分かるようにしてやる」ことを意味する。
4.4.5 文書及びデータ管理
組織は、次のことを確実にするために、この労働安全衛生の仕様(規格)で要求されている文書及びデータを管理する手順を用意すること。
4.4.6 運用管理
組織は、特定されたリスクを伴、管理手段の適用が必要な運用及び活動を明らかにする。
労働安全衛生リスクを伴う運用・活動(管理手段を適用する必要があるところ)には何があるのか、特定することが求められている。たとえば、運用では重機やシアリングマシンの運転操作であるとか、活動では高所作業やタンク内洗浄のような活動があげられる。
組織は、次の事項によって、メンテナンスを含むこれらの活動が所定の条件下で実施されることを確実にする。
単純で安全な作業(運用・活動)ならともかく、所定の手順で確実に実施しないと労働安全衛生リスクが労災につながり、方針・目標から逸脱することになりかねない場合は、運用手順書を用意することが求められている。
4.4.7 緊急事態への準備及び対応
組織は、次のことに対する「計画」と「手順」の両方を用意すること。
・潜在的な事故誘因と緊急事態には何があるかを特定する
・特定された潜在的な事故誘因と緊急事態に対応する
・それらに伴って生じるかも知れない病気や傷害を予防する
・それらが生じたときには緩和する(被害の拡大を食い止める)
組織は、緊急事態への準備、および対応「計画」と「手順」は見直しをすること。とりわけ事故誘因と緊急事態が発生した場合には必要である。
組織は、可能な場合には、このような手順は定期的にテストしなければならない。
事故誘因と緊急事態に対して求められているのは、これらに対応する「計画」と「手順」であることに注意のこと。
これらの「計画」と「手順」は適宜その内容が妥当で適切なものであるかを点検し見直さなければならない。事故誘因と緊急事態が現実に発生してしまった場合には、点検見直しが不可欠である。JIS訳では「不測の出来事」と記載してあるのは事故誘因を意味する。
「テスト」はあくまでもテストであって、上記の手順が妥当で適切に機能するものであるのか、テストによって確かめ、検証することを指す。
訓練することではないので注意のこと。
4.5 点検及び是正処置
4.5.1 パフォーマンスの測定とモニタリング
組織は、労働安全衛生パフォーマンスを定常的に監視・測定するための手順を用意すること。これらの手順には、次の事項が示されていること。
監視機器がパフォーマンスの監視・測定に必要な場合には、組織はそのような機器の校正とメンテナンスのための手順を用意すること。
校正及びメンテナンス活動と結果の記録は、保持すること。
監視機器の校正とメンテナンスをするための手順が求められており、それに関する記録を残すことも必要とされている。OHSAS 18001では、ISO 14001と同様に監視機器・測定機器の校正に関する要求事項は極めて簡素で、あっさりしたものである。ISO 9001:2000の場合とは比べものにならないほどである(ISO 9001:1987/1994では要求がもっと過大であった)。
4.5.2 事故、事故誘因、不適合、並びに是正及び予防処置
組織は、次の事項についての責任・権限を明確にする手順を用意すること。
是正処置/予防処置によって講じる処置(再発防止策/未然防止策)が提起されたとき、それを実施に移す前に4.3.1 危険源の特定・リスクアセスメント・リスク管理の計画などで定められた手順にもとづいてどの程度効果があるものなのかを点検・評価し、必要であれば見直しをしなければならない。効果が不十分と評価されたときは、そのリスクが許容可能な水準以下に収まるように処置内容を再検討すべきである。
顕在化した不適合、および潜在化した不適合の原因を除去するためにとられた、あらゆる是正処置、予防処置は問題の大きさに見合い、遭遇する労働安全衛生のリスクに釣り合ったものであること。
是正処置/予防処置は、再発防止/未然防止に効果がなくてはならない。しかし、その処置を完全に実施しようとすれば多大の経営資源が必要になることもありえる。どのような是正処置/予防処置も、それによって得られる効果と釣り合う程度のところで手を止めればよい。どのあたりが「問題の大きさに見合い遭遇するリスクに釣り合ったもの」になるかは、組織の合理的な判断で決めればよい。
組織は、是正処置および予防処置から来る結果としてのあらゆる変更は、文書化した手順に反映し記録しなければならない。
是正処置も予防処置も、それが再発防止/未然防止として効き目を現すためには、あるいは顕在的/潜在的な不適合の「原因」の除去になっていれば、労働安全衛生マネジメントシステムの弱点・不備・欠点・欠陥に手を打つような処置内容になる。これは労働安全衛生マニュアル、関連手順書、その他のシステム文書や取決め(文書)を手直しになることを意味する。
すなわち、是正処置/予防処置を正規に(完全な形で)実施すれば、文書化した手順の新規作成や変更(改訂)する結果となるのがふつうである。
4.5.3 記録及び記録の管理
組織は、監査と見直しの結果とともに、労働安全衛生の記録の特定、維持、廃棄のための手順を用意すること。
記録として残すべき「監査と見直し」にある監査とは、4.5.4の内部監査のことを指している。また、見直しは4.6 経営層による見直しが重要なひとつになる(それ以外にもありうる)。
労働安全衛生マネジメントシステムを運用した結果として、どのような記録を残すべきか、それをまず「特定」しなければならない。「廃棄(disposition)」とは、用済みの記録を最後はどうするのか、最終処分を決めることを指す。必ずしも廃棄になるとは限らない。
記録は、文字が判読でき、識別可能であり、関連した活動に追跡可能でなければならない。また記録は容易に検索(取出し)でき、損傷、劣化、紛失に対して保護できるように保管し、維持すること。保管期間を定め、記録すること。
記録と記録の管理に求められていることは、ISO 14001:1996とほぼ同様であり、ISO 14001:2004とISO 9001:2000ともかなり整合している。ISO 9001:2000と違う点は、これらの記録には「追跡性」も求められていることである。
記録は、このシステムと組織に相応しく、この労働安全衛生の仕様(規格)への適合を実証するために維持すること。
OHSAS 18001への適合性を実証すために、どのような記録をどれだけ残すべきかは、構築した労働安全衛生マネジメントシステムと組織の状況に応じて決まるものなのである。
4.5.4 監査
組織は、次のことを行うために、実施すべき定期的な労働安全衛生マネジメントシステム監査のプログラムと手順を用意すること。
監査プログラムは、あらゆる予定を含めて、組織の活動のリスクアセスメントの結果と前回までの監査結果にもとづくこと。監査手順には、監査を行い結果を報告するための責任と要求事項とともに、監査範囲、頻度、方法、能力を含めること。
可能な限り、監査は監査される活動に直接の責任をもたない独立した要員によって実施すること。
備考:「独立した」という用語は、必ずしも組織外であることを意味しない。
監査プログラムと監査手順については、ISO 19011:2002(品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針)に参考になる情報が書かれている。
4.6 経営層による見直し
組織の最高経営層は、組織が定めた間隔で労働安全衛生マネジメントシステムの見直しをすること。その見直しは、労働安全衛生マネジメントシステムが継続して適切で、妥当で、有効なものであることを確実にするために行う。
組織の最高経営層の重要な責務は、労働安全衛生方針を掲げ、それが達成できるように目標を策定させる。そして管理責任者を任命して労働安全衛生マネジメントシステムの構築と実施運用を担わせ、必要な経営資源を用意することであるが、システムが回転するようになれば、システムが一巡した最後に最高経営者の目でシステムの点検・見直しをしなければならない。それがマネジメントレビュー(経営者による見直し)である。
ここで言う適切とは、労働安全衛生マネジメントシステムが組織の目的(方針を策定し目標を掲げそれを達成すること、以って労働安全衛生パフォーマンスを向上させること)にぴったりと合い適正であること。妥当とは、労働安全衛生マネジメントシステムが(組織の目的を達成するのに)量的にも質的にも過不足がないこと。有効とは、労働安全衛生マネジメントシステムの実施によって見込みどおりの結果を出せること、である。
経営層による見直しのプロセスでは、経営層がこの評価を実施できるように、必要な情報を収集することを確実ならしめること。この見直しは文書化すること。
経営層による見直しは、労働安全衛生監査の結果、変化している周囲の状況、継続的改善の約束(コミットメント)に照らし合わせて、方針、目標、労働安全衛生マネジメントシステムのその他の要素の変更の必要性を指し示していなければならない。
この見直しをすれば、最高経営層としての決定事項・処置事項を明らかにしなければならない。すなわち、方針・目標・労働安全衛生マネジメントシステムは現状のままでよいのか、変更・修正の必要があるのなら、それは何(どこ)でどのようにすべきか、などである。
