このページはISO9000に関するケーススタディを掲げます
文書についてお聞きしたいことがあります。
弊社は×ヶ月後に×回目のISO9001継続審査を控えている某電子部品の試作メーカーです。弊社では各工程単位での作業の具体的な方法を文書化してものを「作業標準」として、品質マニュアル→要領(マニュアルに基づき要求事項の処理、管理方法などを定めたもの…各課をまたがる)→作業標準(各課内の作業手順)→品質記録の順に文書体系を定めていますが、一時的に作業標準より効力を有するような文書を作った場合の扱いと位置付けについてお尋ねします。
例えば、製品不良が発生して是正処置として作業の内容を変更する場合だとか、特定の顧客に対しては作業標準で定められている基準値と異なった数値で作業を行なう場合(本来は顧客ごとに作業標準を定めるべきなのかもしれませんが、月平均3000件の物件が流れており事実上無理がある)など、今まではある程度効果の確認ができたら作業標準を改訂するようにしていました。しかしその間、作業者は何を見ながら作業をすればいいのかということになり、作業の追加、変更などが決まってから作業標準を改訂するまでの間(改訂するかは各課長の判断に任せますが)や作業標準だけでは作業がすぐにできない時など、迅速な対応と徹底を図って新たに(例えば「業務連絡書」という感じで)文書を作りたいと考えています。
そうした場合、暫定的作業ではあるけれども標準として使うことになるので文書体系に入れて、やはり4.5の要求事項を満たさなければならないのでしょうか。そうすると各課にまたがる文書は管理文書で、課内での使用は非管理文書でも良いのか、また作業そのものに対する文書(基準、注意事項などさまざま)と1つの物件に対する文書に分けたいという要望もあり、そうなると後者は4.16に当たるのか、など様々な問題が出てしまいます。
そもそも頻繁にある作業の追加、変更などに対して作業者の混乱を防ぎ、すぐに対応できるような文書を作るのが目的であったのに、要求事項に沿った管理をするとなると、これでは結局、作業標準作成と同じ手間がかかるだけになってしまいそうです。
私達の考えでは「業務連絡」を発行する際には責任を持った者が審査し、有効期限を決めて、その期間中は「作業標準」より上位文書になれることを文書化しておけばいいのでは‥‥‥という結論に至りましたが、それでは整合性が無いと指摘されそうでなんだかしっくりいきません。どうか良きアドバイスをお願い致します。
たいへん長い文面での問い合わせでしたが、概ね質問の意味は理解しました。文書管理に関する基本的なこととして
(1)流通している文書(要領、作業標準、業務連絡書)同士がお互いに矛盾する内容であってはいけない
(2)作業当事者が当該作業についてどの文書(要領、作業標準、業務連絡書)に基づいて作業をすればよいか明確であること(版の識別を含む)
の2つをあげておきます(他にもありますが)。
で、「一時的に作業標準より効力を有するような文書(業務連絡書)」を作った場合、割り込んだ業務連絡書と元の作業標準は内容的に矛盾することになります。しかし「一時的に作業標準より効力を有する」という意味で、4.5.2にあるように、「元の作業標準」は旧版(あるいは当該作業に適用すべきではない不適切な版)、「業務連絡書」を(一時的な)最新版(あるいは当該作業に適用すべき適切な版)として管理され、作業当事者には「適切な版」が間違いなく利用でき、「不適切な版」は「無効」として直ちに撤去されるか誤って使用されないようにできれば、(1)(2)とも満足でき、問題ないわけです。
「業務連絡書」の効力を止め、元に戻したいときは、無効とされた「不適切な版」を復活させ、上記と逆の手順を踏めばよいことになります。
このことは「業務連絡書」という言葉はどうあれ、結局、「作業標準」の改訂と版管理をしていることになり、それなら「業務連絡書」という立場の不明瞭な文書を発明するより元の文書体系で運用する方が、ずっとスッキリしている、という考えに至りそうです。
「要求事項に沿った管理をするとなるとこれでは結局作業標準作成と同じ手間がかかるだけになってしまいそうです」と言われるとおりです。
作業標準をそのままにして「業務連絡書」を発行すると、上記(1)(2)の点で非常に微妙な問題となります。後日になって、当該製品がどの文書に基づいてモノを作ったのかワケが分からなくなる(トレースできなくなる)のもいけません。
「月平均3000件の物件が流れており、いちいち物件ごとに固有な作業標準など作っておれない」のであれば、「作業の基本的な流れや手順が同じ」ものを集めて整理統合し(つまりパターン化、標準化し)、管理可能な種類の数だけの「作業標準」にしてはどうでしょうか。この場合、物件ごとに異なる規格や基準(つまり変化する部分)は、その「作業標準」の中には設定しません。
で、月平均3000件もある物件が受注されるごとに、当てはまる「作業標準」を指定し、その作業標準に連結する形で固有の規格や基準を「作業指示伝票」などに明示します。
こうすると、「作業標準」は文書でも、固有の規格や基準を明示した「作業指示伝票」は品質記録にできます。物件を受注するごとに適用すべき「作業標準」を明記した「作業指示伝票」を作成し、作業現場に流せば済むわけです。