このページはISO9000に関するQ&Aを掲げます《適宜、項目を追加する予定》
品質方針の審査の際によくある質問は、それをどのように各課・各人ごとにブレークダウンしてありますか、目標は定量化(数値化)してありますか、です。しかし品質方針はブレークダウンし展開せよ、目標は定量化せよ、とはISO9001(9002)の規格にはいっさい書いておらず、要求事項ではありません。
従来の日本の品質管理の手法に方針管理であるとか目標管理があったので、そういうものと結びつけて考えると、ブレークダウンとか展開とか数値目標という発想が出てくるのだと思われます。
品質マニュアルは「組織の品質方針の中に定められた目標(原文はobjectivesである)を達成するため」の品質システム(ISO9004-1の0.2参照)の手順を定めたものですから、誰が何をすべきかは品質マニュアルに定められたとおりなのです。
なお、4.1.1にあるobjectivesを目標としたのは必ずしも適切な翻訳ではない、という意見があります。実際、Native English(母国語が英語の)審査機関自身のpolicyとobjectiveを見ると、objectiveは目標管理的な目標とは性格が異なり、その邦訳には「目的」と記されている例があります。
Objectiveを目標と解釈して定量的なものを品質マニュアルに掲げるのは自由ですが、そうでないといけない理由は全くありません。
ISO8402規格の3.15(記録)を見てもISO9004-1規格の5.3(品質システムの文書化)を見ても、記録(または品質記録)は原文ではdocument(文書)のカテゴリーに入れられているように思えます。しかし仕事の手順を示した狭義の文書と記録(品質記録)は性格的には全く異なります。書類になっている点だけが同じです。
一方、ISO9001(9002)規格の「品質システム(4.2)」には「品質マニュアルには文書(documentation)の構成のアウトラインを示せ」と規定されています。率直に読めば、documentationには狭義の文書(procedureを示したもの)とともに、品質記録(quality record)も含めるべきかも知れません。実際、そのように考えている審査機関や審査員がいます。
しかし品質記録は品質マニュアルの別の章でアウトラインを取り上げていることが多いので、このような場合には誤解を避ける意味で狭い意味での文書と切り離した方がよいと考えられます。
なお、品質記録の書式(フォーマット)を定めたものは(狭い意味での)文書です。
かみ砕いて言うと、次のようになります(この解釈が全てではありません)。
必要です。ISO9001(9002)規格の「2.引用規格」に「次に掲げる規格は、この規格の本文で引用されることによって、この規格の規定の一部となる。」と定められており、ISO8402(1994年版)「品質管理及び品質保証−用語」がリストアップされていて本文でも引用されています。
そしてISO9001(9002)規格の4.5.1(文書及びデータの管理の「一般」)に「この規格の要求事項に関連するすべての文書及びデータを管理する手順を文書に定め、維持すること。これらには、規格…のような外部の文書を該当する範囲で含む。」とありますから、必要なときに必要な部署がISO8402規格の適切な版(1994年版)を利用できるようになっていなければなりません。
ISO9001(9002)規格を適用している場合にISO9001(9002)規格及びISO8402規格の適切な版が必要な部署で利用できないのは、4.5「文書及びデータの管理」の規定に不適合となります。
ISO9001の規格が1994年7月に改訂された折に、文書管理と同様に「データの
管理」も要求されるようになりましたが、データとは何かどこにも書かれてい
ません。しかしISO9001の規格の表現では文書管理と区別していないことから、
管理対象のデータとは何を指すか明らかです。
頭を整理するために先に、文書とは何か、をハッキリさせておきたいと思い
ます。対比させる意味で、(品質)記録についても言及します。
・発行の前に責任者の審査・承認が必要である。 ・(業務の手順・手本・基準として)何度でも繰り返して使う。 ・事態に応じて改訂する。 ・必要な部署に確実に配り、旧版は誤って使われないようにする(回収 する)。 ・廃止(廃版)にしない限り永久に存続する。
・個々の業務の出力(結果)である。 ・一過性で、繰り返して使うことはない。 ・改訂などない(改訂すれば改ざんと言われる)。 ・規定の期間内は業務実施の証として保管し、それ以降は廃棄する。
こういう位置づけにある「文書」と同じ並びで管理すべき「データ」には、
何があるでしょうか。例えば営業が見積り業務をするとき、プライスリストに
基づいて行っているとすれば、プライスリストは管理すべきデータに当たりま
す。それは先ほどの文書と同じ性格を持つからです。顧客リストを使って業務
をしており、その内容が誤っている(古い)と業務に支障が出るのなら、顧客
リストは管理対象のデータです。
意外と見落としやすくて、言葉として分かっているつもりながら実際には出来ていない(理解されていない)ことが多い例に「台帳を常に利用できるようにしておく」というのがあります。この要求事項は4.5.2の「文書及びデータの承認及び発行」でしか出てきませんが、台帳を使っているところには全て適用されるべきことです。
「常に利用できるようにしておく」という意味は、その管理者(責任者)の手元などいつでも引き出せる場所に置いておき、すぐに見られる状態にしておけ、という意味です。
よく文書管理台帳を文書ファイルと一緒に綴じ込んでしまい、その文書ファイルは文書保管庫などに保管している例が見られます。これでは台帳を頻繁に見よう(点検しよう)という状況にはならず、旧版の文書の回収漏れがあってもなかなか気が付かないケースが出てしまいます。「台帳」は管理状態が一目で分かるようにした管理のための帳票ですから、どこかにしまい込んでおくような「利用方法」をするのは適切ではありません。
成すべきクレーム対策や是正処置が(期限を超えても)未処置(未完了)まま残っていたのが見つかった、などという管理漏れがあったとすれば、そもそもその管理台帳の利用方法に問題がないか、疑ってみる必要があります。探さないと台帳が出てこない、というようでは台帳の意味をなさないわけです(不適合も同然です)。
パソコンの普及と企業内ネットワーク(イントラネット)の出現で、文書管理のみならず人事・経理・総務上の処理もパソコンで行い、ネットワーク上で管理するという情報システムの電子化・ネットワーク化が押し寄せています。これにからみ、ISO9001の観点から問題ないのだろうか、という問い合わせも出始めています。
結論から言えば、文書管理などが電子媒体で行われるからといってISO9001の要求事項を逸脱するわけではなく、何ら問題ありません(実際、ISO9001規格の中に参考15として電子媒体でもよいとコメントしてあります)。
とはいえ、当然ながら電子化システムでもISO9001の要求事項は満たす必要があり、電子媒体とネットワークの特性から来る特有の問題が文書管理にないだろうか、と懸念するのは自然なことです。
問い合わせの中で共通する問題は「審査および承認」で、中には電子媒体上のハンコがいるのか、という質問もあります。紙とハンコの文化から抜けきれない企業は電子媒体上にハンコを登録して使っても構いませんが、これは何ら本質的な問題ではありません。
余談ですが、自筆の署名(サイン)が文化になっている欧米のこの方面の専門家の中には、日本の文化であるハンコでは審査および承認の証にはならず、署名でないとISO9001には適合しないという人もいるほどで、見方によってはハンコは信用されていないようです。
重要なことは決められた責任者が文書の審査および承認ができる仕組みになっており、未承認文書はネットワーク上に流通し、自由に閲覧(または使用)されないようにすることです。これには例えばIDとPW(パスワード)をうまく使う方法があります。もっと原始的には、とりあえずハードコピー(紙)に打ち出した文書で審査・承認し、それを原紙として管理する方法もあります。この場合は電子媒体(ネットワーク)に載る文書(いわばコピー)が原紙と確実に同一であるように、システム的にどういう工夫をこらすかがミソになるかも知れません。
システム的にこのあたりの手だてが不十分で、審査・承認されたオリジナルの文書とは別に、実際に使われる文書が一人歩きするようですと、悩ましい問題を抱えることになります。例えばネットワークを通じてダウンロードした文書ファイルをハードコピーして仕事に活用していると、審査・承認されたオリジナルの文書の方は改訂が進んでいるのに、手元に残っている(実際に使っている)文書が旧版の状態であったり、文書ファイルの中身を自分で操作(改変)しているようなことがあると、大変です。
(注:文書管理上いろいろな問題を抱えている(不適合を起こす可能性がある)からといって、必ずしもそれだけで不適合にはなりません。具合の悪い事例が実際に審査の場で発見されて、はじめて不適合が指摘されるのです。その不適合がシステム的な弱点によって引き起こされているとすると、その是正・再発防止はシステムのテコ入れに繋がることになり、そのときに悩ましい話になります。)
文書管理の電子化には、幾つかのレベルがあります。電子媒体やネットワークは使うけれども管理(審査・承認、配付、使用など)はあくまでも「紙」で行うというレベルから、すべてネットワーク上で行うというレベルまでです。前者は従来の「紙とハンコの文化」の範疇に入るでしょうから、それ以上に特別な注意がいるわけではありません。
後者の場合は、文書の版(バージョン)の切り替えや文書配付が電子的に行えるので、ある意味で非常に有効な文書管理の手段になるでしょう。しかし現実問題として、ハードコピー(紙)を全く使用しない電子的文書管理はまだ存在しにくいと思われます。なぜなら、製造現場や外注先にとっては「紙に描かれた図面」や指示書がないと、当面は仕事にならないと思われるからです。ですから、どこかで紙による従来の文書管理の手順が残ることになるでしょう。
なお、ISO9001の要求事項とは必ずしもリンクしませんが、電子化システムでの文書管理に大事なことは、
(追記)ここであまりあからさまに表現しない方が良いのかも知れませんが、ISO9001の審査員は年輩者が多く、イントラネットや電子メディアなど最新の情報システムに無知・無理解な人がいます。そういう審査員に当たって妙な指摘をされると困りますので、社内の文書管理なり事務処理が電子化・ネットワーク化されている場合は、予め審査機関によく事情を説明し、適切な審査員を派遣してもらうように手を打っておくことをお勧めします。これも重要な(効果の確かな)“予防処置”です。
品質に影響を及ぼしうる購入外注先は(管理の濃淡はあっても)すべて評価
し選定できるようにしておかねばなりません。事務用品はともかく潤滑油、ビ
ス・ナットのような補材・副資材のメーカも、製品を運搬する輸送業者も、役
務や作業を請け負う業者も漏れなく含める必要があります。また事務用品とい
えどもクリーンルーム内で使うクリーンペーパのようなものは対象になります。
なお代理店や商社が間に入っている場合は、その先のメーカが対象です。
客先から支給されるものは、意外とあります。図面もそうですが、色見本、 ペンキ、銘板、製造設備、検査機器(計測機器)…。保守や修理のために客先 から送り返された物も対象に含めます。
'94年7月に第2版になった今のISO9001/9002規格の改訂のひとつのポイントは、4.14で是正処置だけではなく予防処置まで求められ、さらに「効果的であることを確実にするための管理の適用」まで言及されるようになった点です。
日本でISO9001(9002)の導入が始まったのが'91〜'92年あたりですから、現状では早くに認証取得した企業では3年目(JQAでは2年目)の更新審査を終えた頃ですが、3年もやっていると内外でISO9001(9002)を導入したことの効果を問われます。ところがISO9001(9002)をやっても期待しているような目に見える効果はない、と見るところが多数出始め、一部の関係者の間では「ISO9001(9002)ってホントに役に立つの?」という声があります。
こういうことが背景にあるため、最近では多くの審査機関や審査員はISO9001(9002)導入の効果は予防処置や「効果的であることを確実にするための管理の適用」に力点を置くことによって得られると考え、いきおい審査もそこにポイントを置く傾向があります(その裏には認定機関のそういう意向が垣間見えます)。
ところが何がどうしたことか、「効果的であることを確実にするための管理の適用」が「効果の確認」に化けてしまい、まるで流行語か呪文のように、ほとんどの審査員は「効果の確認」という言葉を審査の場で口にします。
ISO9001規格を翻訳してJISに置き換えたのがJISZ9901ですが、JISZ9901の翻訳が不適切(誤訳)、あるいは誤解を招きやすい箇所が何カ所かあります。
「効果的であることを確実にするための管理の適用」は、application of controls to ensure that it is effective という原文を訳したもので直訳に近く、翻訳としては間違っていないように思われます。しかし翻訳というフィルターが入った日本語の条文をいくら咀嚼してみても、ISO9001(9002)規格が求めているものを正しく受け止められるとは限らず、誤った解釈をしてしまう場合があります。「効果的であることを確実にするための管理の適用」を「効果の確認」とするのはまさにそれで、解釈としては歪んでいます。
JISZ9901の表現や審査員の指摘が「何となくおかしい」と思ったときは、原文をしっかり読むべきです。application of controls to ensure that it is effective をまともな日本語で表現すると、「確実に効果が上がるような管理をせよ」という意味です。
「効果の確認」は打った手が結果としてどうなったか蓋を開けてみて確かめる(結果良ければすべて善し)というもので、「確実に効果が上がるような管理」のひとつの下手な方法でしかありません。「確実に効果が上がるような管理」で大事なことは、どういう手(手法)を打ち、実行(維持)のプロセスをどう管理するか、効き目をどうモニターするかです。「効果の確認」は不可欠なものではなく、「確実に効果が上がるような管理」のしかたは他にあるわけです。
だいいち「予防処置」の「効果の確認」なんて、ほとんど不可能です。「まだ発生したことはないが、ひょっとして発生するといけないから、念のために手を打っておこう」というのが予防処置ですが、それが効果があったかどうかを確かめるのは至難の業です。運悪く発生すれば効果が無かったことは分かりますが、まだ発生していないからといって効果がある(あった)とは言えません。大事なことは、どういう手を打ち、どう維持管理していけば大丈夫か、確信を持てるようにすることです。
企業での業務経験がなく実態を知らない審査員が増えているので、妙な指摘がある場合は注意が必要です。
【注】内部監査(4.17)では是正処置として打った手の効果を検証することが求められています。
予防処置は不適合の潜在的原因に手を打つこと(未然防止)ですから、トラブルとして発生するかしないかハッキリしない(手を打ても徒労に終わるかも知れない)問題にresources(経営資源)を投入するのは経営上のリスクを負い、経営マターに関わる問題だからだと思われます。
是正処置の場合は、間違っていることを正しい方向(規定通り)に戻すわけですから、経営マターではありません。是正処置に関する重大な問題は経営者に伝えるべきだ、という意見がありますが、その企業の事情に応じてどの経路を通じてどこまで伝えられるべきか、手順として決めておけば済むことです。
特殊工程に含まれてもよさそうなものには、次のようなものがあります。
◆接着、融着 ◆ハンダ付け、ロウ付け、溶接 ◆鋳造 ◆メッキ、塗装 ◆モールド、押出し、成形 ◆熱処理(焼き入れ、焼き戻し) ◆接続(結線)、終端 ◆真空封止 ◆防御壁 ◆吊下ワイヤ(ケーブル)の結び(固定) ◆負荷を支持する梁・軸受等の建築構造物への固定 ◆据付け・修理・保全などの現地作業 ◆EP-ROMへの書込みのようなソフトの複製これらを特殊工程として管理対象に含めるべきかどうかは、ケースバイケー スです。特殊工程として管理すべきものがされておらず、品質上の問題を発生 させた事例が審査で発見されれば不適合になる可能性があります。
多くの審査員の解釈は次のとおりです。
◆保管…工程内で使用中の材料・仕掛品や出荷待ち製品の損傷・劣化を防止すること ◆保存…出来上がった製品を客先に完全に引き渡すまでの管理しかし別の審査員は、「保存」とは原材料・部品・半製品・製品の劣化防止 対策を含めた保存・貯蔵と解釈をいう、としています。
エンピツ書きの品質記録がただちに不適合につながるわけではありません。 しかし「品質記録は、規定要求事項に対する適合性…を実証するため」のものであることを考慮すると、簡単に書き直せるエンピツ書きは好ましいとはいえません。
ISO9001の教育訓練の規定(4.18)には、教育訓練に計画が必要だとはいっさい書いてありません。ISO9000規格のところどころに「計画」という言葉が出てきますが、「計画」と翻訳される前の用語はplanであり、schedule(スケジュール)ではありません。ましてや4.18には「教育訓練のニーズを明確にする手順を文書に定め....」としか規定されていませんから、どんな要員にはどんなトレーニングが必要か定めてあり、その実施記録があればいいのです。もちろん年間計画を立てた方が都合がいいのであれば、それはそれで結構ですが。
客先の教育訓練(トレーニング)、情報の提供、メンテナンス、修理、保守部品・予備部品の提供…などがあります。クレーム処理をここに入れているケースがときどきありますが、これは不適切です。クレームに対応するのはサービスではなく「是正処置及び予防処置」の一環になります。
(追記)「付帯サービス」は注文を受ける際に「ついでに、これもやってよ」と本来の営業品目に付帯して行う業務(作業)を言います。例えばある装置物を製造して納入するまでが通常の業務だとすると、「今回は特別に納入後の据付け・試運転からオペレータの教育までやってよ」と「本体の注文に含ませる形」で求められる付帯業務はこれに当たります。修理やメンテナンスでも「本体の注文に含ませる形」で契約すれば付帯サービスに該当しますが、「本体の注文」とは切り離して修理やメンテナンスが別の注文(契約)になればこれは付帯サービスにはならず、通常の業務と同じ手順で扱う必要があります。