このページはISO9000に関するケーススタディを掲げます


顧客支給品に思い当たるものがないのだが…

 要求事項のなかに顧客支給品の管理(4.7)がありますが、当社はメーカであり顧客支給品に匹敵する物がないのですが・・・どう理解すればいいのですか? 教えていただければ幸いに存じます。

 ISO9001規格はどの業界でも使えるようにしてあるため、規格の中味は曖昧で取っつきにくく、該当しない部分も出てきます。
 貴社において「顧客支給品の管理(4.7)」が全く該当しないのであれば、取り込む必要はありません。審査機関や審査員によっては、該当するものがない場合でも品質マニュアルには「これこれ、こういう理由で該当しない」と書いておけ、と言うことがあるようですが、基本的には関係ないものは品質マニュアルには書かなくても構わないのです。
 ただ、ホントに該当するものがないのかどうか、漏れないようによく見渡しておく必要があります。貴社がどんなメーカでどういう立場でどういう仕事をされているのか分かりませんが、例えば顧客(親会社も含めて)から図面を渡されたり、色見本・限度見本・何かのサンプルを受け取ったり、納入品をクレームとして返品されたり、検査機器や測定器を顧客から借用したりするようなことがあるのなら、管理の対象に含めるべきです。

 (類似の質問)現在、ISO9001の認証取得をしようとしておりますが、当社はメーカであり顧客から支給品を受ける場合がないのですが、どう解釈してマニュアル化すれば良いのですか。教えてください。

 どのようなモノを製造なさっているのか不明ですが、客先から渡されるものは、全くありませんでしょうか。案外、保守修理・改造のために以前に納入した製品を一旦引き取るような、見落としがちな支給品があります。再点検なさってください。
 全く無ければ、品質マニュアルには何も書く必要はないのですが、下らない審査員は「無いなら無いで、『当社は顧客から支給を受けるケースは無いため、“顧客支給品の管理”は該当せず』と書いておけ」と言うことがあります。
 また別の審査員は「将来あるかも知れないことを想定して、そのときに困らないように手順を書いておけ」と言う場合もあります。
 該当することがない場合は、品質マニュアルには何も書かなくてよいというのが正解ですが、不幸にして妙な審査員にめぐり会ったときに、きちんと説明(説得)できる自信がないのであれば(あるいは無駄な言い争いに時間を割きたくなければ)やむを得ず(不本意ながら)上記のいずれかの処置をしておくことです。あまりお薦めしませんが。

 本社より支給される貸与設備は、顧客支給品の管理の対象に該当するのでしょうか?

 その本社がScope外の組織の想定で回答します。まず本社が顧客に当たるかどうかですが、注文なり手配なり本社から来るわけではないとすれば(本社が顧客ではないとき)、これは顧客からの支給品には当てはまりません。社内といえどもそこが注文主(手配主)の場合(本社が顧客と見なせる場合)は、顧客支給品の対象になります。

 当社は顧客から「試作品製造」を指示されています。この際、材料・試作図面を無償で顧客より支給されています。これを受けて当社は試作品を製造し、最終的に顧客に対して試作品を売却しています。この材料・試作図面はISO9001(ISO9002)の「顧客支給品」に該当するのですか?
 また、材料を無償支給ではなく、有償支給とすれば「顧客支給品」に該当させなくとも良いのでしょうか?

 いただいた文面から判断する限り、材料も試作図面も「顧客支給品」に該当すると思われます。材料を有償支給とした場合は、どのような手順で管理をすれば適切か、貴社で判断されるとよろしいかと思われます。すなわち、購買品と同じ扱いにするか、有償とは言え性格的には(顧客の意向で)顧客支給品なのだからそちらの扱いにするか、貴社および顧客の両方の視点から見て適切な管理ができればよろしいように思います。管理漏れになったり、どちらの手順を適用するか人によって判断がバラバラになるのが困ります。

 顧客支給品の管理に本部(顧客)より依頼された試作品は該当するのでしょうか? また、試作品を管理する場合次のような管理が必要だと考えているのですが、どうでしょうか。
試作品の管理について
(1)【生産計画周り】
    試作品は製造ラインで流すので、ライン能力検証の文書化
    (2)【支給される物品の受入管理】
   (物品:部材、作業依頼書(製造するための手順/要求事項)、測定プログラム等)
 なお、物品を受け入れる場合、何らかの検証活動はいりますか(部材の受入検査など)?
(3)【工程内の識別管理】
    試作品は工程内で特別な管理を行い、通常品との区別を行う。
    不具合が生じた場合速やかに工程内から撤去されるような管理、かつ顧客に対する報告活動。
(4)【支給された物品の引き渡し管理】
    試作品及び支給された材料一式の返品と顧客が要求するデータの提出

 実際のサイトに出かけて品質監査する場合に比べると、電子メールで相談を受けた場合の「診断」はかなり難しく感じられます。それは判断に必要な周囲の状況が全く見えないからであり、文面で説明を受けた限られた状況では視点が違っていることもあるからです。そういうことで適切な回答ができない(あるいは判断を誤る)こともあり得ます。
 さて、ご質問いただいた件ですが、やはり幾つか確かめたいことがあります。それは文面から私が認識した状況が実際と異なっているかも知れないからです。
 今回のご相談は某製品の試作品と受けとめ、(何かの新製品の開発または既製品の改良・変更を想定している)顧客(本部)から「まずは試作して試作品と試作データを納めてくれ」という依頼(顧客の要求事項と受けとめます)があったものと想像します。また試作品を貴社が製造するために、材料が支給されるものと解釈します。
 この場合の顧客支給品は、物品(部材)、作業依頼書(製造するための手順要求事項)、測定プログラム等と考えられますが、もしこの試作品が個別契約つまり受注対応になるとすれば、作業依頼書は注文書の一部(例えば添付資料)になるのでしょうか。作業依頼書が「購買データ」に該当するのか、支給品に該当するのか、状況を見て考えを整理した方がよいと思われます。
 「それから何らかの検証活動(部材の受入検査など)はいりますか」ですが、どこまですれば適切かは貴社で(場合によっては本部と相談しながら)考えていただかなければなりません。個人的な見方で言えば、支給された材料の「材料特性」までの受入検査なんてできないでしょうし、測定プログラムの「機能」の検証も無理でしょう。できる(すべき)のは、本部が支給したと称するものが現物確認(品名、型式、数量、外観、プログラムの場合は一度走らせてみる等、これらは一例です)で一致しているかどうかくらいではないでしょうか。
 それ以外の項目では「試作品の管理について」に書かれた内容で特に??と思うところはありません。むしろ「ライン能力検証の文書化」を見て「ほほう、通常はここまでなさっているのですか」と感心したくらいです。
 状況がもうひとつハッキリしなかったのは、試作品が個別契約になるのか、「本製品製造」契約の中で付帯サービスとして特に試作まで求められているのか、です。これは場合によって付帯サービスの扱いにすべきだ、と提示しているわけではありません。試作品の位置づけが文面では分からないだけです。


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