このページはISO9000に関するケーススタディを掲げます


不適合(品)とは何でしょうか?

 「不適合品の管理」で疑問点がありますので教えてください。
「質問する要求項目」
4.13.2 不適合品の内容確認及び処置 について3点

(1)不適合品の内容確認の責任とありますが、この意味するところがよく分かりません。検査担当者は、4.2.3品質計画のg)に基づき合否判定基準を明確にしている品質計画で、その基準にのっとって検査・試験を実施して、不適合品と判定したわけであり、ここで再度内容確認する必要があるのでしょうか。それとも、検査担当者は検査を実施し合否判定をするまでが権限のためその処置の判断もしくは他の権限をもつものが不適合品の内容確認をしなさいという意味なのでしょうか。

(2)手直しと修理の違いについて、手直しは規定要求事項を満たすようにするという意味はよく分かりますが、修理との違い(修理の意味)がよく分かりません。私は建設業(ゼネコン)のため、建設施工を例にとり質問させていただきます。たとえば、壁のモルタル仕上げ精度が要求事項として±7oであった場合検査で+10oに仕上がっている事が判明し、不適合になった場合、その処置を施工して+8oまで仕上がったとします。この場合は、”修理”になるとおもいますが、壁の仕上がり寸法が設計図書で明記されており、手直しで+6oまで仕上げることができても、壁の仕上がり寸法をオーバーしてしまった場合には、やはり”修理”になるのでしょうか。(壁の仕上がり寸法が設計図書に明記していない場合は手直しになるのでしょうか。)

(3)契約で要求されている場合には・・・とありますが? なにが契約で要求されているのか良く分かりません。2つ読みとれるのですが、まず1つの解釈は、「規格要求事項に適合しない製品の使用又は修理の提案を特別採用として顧客または代理人に申請すること」を契約で要求している。・・・この場合はこの前者の適合しない製品の使用を顧客又は代理人に申請しないで特別採用にするのは不適合なのでおかしいと思いますが? もしこの解釈でよいのであれば、申請することが要求されていない場合、無断で特別採用としてよいのでしょうか?(そんなはずは無いと思いますが。)
 もう1つの解釈は、契約で要求されている規格要求事項については、という意味?・・・この場合はなぜその様に表現していないのか疑問に思います。

 お尋ねの件につき考え方を以下に示します。

(1)「不適合品」は工場などの製造ラインで出てくるものとは限りません。例えば出荷してから客先からクレームを付けられて戻って来るモノもあるでしょう。そんなとき、こいつはホントに規格などを外れた「不適合品」なのか、客先の勘違いで良品(適合品)なのか、内容確認をしないといけないでしょう。そのような場合に検査担当者がその責任者だと言われても、本人にしてみれば「わしゃ製造ラインで作られてきたものは検査するが、クレームで戻ってきたものを調べるのは知らん」という場合も(会社によっては)あるのではないでしょうか。
 「不適合品」の発生や種類を限定して考えてはいけません。以下の(3)の説明も参考にしてください。

(2)例に出された意味がよく分からないのですが、とりあえず手直しと修理の違いを説明します。
 手直しは、元の英文を見ていただいたら分かるように rework となっています。rework とは、かみ砕いて言えば 再度 work をすること、つまり「やり直し」です。モルタルの場合は、規定の寸法を超えて仕上がってしまったのなら、rework はモルタルを全部剥がして再作業することをいうわけです。
 修理は repair を訳したもので、これは修繕のことです。モルタルの塗り足らないところは塗り足し過剰なところは削り取り、良好な状態に回復させます。ISO9001(ISO9002)規格をよく読んで全体を理解することは非常に大事ですが、初めからあまり細かなことに拘りすぎると全貌が見えなくなります。

(3)ここの意味は、契約で要求されている場合、「規定要求事項に適合しない製品の使用は…申請すること」「修理の提案…申請すること」の2つです。
 話が早い後者の場合を先に片付けると、これは明快です。例えば「修理に修理を重ねた建築物なんてイヤだ」という客先もあるでしょうから「修理するのなら先に断ってからやってくれ」という要求もあって当然です。
 次に問題の後者ですが、まず「規定要求事項」とは何か、を理解しないと話が進みません。規定要求事項とは客先と交わした仕様や規格だけではないのです。規定要求事項は次の3つから成ると考えてください。
(1)対外的な規格・仕様
(2)内部の規格や取り決めなど(社内規定)
(3)社会的に要求されていること
 (1)は説明不要でしょう。(3)は例えば法律で決まっている(規制されている)ようなものを指します。建築基準法とかいろいろあるでしょう。客先はそういうものを満たせと仕様には普通は書きませんが、メーカとしては仕様には無くても、関係する全ての法規・法令・規則・条令その他当然守るべき条項を満たす必要があります。
 (2)は社内の決め事や社内規格(内規)などを指します。例えば電機業界では、客先に約束している規格(外規という)を例えば±10mmだとすると 内規ではマージンを見込んで±8mmなどとします。測定器の精度や管理上の問題で絶対に規格を割らないようにマージンをとっておくことが多いのです。この場合、出来上がりが±9mmになると内規は外れているが外規は満たしていることになります(内規を外れたものも不適合品です)。
 社内の決め事はいろいろあるでしょう。ここで「モルタルの厚みは中央と周辺4ケ所の合計5ケ所を測れ」という規定を一例として取り上げましょう。検査員が手抜きをしてもし3ケ所しか測っていなければ、たとえ(あとで蓋を開けてみれば、どの部分も)寸法規格に合格していても、これは検査作業として社内規定に不適合で、出来上がった製品は不適合品になります。他の一例は、「ボルトは10kg±3kgのトルクで締めよ」と社内の品質管理上の規定で定めてあったのに、作業者が知らずに5kgのトルクで締めちゃったら、これも不適合(品)になります。こういう不適合品は、出来上がったモノを検査しても分からないのが普通です。
 ここまで説明すると、不適合品というのは、必ずしも客先と約束している規格(外規)や仕様に外れたものばかりを言うのではないことが理解いただけたでしょう。つまり、外規はOKだが内規はダメというケースもありますし、内規も外規もどこも(検査したかぎりは)OKだけれど、途中の作業(仕事)のやり方が社内規定(標準など)から外れていた、というケースもあります。 
 こうした「不適合品」を出荷するのに、いちいち客先の承認を正直に取るかどうか、それは貴社の適切な判断で決めれば良いことなのです。

 用語の使い分けが理解できていませんのでご教授ください。ISO9001にも ”不合格”と”不適合”が使い分けられていますが、使い分けがいま一つ分からないのです。また、社内では”不良”とか”不具合”多用されており統合しなければと考えていますがISO9001の”不合格”と”不適合”の使い分けを教えてください。

 ISO9001に「不合格」という用語が使われていることは知りません。ISO 9000シリーズ(以下、単にISOという)の規格全体の中にも「不合格」という表 現は、知る限り無いように思います。ISO9000の世界は「不適合」を問題にして いるのです。
 では、「不適合」とは何か、「不良」などとどう違うのか、なぜ「不適合」 という従来あまり聞いたことのないような用語を使うのか…です。
 ISO9000シリーズ規格は「具合の悪いことが未然に起こらないように防止しよう」という考えが底流にあり、これをpro-activeと呼んでいます。一方、従来からやってきた(日本式の)品質管理はpre-activeと言われ、何か具合の悪いことが起こったら再発しないように手を打とう、です。考え方や手順に違いがあるわけです。
 これを「不良」「不具合」「不適合」という言葉の説明をしながら、もうち ょっとクリヤにします。まず、「不良」と「不具合」の違いは何でしょうか。 JIS規格などに書かれた定義とは別に説明しますと…「不良」は要求された品質 特性の中でも、機能・性能上に満たさないところがあって、品質上重大な欠陥があること(またはその物)を指します。これでは全く使えないわけです。
 「不具合」も要求された品質特性を満たさないところがあること(またはそ の物)を言いますが、機能・性能上の欠陥ではない軽微なものまでを含めます。 例えば客先からの注文で「電話器」を設計・製造したとき、電話器のダイヤ ルの「文字のフォント(字体)」が注文(仕様)とちょっと違っていると、これは不具合です。機能・性能上の問題ではありませんので、頭を下げれば客先には使ってもらえるかも知れません。
 「不適合」はこれよりも、もっと範囲が広いのです。「不適合」は「規定要 求事項を満たさないこと」を言います。規定要求事項には3つあり、かみ砕い て言うと、次のようになります。
 ・客先からの要求事項(つまり客先仕様です)
 ・社内からの要求事項(社内規定・手順書・標準・基準(内規)など)
 ・社会からの要求事項(法規・法令・規格など守るべき取り決め)
 もっとかみ砕いて言えば、不適合は「その仕事をするに当たって守るべき決 めごとから逸脱すること」をいうのです。
 例えば、ある容器に蓋(8ケ所のボルト締め)をする作業工程で、作業指導書には「8ケ所の穴にボルトを仮締めしたあとで、トルクレンチでしっかり締めなさい」と規定してあったとしましょう。ところが作業者は面倒なものだから、ボルト1本ずつ、いきなりトルクレンチで締めて作り上げてしまった…これは作業指導書には「不適合」です。また「3±1kgのトルクで締めなさい」という規定に対して5kgのトルクで締めると、これも不適合で、そうした製品は不適合品ということになります。
 もうひとつ例をあげると、新製品の開発設計には「設計審査」などがISO9001で要求されており、必要です。ところが設計者はこれをサボっていきなり設計図を仕上げてしまい、それで新製品を製造したとします。この新製品は「不適合品」になります。
 ここで紹介した「不適合品」は検査がいくらしっかりしていても、その不適合が発見できません。「不良」と「不具合」は検査で発見可能です。ISO9000シリーズ規格ではこの不適合も問題にし、そういうことがないように、と求めているのです。ここに従来の日本式品質管理との大きな違いがあります。
 ちなみに、それぞれの部署の責任者は、こうした不適合が起こっていないことをどうやって確かめているか(なぜ、そう言えるか)、という質問がISO9001(ISO9002)の審査の際にあるかも知れません。これに納得できるような回答ができれば、ISO9001(ISO9002)の受審も間近に迎えられる管理状態といえましょう。


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