このページはISO9000に関するQ&Aを掲げます《適宜、項目を追加する予定》


受審に関するFAQ

 

●どんな不適合の指摘が多いのでしょうか?

 ISO9001の要求項目別にみると、どの調査でも「文書及びデータの管理(4.5)」に関するものが最も多く、平均的には不適合の1/3から1/4を占めます。典型的な不適合の事例は、最新版の文書のすぐ後ろに旧版を綴じ込んでファイルしてあった、標準に書き込みをしてあった、手元資料として標準の一部(自分がよく使うところ)を勝手にコピーして持っていた、品質マニュアルと下位の手順書の間に食い違い(文書間の矛盾)があった、MIL規格のような外部の文書が改訂されているのにそれを適用した社内規格は旧いままだった、などです。
 文書管理がきちんとできていれば、ISOは半分成功したようなもので、それだけ文書管理は重要であり、指摘もされやすいものなのです。見方を変えると、文書管理に時間を割いて審査すれば幾らでもボロを見つけられる、とも言えるほどです。
 「検査、測定及び試験装置の管理(4.11)」でも結構、不適合の指摘が出ます。平均的には不適合の中の1割前後を占め、多くは校正漏れです。
 「工程管理(4.8)」でも同じくらいの比率で不適合が発見されます。審査員にとって製造現場は目で見て問題点を発見しやすいのかも知れません。
 「設計管理(4.4)」でも不適合がよく見出されます。一例をあげると、計画書の更新(4.4.2)で、設計及び開発が計画よりズルズル遅れているのに、計画書の更新がなされいないケースです。
 最近は「是正処置及び予防処置(4.14)」がISO9001導入の効果をあげるものだとしてここの審査に力を入れる審査員が増えており、それに伴ってこの要求項目に関する不適合の事例が増えつつあります(平均的には不適合の1割以上を占めます)。

●受審のテクニックは?

 ここのところは審査機関の審査員には見て欲しくない情報ですが、まあ、仕方がありません。

  • 本審査まで多少日にちがある場合の対策

    ・それぞれの責任者は各種の台帳を点検し、期限が切れているのに処置が完了していない案件がないよう、力尽くで問題を解決しておく。特に是正(内部監査、不具合・不適合対策を含む)に関するもの、文書管理に関するものには注意。同様に台帳から漏れているもの(管理漏れ)はないか、中身と照合しておく。
    ・開発計画書に記載のスケジュール等が実態とずれているものは、改訂を進めておく。
    ・審査のモデルケースとして取り上げられそうな代表的なプロジェクト(案件)の品質記録は、よく整備しておく。内容も再点検しておく。
    ・これまでの内部監査・予備審査等で指摘された問題が全部解決できているかどうか、点検する。横展開も図っておく。
    ・ウルトラCとして、「ひょっとして不適合になるかも知れないヤバイ問題を抱えているとき」は、規定どおりの手順で内部監査を実施し、指摘をして是正処置ルーチンの中に入れてしまう。重大な問題でない限り、自らのシステムで自浄作用が働くようになっているもの(是正進行過程にある不適合)は、審査では改めて不適合と指摘されないのが普通である。

  • 本審査直前対策

    ・品質方針・目的・目標を再度確認しておく(全員に)。またそれを達成するために各自は何をすべきか、各自の責務を再確認する。
    ・すべての台帳を再点検し、管理もれ(捺印漏れ、記載漏れ、期限切れ、台帳記載内容と中身との不一致)のないようにフォローアップする。
    ・品質記録(特に帳票類)を繰り、捺印漏れ、記載漏れ(空白欄)がないようにする。
    ・自分が関係する品質マニュアルの章と手順書(規定)類をよく確認しておく。
    《注》この期に及んでジタバタしない。慌てて手順書の発行や改訂をするとミスしやすい(二次障害を起こしやすい)。

  • 本審査(本番)の受審テクニック

  • 応対の姿勢
    ・前向き(真摯)な姿勢で臨む。出来ていない弁解・口実を言わない。
    ・審査員の質問には真っ正面から答える。質問をはぐらかさない。話を反らさない。審査員の質問がやばい問題の核心に迫まりつつあるときは、些細な問題を持ち出して注意を反らそうとしがちだが、何か隠していると勘ぐられる。
    ・審査員に逆に質問しない。例えば「どんな品質記録があるか?」と聞かれて「これも品質記録になるのでしょうかねえ?」と審査員に判断を求めてはいけない。自分の仕事が理解できていない傍証になる。「この伝票には部長のワシが承認の捺印をしてもよいか?」と尋ねるのと同じくらい、バカげている。
    ・質問されたこと以上はしゃべらない。要求以上の余計な資料(文書、記録)を見せたりしない。自信がないときはいっぱいしゃべって(見せて)説明を補強するものだが、過ぎたるは猶及ばざるが如し。反ってボロを出す。
    ・ほめられて調子に乗り、ベラベラしゃべらない。審査員は相手からうまく話を聞き出すのが商売である。
    ・「〜ない」「〜してない」「〜できていない」という否定的な回答は避ける。「それに代わるものとして〜している」などと前向きに答える。
    ・その場しのぎの(根拠のない)回答をしない。確証を求められる。
    ・小声の曖昧な答えをしない。自信をもって明確に答える。
    ・自分の責務外の質問には責務外と答え、××課にお尋ねくださいと言う。余計なことを間違って答えると、××課が困る。
    ・Scope(適用範囲)外の質問にはScope外ですとはっきり言う。
    ・「ご指導いただく」というような卑屈な態度をとらない(立場は対等である)。
    ・おしゃべりな人間、余計なことを言いがちな人間は審査の場から遠ざけておく。
    ・受審記録はきちんと残しておく。
    ・とにかく聞かれたこと以上に余計なリップサービス&記録類の提示はしない。

  • 不適合が出たときの対応
    ・不適合の指摘があったときは、次の3点を確認する。
    
      規定要求事項(どの規格・規定に抵触するのか)
    
      不適合の状態(なぜ具合がわるいのか)
    
      エビデンス(不適合の客観的証拠)
    
    
    ・後でトレースできるように記録をきちんと残す。
    ・納得できるまで説明を求める。分かるまではいくら尋ねても構わない。規格の解釈について意見が異なるときは、徹底的に議論する。審査員が言っているのだからそうなのだ、と安易に受け入れない。
    ・発見された同じ不適合が他の部署でも出ないように、すぐに情報を流す。
    ・不適合/オブザベーション(観察事項)/審査員の個人的な意見は、それぞれ明確に区別する。
    ・捺印漏れのようなポカミス的不適合はその場ですぐ直すと、不適合として記録に残さない場合もある。可能なものは審査が終了する(クロージングミーティング)までに処置する(手を打つ)。
    ・審査機関(審査員)は説明したがらないが、審査の実施具合及び審査結果に異議のある場合は、受審者は後でも申し立て(苦情、提訴)をする権利がある。異議申し立ての手順(要領)を聞いておく。
  • 受審後の処置

    ・不適合の是正を報告する義務のある場合は、報告期限を厳守する。報告期限よりずっと早く回答するのがよい。
    ・不適合是正の報告書には、不適合を指摘された直接の問題の是正だけではなく、再発させないための処置も含める。そのエビデンスも報告書に添付しておく。
    ・不適合の情報は横展開し、他の部署でも再発しないようにする。

  • ●審査員の接待は構いませんか?

     夕食およびそれ以降の接待ですが、これまでの経験からすると「お付き合いOK」という審査機関と「禁止されていてNO」というところがあります。
     幾つかの例から類推すると、外資系の審査機関はあまり堅いことは言わず、日本育ちの審査機関は「辞退せよ」となっている感じです。
     審査機関が振る舞うべき手順や行動規範は、認定機関によって基準が定められており、審査機関も認定機関から審査(監査)を受けています。認定機関がJABの場合、「審査機関に対する認定の基準」やその「指針」には「接待はダメ」とは書かれていません。強いて言えば「審査の公平性」が求められているわけで、このあたりをどう解釈し自社の行動規範に反映させているかは、それぞれの審査機関によります。
     企業のISO責任者(審査機関との交渉の窓口でもある)が審査機関(の担当者)と意志の疎通を図ることは重要な仕事です。審査が近づいてくると(1週間〜1ケ月ほど前に)審査がスムーズに進むように種々の事前準備が必要ですが、そうしたプログラムの中に審査員に対する昼食や夕食の応対に気配りを入れるのも決して悪いことではありません。
     審査機関と事前準備の打ち合わせの中で、接待をフランクに打診してみてください。審査機関がこれに応じられるかどうかは、そこの事情によりますから、無理強いはいけません。それとやってくる審査員にもよります。
     幾つかの例で言えば、当日の審査が終わってもホテルや自宅に戻って当日のレポート作成や明日の準備をする審査員がかなりおられます(審査の仕事はハードワークのようです)。接待で遅くまで引き止められるのは嫌がるケースが多いようです。
     それと審査員はこうした不規則な食生活とストレス(かなり溜まるようです)で内臓の疾患を持っている方が多いのです。事前によく相談の上、機嫌良く審査してもらえるように努めてください。

    ●部外者が答えてもよろしいのでしょうか?

     質問された受審者(責任者)に責務がある質問は、当然その人が答えられなければなりません。横から口を出すと、審査員によっては「この人に尋ねているのだ」と釘をさされることがあります。
     しかし何らかの事情で(うまく答えられなくて)審査員が間違った認識をしてしまった場合は、事実関係が正しく認識されるように横から説明をすることは適切な処置です。

    ●審査機関や審査員によって審査(手順、レベル)に違いがありますか?

     ある、と言えます。

    審査機関による違い

     例えば、本審査の初めの方にはトップインタビュー(経営者への面接審査)があるものですが、DNVの場合は経営者と管理責任者以外にも関係部長や課長の参加も得て行うことがよくあります。これに対してJQAの場合は経営者と審査員が「差し」で行い、社内関係者はシャットアウトしている例が見られます。一方、ロイド(LRQA)の場合はトップインタビューといったものがなく、管理責任者以下を審査する過程でトップ(経営者)の関わりが間接的に審査できる、としています。
     マイナー(軽微)な不適合の指摘があったときは、DNVやJQAの場合ではまず是正が必要で、その是正報告書(実施した確証のためのエビデンスを添付する)を書類審査してから(パスすれば)「認証」を出す(正確には認定機関に認証発行の推薦をする)という手順になっています。これに対してロイドの場合はそのまま「認証」発行手続きを行い、on-going improvementとして次回の定期監査(審査)までに是正が進めばよい、という要領です。
     定期監査について言えば、(定期監査は監査工数が限られているので)ロイドの場合は次回の定期監査でどの部署を見るか事前に通知をしています。DNVの場合は、(抜取的な性格をもたせるために)定期監査の当日にどこを監査するか決める、という具合です(DNV内では計画的ではありますが)。
     また、審査(監査)の要領では、ISO9001の要求項目ごとに(例えば文書管理に絞って)各部署を審査するケースと、各部署ごとに(その部署に関係する)ISO9001の全要求項目を審査するケースという、2通りのやり方に分かれます。
     審査の中味について言及すると、概して外資系の審査機関ではISO9001に要求される大きな流れ(基本的なこと)が出来ていればヨシとする傾向があるのに対して、国産の審査機関の中には重箱の隅をつつくような審査になりがちなところがあります。もっとも、外資系審査機関にしても雇い入れる審査員が「俄造りの国産品」であるケースが増えて、だんだん違いが無くなっているような気がしますが。

    審査員による違い

     いずれにしても、審査員の個人的な資質・レベルによるバラツキの方が、違い(審査に与える影響)が大きいように思われます。
     実際、態度が横柄でクレームが殺到して審査機関から勘当された審査員もいますし、「品質マニュアルの章立てがISO9001の要求項目通りに並んでいないのは不適合」などと、とんでもない指摘をしてクレームを付けられた審査員もいるくらいですから。
     また、主任審査員の監督下で審査チームの一員として審査しているときは大人しくしていたが、自分が主任審査員になった途端に日頃の自分の哲学(考え)に基づいた審査を始めた、という豹変型審査員もいます。
     審査員に関しては車のバッテリーと同じで、当たり外れがあるように思われます。同じ審査費用を払うのであれば経験豊かな優れた審査員に来てもらいたいものですが、こればかりは事前に関係筋から裏情報を仕入れない限りは経験しないと分かりません。
     なお、「この審査員に来てもらいたい」という希望(相談)を審査機関に投げかけることは、ある程度可能です。うまく審査機関を活用しているところは、そういう交渉ごともやっているのです。

    余談

     ここからは半分Jokeで申し上げますが、ある意味では審査機関もSubcontructor(JISZ9901の4.6では下請負契約者などと表現していますが)に該当します。しかも品質システムに与える影響は甚大ですから、採用に当たっては十分に評価し、適切なる選定をしなければなりません。
     審査機関をどこにすべきか、十分に調べて採用することをお薦めしますし、これが出来ていないとISO9001の4.6.2「下請負契約者の評価」に不適合、ってなことも(屁理屈を言えば)ありうるわけ。もっとも、審査機関まで評価して「下請負契約者」に登録したという事例は(幸か不幸か)聞いたことがありませんし、これが出来ていなくて審査の際に「不適合」の指摘を受けたという話も聞いたことはありませんが。
     しかし某審査機関から認証を取得したものの、あまりにひどくて更新審査を迎えるにあたっては審査機関を外資系に切り替える、という話はチラホラ耳にします。


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