このページはISO9000に関するQ&Aを掲げます《適宜、項目を追加する予定》
この問題に応えるためには、2つの視点から検討する必要があります。
余談ですが、ISO9001(9002)規格は英国の国家規格BS5750をそのまま横滑りさせて国際規格にしたものです。BS5750はサッチャーさんが活躍していた頃に、見る影もなくなった英国産業に国際競争力を付けさせようと目論んだものです。Standard Quality and International Competitiveness(品質標準と国際競争力)という白書を議会に提出し、品質保証の規格(客先に信頼感を与える規格)を作って企業に取り入れさせれば競争力の回復になる、と判断したのです。
この目論見が効果を上げたかどうかは、その後の英国産業の復興がどうなったかをみれば分かります。もっとも自国の規格を世界のスタンダードにしてしまった点ではさすがに腐っても英国、と評価される絶大な副次的(思わぬ?)効果はありましたが。
これに対して経営者はISO9001(9002)の導入によってロス(不良)の減少・リードタイム(所要期)の短縮・製造工数の削減・コストの削減・各種の改善促進など、損益面での改善のような「内部品質保証」の効果を期待しがちです。ISO9001(9002)がこうした効果に無力というわけでは決してありませんが、製品の品質保証とは直結しにくいだけに、内部品質保証によって得られる効果ほど経営者が期待するものが出にくいのかも知れません。
ISO9001(9002)規格は必要最小限度の要求ですから、それだけやれば十分というわけではなく、経営者向きの期待効果を上げるためには、品質マニュアルに「内部品質保証」の要素をもっと大胆に組み込むべきです。
【注】ISO9001(9002)規格は価値の薄いもの、という説明をしているわけでは決してありません。従来の日本式品質管理に欠けてた面を補う、という意味で、導入には多くの意義があります。
ISOの認証取得はとりあえずお手軽なScope(適用範囲)にしておいて腕試し(様子見)のつもりでチャレンジし、うまくいったらScopeを広げる、というケースがときおり見られます。当初はISO9002で認証を取得し、あとで設計も含めたISO9001にScopeを拡大するとか、最初はこじんまりした所帯で審査を受けみて感触がつかめたら全部署(全社)に広げる、というものです。
多くの場合は定期監査(サーベイランス)の際にScope拡大の審査をしてもらっているようです。この場合、どのくらい余分に審査工数(費用、日数)がかかるかは拡大部分の組織的規模や業務の性格によります。何かの事情で認証取得済みの組織が分裂して別の組織に組み込まれたときも、それぞれの組織の認証を維持するためには、取り扱いを審査機関に相談しなければなりません。こうした組織の統廃合があっても品質システムや基本的な業務の手順に大した変化がなければ(維持されていれば)、(統廃合の対象となるScopeが同一の審査機関で認証されている場合は)あまり大騒ぎするような事態にはなりません。しかし複数の審査機関が絡むと厄介な話になる可能性があります。
なお、同じScopeの下で品質マニュアルが2本立てになるケースも見られますし、ひとつの品質マニュアルで複数の部署や子会社・協力会社・グループ企業まで収めた形にすることも可能です。それまで子会社も含めて別々に認証を取得していたのを、親会社が元締めになって認証を一本化することも可能です。審査機関にとっては認証件数と審査の合理化で実績と収入が減ることになり、あまり有り難くない話でしょうが、可能な相談ではあるのです。
定期監査の目的は、品質システムが維持されているかどうか(したがって認証を継続してよいか)を確認することですが、審査員からすれば品質(システム)の向上に協力し、少しでも役に立ちたいという気持ちもあります。
したがって予防処置の審査に力を入れて改善につなげたい、というのが最近の傾向になっているような面があります。幾つかの審査機関(あるいは審査員)によっては、前回の審査からどんな進展(変更、見直し、改善)があったかを積極的に聞いてきます。
定期監査では審査工数が限られていますから、見るのは抜き取り的になり、更新審査(3年ごとにしている審査機関が多いが2年のところもある)までに少なくとも1回はScopeを網羅するようにプログラムを組んでいるようですが、毎回重点的に調べる項目もあります。それらはマネジメントレビュー、品質システム(品質マニュル・関連文書の維持状況、文書管理も含めて)、内部監査、クレーム等の是正・予防処置などです。ISOの要求項目にはないが、定期監査から毎回審査の対象になるのに認証ロゴマークの使用があります。これらは、やはりそれだけ品質システム(あるいは認証条件)における重要な要素になっているからでしょう。
一方、受審側からすると、経営者か管理責任者(あるいは品質保証責任者)あたりが審査員をうまく誘導して(場合によっては事前に耳打ちしてでも)、潜在的な問題や品質上の弱点を引き出したり、是正・改善の後押し(外圧ともいう)をしてもらうような、役に立ち効果が上がるような定期監査の活用を図るべきでしょう。車検より遥かに高い定期検査費用を払っているわけですから、定期監査を利用しない手はありません。定期監査を如何にうまくすり抜けようか、などと考えている限りは「ISOをやってきた効果」は出ないものと考えるべきでしょう。
最近はISO9000の認証取得に続いてISO14000(環境マネジメントシステム規格)の認証を取得するケースが相次いでいます。ISO14001規格では環境マネジメントシステムマニュアルを作成せよ、と要求はしていませんが、事実上は必要と考えるべきです。
では「品質マニュアル」に加えて「環境マネジメントシステムマニュアル」も別個に用意すべきかというと、そういうわけではなく品質マニュアルに必要な部分を組み込む形で品質マニュアルと共存させてもよいのです。
ISO14001規格の序文には「ISO14001規格は労働安全・衛生管理を取り扱うものではないが、そのようなマネージメントシステムの諸要素の統合化を阻むものではない」「環境マネージメントシステムの基本としてISO9000シリーズに適合したシステムを使用してもよく、既存のマネジメントシステム要素と独立して確立する必要はない。それらを適用することによって、要求事項を満たしてもよい。」という意味のことが書いてあります。
品質システムも環境マネジメントシステムも、そしてこれからISO16000として制定されるかも知れない労働安全衛生システムも、経営者のためのマネジメント・ツールなのです。ですから経営者がそうした経営のための道具を統合した形で使えるようにし、マネジメントリスクを最小限に抑え効果的かつ効率的な経営に活用するのはごく自然なことと言えるわけです。
では、審査も統合化した形で行い、審査工数の削減とより効果的・効率的な審査が期待できるでしょうか。現状では半分Yesで、半分Noです。英国の認定機関であるUKASは環境マネジメントシステムの審査スキームがまだ完全には固まっていないとして統合化した審査にはYesとは言っていないようです。しかしドイツの認定機関のDARはYesと考えているようです。