ISO 9001:2008(JIS Q 9001:2008)の解説 作成:2009年1月12日
1.今回の規格の追補改正の目的
ISO 9001:2008は、次のことを目的にISO 9001:2000から改正されました。
2.今回の追補改正に対する対応
ISO 9001:2000(JISQ 9001:2000)で既に認証を取得している会社では、ISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)に適合した品質マネジメントシステムに(必要によって)修正し、なるべく直近のサーベイランスまたは再認証審査でその評価検証を受けてISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)に対応した認証に移行(切り替え)をしなければなりません。
(注)ISO 9000(JISQ 9000)は、2005年版が適用対象になります。
1.で説明したように、今回の改正では要求事項の追加変更はないはずですが、もしISO 9001:2000(JISQ 9001:2000)の要求事項に解釈の齟齬(食い違い)があって現状の品質マネジメントシステムに見直しが必要な場合には、ISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)をよく理解した上で品質マネジメントシステムの修正を行い、それに伴ってシステム文書(品質マネジメントシステムや関連手順書など)を改訂してください。
そのもとに移行審査(サーベイランスまたは再認証審査)を受ける必要があります。
(注)追補改正版は日本規格協会発行のJISQ 9001:2008「品質マネジメントシステム―要求事項」または「対訳 ISO9001:2008 品質マネジメントの国際規格 ポケット版」(2009年1月23日発売)をご利用ください。大きな書店で入手可能です。また「英和対訳版 Quality management systems -- Requirements 品質マネジメントシステム−要求事項」(第4版)もお薦めです。
ISO 9001:2008が正式に発行された日(2008年11月15日)から1年を経た日以降は、新規の審査であれサーベイランスであれ再認証審査であれ、すべてISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)に基づいて審査されることになります(すなわち1年後の審査はすべて2008年版に基づいて行われるとになります)。
また、同2年以降はISO 9001:2000(JISQ 9001:2000)のままの認証はすべて失効します。したがって認証の移行(切り替え)は2008年11月15日から2年以内に済まさなければなりません。この移行審査の実施可能な期間は、認証機関(審査機関)の準備状況や移行手続きにかかる日程によって異なりますので、それぞれの認証機関にお確かめください。
サーベイランスまたは再認証審査の中で合わせて行われる移行審査では、通常の審査工数に追加はないものと思われますが、この点もそれぞれの認証機関にお確かめください。
なお、ISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)に移行(切り替え)に必要な運用実績の期間はとくに求められていません。
(注)内部監査を2008年版に対応させるための内部監査員の追補研修については内部監査員再トレーニングを参照ください。アイソ・ワールド株式会社ではISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)対応できるように内部監査員に対して追補研修(半日、\84,000)を行っています。
3.今回の追補改正の内容
「まえがき」と「序文」の内容も一部が変更されていますが、ここでは「品質マネジメントシステム−要求事項」の1章から8章までの追補改正の内容を説明します。要求事項の詳細はISO 9001:2008(JISQ 9001:2008)を参照ください。ここでは要求事項の全てを詳述しておりません。
この中で「解説」と記載したものは、アイソ・ワールド株式会社が独自にコメントしたものであることをお断りしておきます。
原文(英文)でも要求事項が分かりやいように主語を入れ替えて書き直されている部分があり、全般に明瞭な表現に変わっています。また「文書化された手順」が必要なところ(6箇所)のうち5箇所は原文(英文)ではa documented procedure shall be establishedというように統一した表現に変わっています(JISQ 9001:2008ではそのような改善が分かりにくいかも知れませんが)。それ以外にも主語を入れ替えて、分かりやすい表現に改めている部分があります。
注記(NOTE)が増えて規格要求事項の解釈がしやすくなっているのは、先の説明のとおりです。
サロンで議論の2008年版のやぶ睨みも参照ください。
1 適用範囲
1.1 一般
a)とb)でISO 9001:2000(JISQ 9001:2008)では規制要求事項(regulatory requirements)と表現されていたものが全て法令・規制要求事項(regulatory and statutory requirements)に変わっています。これは1章から8章まで一貫した表現になるように修正したもので、実質的な変更はありません。
また注記(NOTE)1にb)項が加わり、「製品」という用語は製品実現プロセスからの結果であるすべての意図したアウトプットにも適用されるとの説明が入りました。
さらに注記(NOTE)2が加わり、上記のとおり、法令・規制要求事項は法的要求事項と表現することもある、とも説明しています。
解説:すべての意図したアウトプットとは、製品実現プロセスから発生した不要物・廃棄物や意図しない産出物には、この規格は適用しないという意味です。
2 引用規格
引用規格にはISO 9000:2005(品質マネジメントシステム−基本及び用語)が適用されるように変わりました。また供給者などの用語の説明は省かれています。
解説:引用規格はNormative referenceであり、この引用規格の該当部分は適用の対象になります(単なる参考規格ではありません)。
4.1 一般
原文(英文)ではa)項のidentifyがISO 9001:2008ではdetermineに変わりました(JISQ 9001:2008では表現は不変です)。
解説:JISでは「明確にする」となっていますが、どちらかというと「確定する」という意味です。
また、e)項の測定(measure)にはISO 9001:2008(JIS Q 9001:2008)で「適用可能な場合には(applicable)」という限定が入りました。適用可能な(または該当する)場合は測定が求められています。
アウトソースの記述では、管理にはthe type and extent(方式と程度)が修飾に付け加えられました。
解説:アウトソースに適用される管理の「方式及び程度」とは、「どのような方法で、どこまで深く踏み込んで」管理するか、という意味です。
また、注記(NOTE)2と3が書き加えられ、アウトソースの考え方がより明確になっています。
解説:注記3がとくに参考になります。
4.2.1 一般
c)項としてISO 9001:2008(JIS Q 9001:2008)が要求する文書化された手順のほか「記録」も文書の対象となる表現になりました。代わりにe)項の記録に関する事項が削除されました。
また、d)項の表現が少し書き変えられ、プロセスの効果的な計画・運用・管理を確実にするのに必要な文書だけではなく「記録」も組織が必要なものを特定して、管理の対象にすることが求められています。
そのほか注記(NOTE)1が書き加えられ、「文書化された手順」の説明がされています。
解説:必要な記録はここで規定されており、その記録の管理については4.2.4で規定されています。
4.2.3 文書管理
f)項が書き加えられて、管理すべき外部文書は「品質マネジメントシステムの計画と運用に不可欠と組織が確定した外部文書」と表現されました。
解説:外部文書として管理すべきものは何であるかは、品質マネジメントシステムの計画と運用に必要なものとして組織が判断して決めなければなりません。
4.2.4 記録の管理
表現が整理されてより簡潔になっています。「作成することにした記録」は管理しなければならないという表現になり、ISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)にあった維持という表現は消えました。
記述文章の並びは変わりましたが、実質的な変更はありません。
解説:維持は保管、保護、廃棄(処分)に含まれると見られます。
5.5.2 管理責任者
管理責任者は「組織の管理者」から決めるように明記されました。
解説:管理責任者はその組織にいる者から選び出すことになります。社外コンサルタントのような外部の人材は登用できないことになります。しかしパートタイマーの役職者や契約した社外役員なら認められるかというと、その判断は微妙です。管理責任者に要求されている責務が効果的に遂行できるかどうかによるでしょう。
管理責任者の「任命書」が要求されているわけではありません。規格を過大に解釈してはいけません。
6.2.1 一般
力量が求められる要員は、「製品要求事項への適合」に影響がある仕事(work)を行う要員、という具合に明確な規定に変わりました。ISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)の「製品品質に影響がある仕事」ではどんな仕事がどの範囲まで対象となるか、曖昧でした。
また注記(NOTE)が書き加えられて「製品要求事項への適合に影響がある仕事」にさらに説明が入り、この適合性は品質マネジメントシステムにおける仕事(task)を行う要員によって直接、間接に影響を受けることがある、としています。
解説:原文(英文)に書かれているworkとtaskは異なり、workは広い意味での仕事を指し、taskはそれぞれの要員に割り当てられた遂行すべき職務を言います。
6.2.2 力量、訓練(教育訓練)及び自覚(認識)
a)項では6.2.1の表現修正にあわせて「製品要求事項への適合」に影響のある仕事に従事する要員に対して力量を明確にするように表現が修正されました。
またb)項では、力量を達成するのに訓練をするように分かりやすく表現され、それも該当する場合(applicable)には、との縛りが書き加えられました。
6.3 インフラストラクチャー
c)項に、この情報化時代にあわせて「情報システム」も支援システムに追加されました。
6.4 作業環境
注記(NOTE)の説明が追記されました。作業環境は、ISO 9000:2000(JIS Q 9001:2000)の作業環境の用語の定義と似ていますが、より具体的で現実的なものが例示として上げられています。
解説:労働安全衛生に関わる作業環境は労働安全衛生マネジメントシステムで扱うべき問題であり、ここには含まれません。
7.1 製品実現
c)項には、監視(monitoring)以外に漏れていた測定(measurement)も書き加えられ、規格全体の整合が図られました。
7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化
注記(NOTE)が書き加えられ、引渡し後の活動の例が説明されています。
7.3.1 設計・開発の計画
注記(NOTE)が書き加えられ、レビュー・検証・妥当性確認はそれぞれ異なった(個別の)目的をもっているが、実施面では個々に行っても組み合わせて行ってもよい、と説明しています。
解説:レビュー・検証・妥当性確認は組み合わせて(一緒に、あるいは連続して)行っても構いませんが、同じ目的のものであってはいけません。当然、内容は異なります。
7.3.3 設計からのアウトプット
設計・開発からのアウトプットはインプットに対してISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)では「検証可能な」形式であることから、ISO 9001:2008(JIS Q 9001:2008)では「検証に適した形式」であるように表現が修正されました。
また、注記(NOTE)が書き加えられて、製造およびサービス提供に対する情報には製品の保存に関する詳細もあるであろうことが説明されています。
解説:注記(NOTE)からすると、製品の包装・梱包に関する情報も必要に応じて7.3.3に含めて管理するのがよいことになります。
7.5.1 製造及びサービス提供の管理
d)項で原文(英文)では監視機器・測定機器にdeviceという用語が使われていましたが、これがequipmentに変わりました。これは規格全体を通して使用用語の統一を図ったものです。実質的な変更はありません。
また、f)項ではリリースは「製品のリリース」という縛りがかけられました。
7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認
2つの文節がひとつながりに表現修正され、「それ以降の監視・測定で検証が不可能であり、その結果として製品が使用され、サービスが提供された後でしか不具合が顕在化しない場合」に妥当性確認がいることになりました。
解説:プロセスの妥当性確認が必要な場合がより限定されたとも受け取れます。ここの要求事項は、「品質の作り込み」という概念を理解すれば理解しやすくなります。
7.5.3 識別及びトレーサビリティ
製品の識別は「製品実現の全過程において」行うように、より明確な表現に修正されました。
7.5.4 顧客の所有物
規定文の表現だけが修正されました。実質的な変更はありません。
また、注記(NOTE)に顧客の所有物には個人情報も含めてよいことが付け加えられました。
7.5.5 製品の保存
ISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)の原文(英文)では製品の適合性の保存(preserve the conformity of product)という変な表現になっていたところが修正され、製品要求事項への適合を維持するために製品を保存するように書き改められました。
また、この保存には「該当する場合(適用可能な場合)」と限定が付け加えられました。
7.6 監視機器及び測定機器の管理
7.5.1にもあったように、原文(英文)に使われていたdeviceという用語が全てequipmentに統一されました。意味はどちらも意味は似たようなもので、これによる実質的な変更はありません。
また、a)項でISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)では校正又は検証とあったのが、ISO 9001:2008(JIS Q 9001:2008)では校正又は検証あるいはその両方と明確に記述されました。
さらにc)項が素直な表現に書き直されましたが、意味はまったく変わっていません。
なお、ISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)にあった参考(NOTE)「ISO 10012-1とISO 10012-2を参照すること」は、これらが既に廃版になっていることから削除されました。
8.2.1 顧客満足
注記(NOTE)が書き加えられ、顧客満足の情報を入手する方法の例が説明されています。
8.2.2 内部監査
「文書化された手順」を確立することについて、規定の表現が見直され主語が入れ替わりました。これによる実質的な意味はまったく変わっていません。
また、監査とその結果の記録は維持しなければならない、とより明確に言い切るように表現が書き加えられました。
さらに、検出された不適合とその原因の除去にISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)では処置をとるように曖昧な表現になっていましたが、処置が修正と是正処置と書かれ、不適合の除去は修正、原因の除去には是正処置であることが明確に表現されるようになりました。
注記(NOTE)の内容もISO 19011を参照するように見直し修正されました。
8.2.3 プロセスの監視及び測定
計画どおりの結果が達成できない場合にとる修正及び是正処置について、ISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)では「製品の適合性を確保するために(保証のために)」と書かれていたくどい表現が削除されました。
また注記(NOTE)が書き加えられ、プロセスの監視・測定の方法を決定するときは、製品要求事項への適合に与える影響、品質マネジメントシステムの有効性への影響に応じて、監視・測定の方式及び程度(つまりどんな方法でどこまで深く踏みこんで行うか)を適切に考えるようにとアドバイスしています。
8.2.4 製品の監視及び測定
製品のリリースを許可する人の明記は、顧客への引渡しの場合に限定されました。
また、個別製品の実現の計画で決めたことが問題なく完了するまで製品のリリース及びサービスの提供を進行させてはならないという制限は、顧客への引渡し(出荷)に限定されました。
解説:次工程への引渡しはこの規定の制約を受けないことになります。
規格要求事項の上では顧客に納入・引渡し・提供する最終的な製品に関してのリリース許可の記録が求められていますが、中間工程の製品の監視・測定(検査・試験などを含む)の記録は要らない、と考えるのは必ずしも適切ではありません。4.2.1のd)項にもあるように、「プロセスの効果的な計画・運用・管理を確実にするため」に作成すべき記録はあるはずです。
また、合否判定基準への適合の証拠は、必ずしも記録として残すことを(業種の性格によって)求められているわけではありません。
8.3 不適合製品の管理
「文書化された手順」を確立することが主語になるように表現が書き変えられました。意味は変わっていません。
また、不適合製品の処理に関するa)〜d)項は「該当する場合には」と書き加えられました。
解説:これによってサービス業ではどの処置を適用すべきか、判断しやすくなりました。
d)項が設けられ、ISO 9001:2000(JIS Q 9001:2000)では最終文節に書かれていた要求事項がここに移されて、すっきりした表現になりました。文節の並びも入れ替えられ、分かりやすい表現になっています。
8.5.2 是正処置
f)項はとった是正処置の「有効性の」レビューであると、書き加えられました。
8.5.3 予防処置
e)項はとった予防処置の「有効性の」レビューであると、書き加えられました。
