ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)の解説    作成:2016年6月1日
(内容は逐次加筆修正していきます。その都度ご覧ください)


1.改定に至るあらまし

 ISOのマネジメントシステム規格には原則として5年以内に見直しが必要かどうか検討する取決めがあります。それは社会・市場・規格利用者から求められることが時代とともに変化し、組織経営のツールであるマネジメントシステム規格もこれに見合ったものにする必要があるからです。ISO 9001の旧規格(ISO 9001:2008)もその検討の結果、2012年6月に各国関係者の賛成多数で改定すべしとの決定が下されました。

 それは旧規格を使ってみると幾つか改善の余地があるという声が出ていましたし、製造業以外のセクター(産業分野)にもっと馴染みやすい内容にする必要性もあったからです。またISO 14001をはじめ様々なマネジメントシステム規格が発行されており、それらの間に整合性が欠ける面があって、マネジメントシステム規格の利用者に不便を強いているという実情もありました。

 実際、マネジメントシステム規格の制改定には「利用者が容易に一つ、または複数のマネジメントシステム規格を実施できることを確かなものにするのが望ましい」「マネジメントシステム規格は容易に理解でき、明瞭で、文化的偏りがなく、容易に翻訳でき、ビジネス全般に適用可能であることが望ましい」という注文がつきました。

 これより先行してISO/TMB(技術管理評議会)/TAG13-JTCG(合同技術調整グループ)で各マネジメントシステム規格の整合性を図るための作業が進められていて、マネジメントシステム規格の上位構造(基本的な章立て)、共通テキスト(要求事項)、用語&定義が作られていました。
 これらは2012年2月にISO/TMBで承認され、2012年5月に発行された「ISO/IEC専門業務用指針 統合版ISO補足指針」の附属書SLに上位構造、共通テキスト、共通用語&定義などが取り込まれ、今後のマネジメントシステム規格の制改定には原則としてこれを採用しなければならないことを義務付けています。
 これ以外の品質マネジメントシステムに固有の要求事項は、共通部分に付け加えることになります。

 附属書SLはマネジメントシステム規格はかく作るべしという義務事項(マネジメントシステム規格の提案)をしたためたものです。そこの一般原則には(1)市場適合性、(2)両立性、(3)網羅性、(4)柔軟性、(5)自由貿易、(6)適合性評価の適用可能性、(7)除外、(8)使いやすさ が規定されています。

 この附属書SLにはAppendix(添付)が幾つかあって、私たち規格利用者にいちばん関心が深い上位構造、共通テキスト、共通用語&定義はAppendix3に規定されています(これらの規定はマネジメントシステム規格の制改定には原則として変更せずに取り込まなければなりません)。

 ISO 9001の改定作業はこれを受けてISO/TC176(品質管理及び品質保証の技術専門委員会)で進められ、各国関係者の意見やコメントも反映してISO 9001:2015が2015年9月15日に国際規格として発行されました。あわせて改定されたISO 9000:2015(品質マネジメントシステム−基本及び用語)も発行されました。

2.改定規格の要点

 改定規格(ISO 9001:2015)を一見すると、旧規格(ISO 9001:2008)から大きく変わったように見えます。しかし内容を精査すると、そうでもありません。旧規格の要求事項を引き継ぎながら編集し直し、より簡素な規定にしながらそれまで不足していた要求事項を付け加え、経営者にとって品質マネジメントがいっそう適切に運営できるように工夫されています。

意図した結果の達成

 会社経営にとって大事なことは意図した結果を達成することでしょう。経営者が目論む結果を出せなければ、会社がうまく行くはずがありません。改定規格はこの「意図した結果」が出せるような品質マネジメントの仕組みを(再)構築し、実施・運用するスタイルに変ってきています。

 それには意図した結果を出すのに影響を与えかねない外部・内部の課題を明らかにすることから始まります。影響というのは、便宜上とりあえず支障とか障害としておきますが、実は好ましくない要因(状態)だけに限らず、好ましい要因(状態)も含めます。好ましい要因(状態)というのは意図した結果以上の成果をもたらすものです。

 意図した結果とは、組織の目的や戦略的方向性に関するものであり、いちばん代表的で大きなものが品質目標です。もちろん品質目標の達成にあたって、クレームを××件/年以下に抑えるとか、顧客満足度を××まで向上させる、という意図した結果もあるでしょう。

 内外の課題と共に大事なことは、利害関係者が何を求めているのかも明らかにしないといけません。
 利害関係者には、例えば株主・顧客・ユーザー(消費者)・親会社・融資機関・行政・監督官庁・取引先・協力会社・従業員・地域社会…などがありえます。良好な製品・サービスを一貫して提供するのに影響がありえる利害関係者の要求事項も明確にすることです。
 これには関係する法規制・条例、行政指導、業界の標準、顧客の技術基準など該当するもの(課題になりそうなもの)も含めて考えなければなりません。たとえば××省から通達が業界に出ており、製品・サービスをそれに対応するのには××が必要になって大変だが、逆にこれにうまく乗ればビジネス拡張の機会にできる....などです。

リスクと機会

 以上を考慮して、経営にリスクとなるものと改善の機会になるものを特定し、そのリスクと機会に取組むための計画を策定して品質マネジメントシステムに組み込まなければなりません。ここで言う計画は必ずしも××計画書のようなイメージではなく、プロセス(あるいはシステム)を作ることと思えばいいのです。リスクと機会に取組むための仕組み(システム)作りをして品質マネジメントシステムに組み込むことです。
 実は、改定規格では品質マネジメントシステムを文書化した品質マニュアルを作ることは要求事項ではなくなっています。ですから品質マニュアルが存在しないといけないわけではありませんが、リスクと機会に取組める品質マネジメントシステムは欠かせません。

事業プロセスへの組み込み

 この品質マネジメントシステムは形だけの(事業実態とは乖離した)ものであってはならず、事業プロセスに組み込んでビジネスと一体不可分なものにすべきこと(integration)が改定規格で明確に要求されています。

手順からプロセスへ

 改定規格の要求事項全般に亘って言えることは手順という用語が使われなくなったことです。それに代わったのがプロセスです。
たとえば旧規格では「手順を確立し…」が随所に出てきました(そのうち文書化を要求されていたのは6ヶ所です)。改定規格ではそれが「プロセスを確立し…」に変っています。設計・開発では「適切な設計・開発プロセスを確立し…」と要求されています。

 「手順を確立し…」と「プロセスを確立し…」では何が違うのでしょうか。
 手順(procedure)は「活動又はプロセスを実行するために規定された方法」と定義されています。手順は方法や手続き(つまり、やり方)を決めたものであって、それでは意図した結果が達成できる確かなものがありません。

 一方、プロセスは「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義されています。このプロセスを確立するためには手順だけではなくインプット、アウトプット(とくに意図した結果)、資源、知識、監視・測定、評価・アクションなど、結果を達成するために必要なことが組み込まれて出来るようになっていなければなりません。

 意図した結果を達成するためには、手順を定めて実行するだけでは不十分で、プロセスの考えに立ってP⇒D⇒C⇒Aの管理サイクルを回し結果が出せるようになっていないといけないわけです。

 ここまで準備できれば、あとは品質方針と整合した品質目標を立て、その達成に向けた品質マネジメントシステムの運用をすることです。その結果の評価方法は決めておかねばなりません。

3.改定規格の解説

 改定規格の内容をひとつひとつ解説しようと思いましたが…やめました。インターネットにはすでに多くの解説がありますし、関係書籍もたくさん出版されていますので、そちらを参照ください。しかし見落としがちな点だけには言及しておきます。

序文

0.1 一般

0.2 品質マネジメントの原則

0.3 プロセスアプローチ

0.3.1 一般
0.3.2 PDCAサイクル
0.3.3 リスクに基づく考え方
0.3.4 他のマネジメントシステム規格との関係

0.4 他のマネジメントシステム規格との関係

1 適用範囲

 この規格で使われている製品・サービスという用語は、顧客向けに意図した製品・サービス、または顧客に要求された製品・サービスに限定して用いられています。製品・サービスは組織のアウトプットではありますが、ロスや廃棄物など顧客向けに意図したものではない(顧客に要求されたものではない)のは製品・サービスとしては扱わない、ということです。

2 引用規格

 ISO 9000:2015(品質マネジメントシステム−基本及び用語)で定義されている用語がこの規格で使われていれば、それはこの規格の規定になります。たとえば「改善」は「パフォーマンスを向上するための活動」と解釈しなければなりませんし、「アウトプット」は「プロセスの結果」です。「組織のアウトプット」が「製品(サービス)」とされています。

 「リスク」は「不確かさの影響」です。詳しくは2015年版ISO 9001への対応(4)リスクと機会の特定をご覧ください。とりわけ注意がいるのが「設計・開発」で、これについても2015年版ISO 9001への対応(3)設計・開発の取扱いを参照ください。

3 用語及び定義

 「リスク」の用語の定義には理解を深める必要があります。
  • リスク ⇒ 不確かさの影響
     影響とは原語のeffectを訳したもので、その意味するところは「何か(活動・作用など)の原因によって変化する結果」です(Oxfordの英−英辞書による)。原因に対する結果です。ですからリスクは何かの不確かさがモトで生じる変化の結果ということになります。
     ISO 14001:2015に付いている附属書 A(参考)〈この規格の利用の手引〉には、effectは「組織に対する変化の結果」を表わしたものであるという説明があります。

     参考までに、これがeffective(効果的)になると望まれる結果が得られることや意図した結果になることを言い、 それを名詞化したeffectivenes(有効性)はISO 9000:2015の用語の定義で「計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度」となっています。

  • また「設計・開発」の用語の定義は、ふつうの日本語で言う設計のイメージとは少し違います。必ずしも新規に図面を作成したり、創造的・創作的なアイデアを具体化することとは限りません。注意してください。
  • 設計・開発 ⇒ 対象に対する要求事項を、その対象に対するより詳細な要求事項に変換する一連のプロセス
  • 4 組織の状況

    4.1 組織及びその状況の理解

    4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

    4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

     品質マネジメントシステムの境界とそれがカバーすべき範囲を見極めて、品質マネジメントシステムの適用範囲を定めます。この改定規格において適用できない(適用が不可能である)要求事項があれば、それは適用除外できますが、適用除外の正当性を示す必要があります。
     その要求事項を適用除外しても、組織の製品・サービスの適合性も顧客満足の向上を確かなものにする組織の能力・責任に影響を及ぼさない限りにおいて、是とします。安易に適用除外してはいけません。 

    4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス

    4.4.1 −
    4.4.2 −

    5 リーダーシップ

    5.1 リーダーシップ及びコミットメント

    5.1.1 一般
    5.1.2 顧客重視

     品質マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う、品質マネジメントシステム要求事項の事業プロセスへの統合を確実にする、品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成することを確実にするなど、経営者には事業実態に合い結果が出せるシステムにすることのリーダーシップがいっそう強く求められています。

    5.2 方針

    5.2.1 品質方針の確立
    5.2.2 品質方針の伝達

    5.3 組織の役割、責任及び権限

     管理責任者という役職者を割り当てる要求はなくなりましたが、それ相応の責務を果たす人は必要です。

    6 計画

    6.1 リスク及び機会への取組み

    6.1.1 −
    6.1.2 −

     取組むことが必要なリスク&機会を特定し、その取組み計画をすることが必要です。その計画は××計画書のようなイメージというより、仕組みとして品質マネジメントシステムのプロセスに組み込んで合体・統合させ、実施するようにします。その取組みの有効性を評価する方法も決めておく必要があります。

    6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定

    6.2.1 −
    6.2.2 −

    6.3 変更の計画

    7 支援

    7.1 資源

    7.1.1 一般
    7.1.2 人々
    7.1.3 インフラストラクチャ
    7.1.4 プロセスの運用に関する環境
    7.1.5 監視及び測定のための資源
     7.1.5.1 一般
     7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
    7.1.6 組織の知識

    7.2 力量

    7.3 認識

    7.4 コミュニケーション

    7.5 文書化した情報

    7.5.1 一般
    7.5.2 作成及び更新
    7.5.3 文書化した情報の管理
     7.5.3.1 −
     7.5.3.2 −

    8 運用

     品質計画(施工計画)の作成、受注活動(製品・サービスの要求事項の明確化)、設計・開発、購買・外注管理、製造・サービス提供の管理、顧客支給品(顧客所有物)の管理、保存・保管、アフターサービス、出荷・リリース、不適合製品の管理など、本業の一連の活動は、この箇条8(第8章)で規定されています。

    8.1 運用の計画及び管理

    8.2 製品及びサービスに関する要求事項

    8.2.1 顧客とのコミュニケーション
    8.2.2 製品及びサービスに関する要求事項の明確化
    8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー
     8.2.3.1 −
     8.2.3.2 −
    8.2.4 製品及びサービスに関する要求事項の変更

    8.3 製品及びサービスの設計・開発

     旧規格では製品(サービス)の設計・開発に限定されていましたが、改定規格ではその限定がありません。注意してください。

    8.3.1 一般
    8.3.2 設計・開発の計画
    8.3.3 設計・開発へのインプット
    8.3.4 設計・開発の管理
    8.3.5 設計・開発からのアウトプット
    8.3.6 設計・開発の変更

    8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理

    8.4.1 一般
    8.4.2 管理の方式及び程度
    8.4.3 外部供給者に対する情報

    8.5 製造及びサービス提供

    8.5.1 製造及びサービス提供の管理
     製品・サービスの提供が管理された状態で実行されるために、ヒューマンエラーを防止するための処置を講じることも求められるようになりました。
    8.5.2 識別及びトレーサビリティ
    8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物
    8.5.4 保存
    8.5.5 引渡し後の活動
    8.5.6 変更の管理

    8.6 製品及びサービスのリリース

    8.7 不適合なアウトプットの管理

    8.7.1 −
    8.7.2 −

    9 パフォーマンス評価

    9.1 監視、測定、分析及び評価

    9.1.1 一般
    9.1.2 顧客満足
    9.1.3 分析及び評価

     データ分析の結果を何に反映させるべきかの項目が増えました。計画の有効性とリスク&機会への取組みの有効性などです。

    9.2 内部監査

    9.2.1 −
    9.2.2 −

    9.3 マネジメントレビュー

    9.3.1 一般
    9.3.2 マネジメントレビューへのインプット
    9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット

    10 改善

     改善とは、修正・是正処置も含まれますが、ブレークスルー(現状打破)、革新、組織再編などもありえます。何が改善の機会になるのか、どれを手掛けるのかを決め、必要なアクションを取ります。

    10.1 一般

    10.2 不適合及び是正処置

    10.2.1 −
    10.2.2 −

     是正処置では類似の不適合が潜んでいないか総点検し、それにも必要な処置を講ずることになりました。いわゆる水平展開・横展開です。
     また必要により、特定したリスク&機会の情報も更新しないといけません。

    10.3 継続的改善

     データ分析の結果とマネジメントレビューのアウトプットを踏まえて、継続的改善に向けての取組みをする必要性があるのか、あるいは改善の機会になるのか、決めなければなりません。

    附属書 A(参考)新たな構造、用語及び概念の明確化

    附属書 B(参考)ISO/TC 176によって作成された品質マネジメント及び品質マネジメントシステムの他の規格類

    ISO 9001:2015(JISQ 9001:2015)への移行対応サービスについて…

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