ISO 22000:2005の概要と解説
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最新改訂年月日:2007.10.06

 ISO 22000:2005(Food safety management systems−Requirements for any organization in the food chain:食品安全マネジメントシステム−フードチェーンに対する要求事項)は2005年9月1日に国際規格としてISO(国際標準化機構)から発行されました。
 これに対する正規の日本の規格は、今のところありません。食品の安全・衛生は日本では農林水産省、厚生労働省、内閣府食品安全委員会が関係するため、経済産業省の管轄下に入る日本工業規格(JIS規格)にはなりそうになく、農林水産省の消費・安全政策課などの説明によると、日本農林規格(JAS規格)にも規格体系上なりにくく(製品規格を前提しておりシステム規格はなじまない)JAS化される予定はないとのことです。このため、この規格の日本語版が必要な場合は(財団法人)日本規格協会から発行されている英和対訳版を参照してください。
 なお、ISO 22000の認定業務はJAB(財団法人日本適合性認定協会)が行うことになっています。その認定基準であるISO/TS 22003は、2007年3月現在ISO専門委員会で開発中で、大幅に遅れているものの3月と見込まれるその発行を待って、JABでは5月から認定申請の受付を開始する予定です。認定の基準文書としては、日本規格協会の英和対訳版がそのまま採用されそうです。

 ここでは、ISO 22000が定めている要求事項の概要と解説を掲げます。正規の内容はISO 22000規格の原文(Food safety management systems−Requirements for any organization in the food chain)と日本規格協会の英和対訳版をご覧ください。
 以下に掲げる概要と解説は、ISO 22000の概要を解説的に紹介し、これから食品安全(食品衛生)の経営管理システムを導入してみようと思う食品関連企業(飼料製造業者、養殖業者・と畜業者・漁獲業者・収穫業者、農家、食品調理業者、食材製造加工業者、小売業者、レストラン・飲食店、仕出弁当業者、給食業者、清掃・洗浄・殺菌・消毒業者、輸送・保管・配給業者など)のために、参考に供するものです。

 以下では、Food safety management systemsのことをFSMS(食品安全マネジメントシステム)と略記します。
 また、原文にあるprocessのことをプロセスとも工程とも表現します。FSMSのシステム構成要素という意味合いが強い部分(おもに4章、5章、6章、8章)ではプロセスとし、食品の製造加工に密接した現場活動(作業)の部分(7章)では工程と記述してあります。
 effective/effectivenessは有効(性)とも効果的とも表現しています。どちらも意味はまったく同じで、計画(取決め)したことを実施すれば計画(見込み)どおりの結果が得られることを指します。形(見かけ)だけ実施して望みどおりの結果(成果)が出せない場合も、計画・手順・その他の取決めが不適切でそのとおりに実施しても見込んだ結果が得られない場合も、有効(効果的)とは言えないわけです。effective/effectivenessの原形であるeffectは、効き目としての結果はどうであるかという意味の結果を指しており、effect/effective/effectivenessは、結果に関心を寄せる用語です。
 そのほか、releaseは出荷(次工程引渡し)と表現しました。releaseとは組織の手を離れて外に出る(出す)ことを意味し狭義には出荷や発売のことですが、工程ごとに管理している場合にはその工程から次の工程に送り出す(引渡す)という、広義の解釈ができます。
 monitoring(モニタリング)については監視と記述し、top management(トップマネジメント)のことは単に経営者と書いてあります。さらにinstructionを指図(さしず)と記述しました。これは作業のやりかた(方法・要領)を示したものです。以前のISO 9001の日本語版(JIS)では指示書と訳されていました。

 ISO 22000は、その内容を見るとISO 9001:2000(品質マネジメントシステム−要求事項)がベースになっていることが分かります。その上に立って食品安全に特化した要求事項が規定され、ISO 9001の要求事項で見直したほうが良さそうな部分には修正の編集が加えられています。たとえばISO 9001では8章に入っていた「不適合製品の管理」は製造加工の現場活動(7章)に、同様に8章にあった是正処置も7章に移して現場活動論に近い取扱いにされています。ある意味ですっきりしました。また、ISO 9001では議論が多かった予防処置の規定はなくなっており、明確に検査と言える項目もありません。
 以下に紹介するISO 22000の概要と解説は、ISO 9001と対比して書いてあります。ISO 9001とほぼ同様の要求事項を規定した部分は、細かく記述することを省略し、ISO 9001の該当要求事項を見ていただくようにしました。したがって、ISO 9001の規格もあわせて参照ください。

 なお、青字で書いてある部分は解説であり、黒字で書いてある部分は、規格が求めている要求事項を意味します。


食品安全マネジメントシステム−フードチェーンに対する要求事項

1 適用範囲

 この規格は、食品の安全(衛生)を確保するための経営管理システム(食品安全マネジメントシステム)に必要なことが、要求事項として規定されている。言い換えれば、食品安全ハザードを管理する能力を担保する規格でもある。
 この規格は、フードチェーンの何らかの側面に関わり、終始一貫して安全で衛生的な食品を提供するシステムを構築して実施したいと希望するあらゆる組織に適用可能で、その規模にはよらず、汎用性がある。飼料製造業者、養殖業者・と畜業者・漁獲業者・収穫業者、農家、食品調理業者、食材製造加工業者、小売業者、レストラン・飲食店、仕出弁当業者、給食業者、清掃・洗浄・殺菌・消毒業者、輸送・保管・配給業者などであるが、他にも適用できる業者はあろう。

 この規格は、次のような目的に使える:

  • a) 製品の意図した用途に従う限り消費者に安全である食品を提供することを狙った食品安全マネジメントシステムを計画し、実施し、運用し、維持し、更新すること
  • b) 適用すべき食品安全の法令規制要求事項に準拠していることを実証すること
  • c) 顧客満足を高めるために、顧客要求事項を評価し見極め、食品安全に関わる相互に合意したこれら顧客要求事項への適合性を実証すること
  • d) 食品安全問題を食品供給者、顧客及び食品チェーンにある利害関係者と効果的にコミュニケーションすること
  • e) 組織が自ら表明した食品安全方針に適合していることを確保すること
  • f) そのような適合性を利害関係者に実証すること
  • g) その食品安全マネジメントシステムを外部機関に認証登録を求めること、あるいはこの国際規格への適合性を自己評価・自己宣言すること
  •  この規格は、弱小な組織では外部で開発された管理手段を組合せて実施してもよいことを認めている。

    2 引用規格

     ISO 9000:2000(品質マネジメントシステム−基本及び用語)がISO 22000を適用する場合に不可欠である、と書かれている。ISO 22000で使われている用語は、ISO 9000で規定された用語の定義と、3(用語及び定義)で示される用語の定義によることになっている。

    3 用語及び定義

    3.1 食品安全
     食品が意図された用途に従って準備され又は食される場合に、消費者に害がないこと

    3.2 フードチェーン
     食品及びその添加材料の生産、加工処理、配送、保管及び取扱いに関する一次生産から消費までの段階や作業の一連の繋がり

    3.3 食品安全ハザード
     健康への悪影響を起こす潜在的可能性を秘めた、食品の生物的・化学的・物理的な物質、あるいはその状態
     ハザードは、食品衛生上の危害の原因となるものと考えればよい。

    3.4 食品安全方針
     ISO 9000の用語の定義(3.2.4)とほぼ同じで、経営者によって正式に表明された食品安全に関する組織の全体的な意図及び方向付け

    3.5 最終製品
     組織による更なる加工処理又は性状変更がなされない製品

    3.6 工程流れ図
     各段階の繋がり(順序)と相互作用を図式的・体系的に表現したもの

    3.7 管理手段
     食品安全ハザードを予防又は除去し、あるいはそれを受容できる水準まで低減させるために使う(食品安全の)処置又は活動

    3.8 PRP(前提条件プログラム)
     (食品安全の)基本的条件及び活動で、フードチェーンを通じた衛生環境が安全な最終製品及び安全な食品の生産・取扱い・提供を人が消費するのに適しているように維持するために必要なもの
     PRPは一般的衛生管理プログラム(PP)とも言われており、これによって基本的な衛生管理を行う。その下で特に食品へのハザード低減・除去のために重要なところはCCP(重要管理点)として特別管理する。また環境面から見たハザード低減・除去のための管理システムはOPRPとする。

    3.9 OPRP(オペレーショナルPRP)
     ハザード分析によって、食品安全ハザードの入り込みやすさや製品又は加工処理環境で食品安全ハザードの汚染や細菌増殖を管理するのに肝要であると判明したPRP
     食品の安全衛生のために環境面から見たハザードの予防・除去・低減の重点管理プログラムをいう。PRPの重点管理版である。

    3.10 CCP(重要管理点)
     管理が適用でき、食品安全ハザードを予防又は除去し、もしくは受容水準まで低減するために肝要な(食品安全の)段階
     食品安全ハザードの予防・除去・低減のために重点的に管理すべき工程内の箇所をいう。たとえば食品の加熱殺菌(の段階)は食品からハザードを除去するので、CCPになりうる。金属探知機による食品内の金属異物も監視でき、そのようなハザードに対応することが可能なので、この工程(段階)もCCPになる。

    3.11 許容限界
     受容可能と受容不可能を分ける判定基準
     管理基準とも呼ばれている。

    3.12 監視(モニタリング)
     管理手段が意図したように働いているかどうかを調査するための、計画した一連の観察又は測定を行うこと

    3.13 修正
     ISO 9000の用語の定義(3.6.6)と同じで、検出された不適合を除去するための処置

    3.14 是正処置
     ISO 9000の用語の定義(3.6.5)と同じで、検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去するための処置

    3.15 妥当性確認
     妥当性確認とは、HACCPプラン及びOPRPによって経営管理される管理手段が有効(効果的)なものになる(食品安全の)証拠を得ること

    3.16 検証
     ISO 9000の用語の定義(3.8.5)と同じで、客観的証拠を提示することによって、規定要求事項が満たされていることを確認すること

    3.17 更新
     最新情報の適用を確実にするための、即時の及び/又は計画された活動


    4 食品安全マネジメントシステム

    4.1 一般要求事項
     ISO 22000の要求事項に従って、効果的なFSMSを構築し、文書・記録を作り、実施し、維持し、更新すべきことがFSMSの全般論として求められている。「効果的な」とは実施すれば計画(見込み)どおりの結果を出せることをいう。
     そのために、FSMSがカバーする製品(製品分類)・プロセス(工程)・生産場所まで規定した適用範囲を明らかにすることが求められている。
     またFSMSで主要な実施事項として、次のことがあげられている。

  • a) 食品安全ハザードに何があるのかを明らかにし、評価し、重要なものを確実に管理する
  • b) 製品に関する安全問題をフードチェーン全体に亘ってコミュニケーションする
  • c) 食品安全の確保のためにFSMSを必要な範囲で組織全体にコミュニケーションする
  • d) FSMSを定期的に評価し必要により更新することによって組織の活動を反映したものにし、管理下におく食品安全ハザードの最新情報を確実に組み込む
  •  コミュニケーションとは単なる通知・通達ではなく、相互に情報をやりとりすることである。
     アウトソースしたプロセス(工程)の管理も重要で、この点についてはISO 9001の4.1(一般要求事項)と同様のことが規定されている。

    4.2 文書化に関する要求事項

    4.2.1 一般
     FSMSの文書には次のものがあるとして、3項目あげられている。

  • a) 食品安全方針と目標
  • b) 文書化された手順と記録
  • c) FSMSの管理運用に必要な文書
  •  ISO 9001の4.2.1(一般)と比べると、マニュアルだけがこれに含まれていない。

    4.2.2 文書管理
     ISO 9001の4.2.3(文書管理)とほぼ同様の規定が書かれている。

    4.2.3 記録の管理
     ISO 9001の4.2.4(記録の管理)と同様の規定が書かれている。


    5 経営者の責任

    5.1 経営者のコミットメント
     コミットメントとは約束であるが、単なる約束(promise)とは違い、表明したからには果たさなければならない公約(誓約・確約)である。言いっぱなしでは済まされないもので、どのマネジメントシステムの規格も経営者には口の軽いpromiseではなく、責務のあるcommitmentが求められている。
     ここでもISO 9001の5.1(経営者のコミットメント)とほぼ同様の規定が書かれているが、目標については次のように一歩踏み込んだコミットメントの証拠が求められている。

  • 事業上の目標が食品安全の後ろ盾になっていることを明示する
  •  経営者は、食品安全方針に沿って設定した目標が食品安全を支える(後押しする)ものになっており、それが経営者の並々ならぬ姿勢であることを示せなければならない、ということである。

    5.2 食品安全方針
     ISO 9001の5.3(品質方針)とほぼ同様の規定が箇条書きで書かれている。追加されているのは目標についてで、目標は測定可能であって食品安全方針を下支えするものでなければならないことが要求されている。その分だけISO 9001の5.4.1(品質目標)に相当する条項は省かれている。
     測定可能(measurable)とは、必ずしも数値的な目標を設定することまで求めているわけではなく、何らかの尺度で達成状況が把握できるようにしておけばよい。

    5.3 食品安全マネジメントシステムの計画
     ISO 9001の5.4.2(品質マネジメントシステムの計画)と同様の規定が書かれている。

    5.4 責任及び権限
     ISO 9001の5.5.1(責任及び権限)と同様の規定に加えて、すべての要員はFSMSの問題を所定の責任者に報告する責任があり、指名された要員は必要な処置を発動し、記録をする責任と権限をもつことが書かれている。
     言い換えれば、組織の責任と権限を規定する中で、一般の業務従事者にはFSMSの問題を報告する義務があることを定め、その報告を受ける責任者は誰であるかも決め、(問題の内容によって)必要な処置を開始し記録をとる者も指名しておかなければならない。

    5.5 食品安全チームリーダー
     ISO 9001の5.5.2(管理責任者)と類似の規定が食品安全チームリーダーに求められているが、次の点が異なる。

  • 食品安全チームを統括管理し、その業務を組織する
    組織するとは、役割分担を決め、仕事のルールを定め、調整を図り、効果的に業務がなされるように采配することである
  • 食品安全チームの教育及び訓練を確実にする
  • 5.6 コミュニケーション
     コミュニケーションについてはISO 14001と同じように内部コミュニケーションと外部コミュニケーションとが求められているが、それぞれ以下のようにかなり詳細に規定されている。

    5.6.1 外部コミュニケーション
     食品安全問題に関する十分な情報がフードチェーン全体に行き渡るように、次の関係者とのコミュニケーションの手順が求められている。

  • a) 供給者及び契約者
  • b) 顧客又は消費者 とくに製品情報、問い合わせ、変更を含む契約又は注文、苦情を含む顧客からの反応について。製品情報には意図した用途、保管についての指定事項、必要な場合に保管期間を含む
  • c) 法令規制監督機関(保健所など)
  • d) FSMSの有効性・更新が影響を与えたり、FSMSの有効性・更新に影響を受けるその他の組織
  •  このようなコミュニケーションにおいては、フードチェーン内における他の組織に関係しそうな組織の製品の食品安全面の情報が提供できるものであること。フードチェーン内の他の組織によって管理されるべき既知の食品安全ハザードにも、このことは当てはまる。コミュニケーションの記録は取っておくこと。
     法令規制監督機関と顧客からの食品安全要求事項(順守事項など)は、必要な関係者には利用できるようにしておくことも必要である。
     指名された要員には明確な責任と権限を与え、いかなる食品安全に関する情報も外部とコミュニケーションを図れるようにしておくこと。外部とのコミュニケーションを通じて取得した情報は、FSMSの更新とマネジメントレビューに供すること。

    5.6.2 内部コミュニケーション
     食品安全に影響を与える問題を要員にコミュニケーションする効果的な手続きを用意すること。
     FSMSの有効性を維持するために、食品安全チームに次の事項(これだけに限定されない)に変更があればタイムリーに知らせること。

  • a) 製品又は新製品
  • b) 原材料、食品添加材料、サービス(食品に関連する取扱い・加工・調理・配送・飲食物提供・清掃・洗浄・消毒・殺菌などの業務)
  • c) 生産システム及び機器
  • d) 製造施設、機器の設置場所、周辺環境
  • e) 清掃・洗浄・殺菌・消毒プログラム
  • f) 包装・保存・配送
  • g) 要員の資格レベル・責務の割り当て
  • h) 法令規制要求事項
  • i) 食品安全ハザードとその管理手段に関する知識
  • j) 組織が見守るべき顧客・業界・その他の要求事項
  • k) 外部利害関係者からの関連する問い合わせ
  • l) 製品と連結する食品安全ハザードを示唆する苦情
  • m) 食品安全に影響を有するその他の条件
  •  食品安全チームはこの情報をFSMSの更新に確実に反映させ、経営者にはマネジメントレビューに関連情報を取り込むことが求められている。

    5.7 緊急事態に対する備え及び対応
     ISO 14001の4.4.7(緊急事態への準備及び対応)の最初のパラグラフ(一段落)に書かれた規定と類似のことが書かれている。
     食品安全に影響を与える可能性があり、フードチェーンにおける組織の役割に関連した潜在的な緊急事態及び事故を管理する手順を構築し、実施し、維持することが求められている。
     ISO 14001のように手順のレビュー(点検・見直し)や手順の定期的テストまでは求められていないが、FSMSを更新してより効果的なものにするためには、そこまで踏み込んだ手順にしておくことが望ましい。

    5.8 マネジメントレビュー

    5.8.1 一般
     ISO 9001の5.6.1(一般)と同様の規定が書かれている。

    5.8.2 レビューへのインプット
     マネジメントレビューに供すべき情報は、ISO 9001の5.6.2(マネジメントレビューへのインプット)と類似しているが、一部はISO 14001の4.6(マネジメントレビュー)に書かれた項目も参考にして取り込まれている。

  • a) 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ
  • b) 検証結果の分析
  • c) 食品安全に影響を与えうる変化しつつある状況
  • d) 緊急事態、事故及び回収
  • e) システム更新結果のレビュー
  • f) 顧客からのフィードバックを含む、コミュニケーション活動のレビュー
  • g) 外部監査又は検査
  •  経営者が情報をFSMSで表明した目標に関連付けできるように、データを提供すること。

    5.8.3 レビューからのアウトプット
     ISO 9001の5.6.3(マネジメントレビューからのアウトプット)と同様に、マネジメントレビューによって経営者が明らかにすべき決定事項と処置事項が書かれているが、項目には多少の違いがある。

  • a) 食品安全の保証
  • b) FSMSの有効性の改善
  • c) 経営資源の必要性
  • d) 食品安全方針と関連目標の改訂

  • 6 資源の運用管理

    6.1 資源の提供
     FSMSに必要な経営資源を提供すべきことがISO 9001の6.1(資源の提供)よりも簡潔に規定されている。

    6.2 人的資源

    6.2.1 一般
     ISO 9001の6.2.1(一般)と類似の規定文に加えて、FSMSの構築・実施・運用・アセスメントに外部の専門家の協力が必要な場合には、その責任・権限を定めた合意記録又は契約書を閲覧できる状態にしておくことが求められている。

    6.2.2 力量、認識及び教育・訓練
     ISO 9001の6.2.2(力量、認識及び教育・訓練)とほぼ同様の規定が書かれているが、次の2項目が追加されている。

  • FSMSのモニタリング・修正及び是正処置を担当する要員には教育・訓練をすること
  • 食品安全に影響を与える業務に従事する要員には効果的なコミュニケーションの要求事項を理解させること
    5.6.1と5.6.2で定めた報告・連絡・相談や通達・提案・指導など情報授受の取決めを確実に理解させることである。
  • 6.3 インフラストラクチャー
     ISO 9001の6.3(インフラストラクチャー)より簡素に規定されている。

    6.4 作業環境
     ISO 9001の6.4(作業環境)と類似の規定が簡素に書かれている。


    7 安全な製品の計画及び実現
     この章ではISO 9001の7(製品実現)とは様相を異にし、食品安全に特化した肝心要(かんじんかなめ)の要求事項が細かく盛りだくさん規定されている。

    7.1 一般
     安全な製品作り(サービス提供)が実現できるために、その工程を計画(企画、取決め)し、具現すべきことが一般論として規定されている。
     計画した活動(業務)やその変更は実施し、運用し、有効性を確実にすること。これにはPRP、OPRP及び/又はHACCPプランを含める。
     有効性を確実にするとは、計画(企画、取決め)したことを実施すれば、計画(見込み)どおりの結果を確実に出せるようにすることを意味する。形だけやって結果が伴わない場合や、計画や実施手順・管理手段がまずくて期待どおりの結果が出せない場合は、この要求事項にそぐわないことになる。
     なお、コーデックス委員会が定めたHACCPは、厚生労働省など日本の政府が国際規格として認めたものであり、これに準拠する必要がある。

    7.2 PRP(前提条件プログラム)
     PRPは一般的衛生管理プログラムのことである。
    HACCPのPRP
    第1:施設・設備の定期清掃・点検による清潔維持 (※施設・設備の衛生管理手順例
    第2:従業員の衛生教育・訓練
    第3:機械器具の定期点検と保守・管理 (※機械器具の衛生管理手順例
    第4:鼠・昆虫などの調査と防除器具の定期点検と保守・管理 (※防鼠・防虫の管理手順例
    第5:使用水の衛生管理 (※使用水の管理手順例
    第6:排水・廃棄物の衛生管理
    第7:従業員の健康管理・専用作業着と手洗いの衛生管理 (※従業員の衛生管理・教育手順例
    第8:原材料・中間製品・最終製品の衛生的な取扱い
    第9:製品回収プログラムの作成
    第10:製品などの試験・検査に用いる監視・測定機器の定期点検と保守管理
    ※例に示したものは、滋賀県県民文化生活部生活衛生課食の安全推進室のウェブページに掲載された情報です。

    7.2.1 (PRPの構築・実施・維持)
     次の事項を管理するためのPRPの構築・実施・維持が求められている。

  • a) 作業環境を通じた製品への食品安全ハザードの入り込みやすさ
  • b) 製品間の交差汚染を含む製品の生物的・化学的及び物理的汚染
     交差汚染のことを二次汚染ともいう
  • c) 製品及び製品加工環境における食品安全ハザードの水準
  • 7.2.2 (PRPに求められる事項)
     PRPは次のように求められている。

  • a) 食品安全にとって組織の必要性に適っているものであること
  • b) 作業の規模及び種類、製造/取扱い製品の性質に適切なものであること
  • c) 一般適用プログラムとしても特定製品/特定作業ラインとしてでも、生産システム全体を通して実施されるものであること
  • d) 食品安全チームに承認されていること
  •  上記事項と関連する法令規制要求事項を明確にすることも求められている。

    7.2.3 (PRPの選定・構築)
     PRPの選定・構築には、適切な情報(法規法令、顧客要求事項、了承した指針、コーデックスの原則と実施規範(規格)、国内・国際・業界規格など)を検討して利用することが求められている。
     WTO協定の付属文書であるSPS協定の第3条第1項においては、日本を含むWTO加盟国は、国際規格(食品の場合はコーデックス規格)に基づいて衛生措置を取ること、とされており、各国の食品衛生規制をコーデックス規格に調和させるのが原則になっている。ただし、同時に第3条第3項において、科学的な根拠がある場合には、国際規格よりも高レベルの保護をもたらす措置を取ることができる、ともされている。(この部分は厚生労働省食品安全部の説明によるものです)

     PRPを構築する場合には、次の点を考慮すること。

  • a) 建物と関連ユーティリティの構造・レイアウト
  • b) 作業スペースと従業員施設を含む構内のレイアウト
  • c) エア・水・エネルギー、その他のユーティリティの供給
  • d) 廃棄物と排水処理を含めた支援業務
  • e) 清掃・洗浄、保守、予防保全に対する設備の適切性と利用性
  • f) 購入材料(原材料、食品添加材料、化学物質、包装材など)・供給材(水、エア、蒸気、氷など)・処分物(廃棄物、排水など)・製品の取扱い(保管、輸送など)の管理
  • g) 交差汚染の予防手段
  • h) 清掃・洗浄・殺菌・消毒
  • i) 防鼠・防虫
  • j) 要員の健康衛生
  • k) その他の該当側面
  •  PRPの検証を計画し(7.8参照)、必要に応じてPRPを修正すること。検証と修正の記録は維持すること。PRPに含まれる活動をどう管理すべきかは文書で規定するのがよい。

    7.3 ハザード分析を可能にするための準備段階
     ここでは食品安全ハザードを調査・分析するための事前準備として、必要なことが規定されている。ハザードについては7.4の解説(青字)を参照のこと。

    7.3.1 一般
     ハザード分析の実施に関わる全般論として、必要なすべての関連情報の収集・維持・更新・文書化と、記録の維持が求められている。

    7.3.2 食品安全チーム
     食品安全チームを編成しておくことが必要で、そのメンバーとリーダーは指名して決めておかなければならない。リーダーは施設の長(工場長)など現業部門のトップ、メンバーはその配下の部課長がよい。
     食品安全チームはFSMSの開発・実施の面で多分野の知識と経験を合せ持っていること。これにはFSMSの適用範囲における製品・工程・機器・食品安全ハザードを含むが、これに限定されない。
     食品安全チームが必要な知識及び経験を有することを実証できる記録は維持すること。

    7.3.3 製品の特性

    7.3.3.1 原材料・食品添加材料・製品に接触するもの
     すべての原材料・食品添加材料・製品に接触するものは、ハザード分析の実施に必要な程度まで文書に記述すること。これには適宜、次のものを含む。

  • a) 生物的・化学的・物理的な特性
  • b) 添加物・加工補材を含む食品添加材料の組成
  • c) 由来
     たとえば、香料(オレンジ由来)などと記述する。
  • d) 製造方法
  • e) 包装・配送の方法
  • f) 保管条件・保管期間
  • g) 使用又は加工前の下拵え(調理)・取扱い
  • h) 意図した用途に適した購入材料・食品添加材料の食品安全関係の合否判定基準又は仕様
  •  上記に関する食品安全の法令規制要求事項を特定すること。これらの記述は、7.7に従って要求されている場合も含めて、常に更新しておくこと。

    7.3.3.2 最終製品の特性
     最終製品の特性は、ハザード分析を実施するのに必要な程度まで、文書に記述すること。これには適宜、次のものを含む。

  • a) 製品名称又は同等の識別
  • b) 組成
  • c) 食品安全に関する生物的・化学的・物理的な特性
  • d) 意図した保管期間・保管条件
  • e) 包装
  • f) 取扱い・下拵え(調理)・使用についての食品安全又は処方に関するラベル表示
  • g) 配給方法
  •  上記に関する食品安全の法令規制要求事項を特定すること。これらの記述は、7.7に従って要求されている場合も含めて、常に更新しておくこと。

    7.3.4 意図した用途
     意図した用途である最終製品の当然予想される取扱い、及び意図外ではあるものの当然予想される最終製品の取扱いミス・誤使用はすべて考慮し、ハザード分析を実施するのに必要な程度まで、文書に記述すること。
     各製品ごとに使用者グループ、及び該当する場合には消費者グループを明確にすること。
     特定の食品安全ハザードに特に抵抗力が低いと知られている消費者グループを考慮すること。
     これは乳幼児、病人、老人など、特定の感染・中毒に弱い人たちをいう。
     これらの記述は、7.7に従って要求されている場合も含めて、常に更新しておくこと。

    7.3.5 工程流れ図、工程の段階及び管理手段
     ここではFlow diagramを工程流れ図と記述しており、用語の定義では「各段階の繋がり(順序)と相互作用を図式的・体系的に表現したもの」とされている。製造業界におけるQC工程図(工程管理図ともいう)を想定すると分かりやすい。これは工程を段階順にかつ体系的にフローチャートに表したもので、管理の押さえどころを示した図表である。

    工程流れ図の例滋賀県県民文化生活部生活衛生課食の安全推進室のウェブページに掲載された情報です)

     食品衛生法の第十三条、食品衛生法施行令の第一条に定められた食品等事業者にとって承認が必要な食品の総合衛生管理製造過程が、これに利用できる。食品衛生法施行規則(第十三条)には総合衛生管理製造過程の基準として、イ:製品の名称・種類・原材料・その他必要な事項を記載した製品説明書、ロ:製造・加工に用いる機械器具の性能・その他必要な事項を記載した製造・加工の工程に関する文書、ハ:施設設備の構造・製品等の移動の経路・その他必要な事項を記載した施設の図面 の3項目が規定されている。(7.5の青字を参照のこと)

    ★★★★★
     ここで参考までに、ソーセージ(エマルジョンタイプ)のHACCP工程管理図の例を紹介する。営業目的(セミナー・コンサルティングを含む)には使用してはならない。またこれは参考例であり、内容の適切性は保証していない。
     このことに同意すれば、ここをクリックすることによりHACCP工程管理図(Excelによる図表)がダウンロードできる。
    ★★★★★

    7.3.5.1 工程流れ図
     工程流れ図は、FSMSでカバーされる製品又は工程のカテゴリー(分類)に対して準備することが求められている。工程流れ図は食品安全ハザードのありうる発生・増加・入り込みの評価の基礎を提供するものでなければならない。
     また、工程流れ図は明瞭で、正確で、十分に詳細であることが求められ、工程流れ図には適宜、次のものを含めなければならない。

  • a) 作業におけるすべての段階のシーケンス(前後の繋がり)と相互関係
  • b) アウトソースしたプロセス(工程)と下請負作業
  • c) 原材料、食品添加材料、中間製品が工程の流れに投入される箇所
  • d) 再加工・再利用が行われる箇所
  • e) 最終製品・中間製品・副産物・廃棄物を出荷(次工程引渡し)・撤去(排出)する箇所
  •  承認を受けた総合衛生管理製造過程の説明書・工程図表・施設図面を元にするとよい。

     7.8に従って、食品安全チームは現地点検により工程流れ図の正確さを検証し、検証した工程流れ図は記録として維持すること。

    7.3.5.2 工程の段階と管理手段の記述
     食品安全に影響を及ぼしそうな現存の管理手段、それに適用される工程パラメータ及び/又は厳密さ、手順はハザード分析に必要な程度まで記述すること(7.4参照)。管理手段の選択と厳密さに影響を及ぼしそうな外部要求事項(規制監督機関や顧客などによる)も同様に記述すること。
     これらの記述は、7.7に従って更新する。
     工程パラメータとは、その工程を実施するのに必要な規定要因・特性・条件などを指し、たとえば温度、時間、処理速度などがあげられる。
     「厳密さ(rigorousness)」は3.(用語及び定義)に規定されておらず、このような場合にはOXFORDの辞書に従うことになっている。この辞書によるとrigorousnessとはシビアさ(厳格さ)や正確(精密)さをいう。たとえば加熱殺菌では温度と時間が重要な工程パラメータとなり、食品の中心温度が63℃のときに30分を要する場合には、同じ殺菌効果を上げるためには62℃では49分、61℃では80分も必要になり、逆に64℃なら19分、65℃なら12分で済む。温度がわずかに1℃狂っただけで必要な時間は大きく違ってくる。このようなケースでは、中心温度はかなりの「厳密さ」をもって所定の値にしなければならないことになる。したがって温度の許容幅(たとえば63℃±0.5℃、40分)の設定、温度計の精度管理、温度測定方法・手順の確立が必要になってくる。この許容幅に押さえられない(管理できない)場合は、時間でマージン(余裕)を取るしかなくなる。

    7.4 ハザード分析
     食品安全ハザードは「健康への悪影響を起こす潜在的可能性を秘めた、食品の生物的・化学的・物理的な物質、あるいはその状態(condition)」と定義されている。かみ砕いて言えば、種々の危害原因である。特定のハザードにさらされた場合に健康に悪影響を及ぼす「リスク」とは異なるので、注意すること。リスクについては7.4.3の解説(青字)を参照のこと。

    大分類ハ ザ ー ド の 種 類
    生物的
    ハザード
    ウィルスノロウィルス、ロタウィルス、エンテロウィルス、アデノウィルス、サポウィルス、A型・E型肝炎ウィルス
    寄生虫アニサキス、顎口虫、旋毛虫、原虫(クリプトスポリジウム・赤痢アメーバ・ランブル鞭毛虫・サイクロスポラ)
    細 菌毒素型:ボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌
    感染型:サルモネラ菌、セレウス菌、腸炎ビブリオ菌、カンピロバクター、ウエルシュ菌、リステリア菌、ナグビブリオ菌、病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌(O-157)・毒素原性大腸菌・病原血清型大腸菌・組織侵入性大腸菌)、エルシニア属菌、赤痢菌、コレラ菌、チフス菌、パラチフスA菌
    化学的
    ハザード
    自然界の化学物質マイコトキシン、ヒスタミン、シガテラ、貝毒(麻痺性貝毒、下痢性貝毒)、キノコ毒、フグ毒(テトロドトキシン)、トリカブト
    添加した化学物質食品添加物(甘味料・着色料・香料・酸化防止剤・発色剤・漂白殺菌剤・防カビ剤・保存料・増粘剤・乳化剤・凝固剤・調味料・酸味料・膨張剤・栄養強化剤・光沢剤・pH調整剤・軟化剤・酵素・発泡剤・被膜剤・イーストフード・かんすい)
    意図せぬ化学物質農薬(殺虫剤・殺菌剤・除草剤・発芽防止剤・組織劣化防止剤・酸化防止剤・苦味斑防止剤・成熟調整剤)、洗剤、抗生物質、容器からの溶出物質、PCB、ダイオキシン
    物理的
    ハザード
    混入異物金属片、ガラス片、ゴム・プラスチック片、紙くず、小骨、焦げ、砂利、髪の毛、虫の死骸
    状態細菌・化学物質・異物の多さ、汚染の広がり状態、汚染の部位、活性状態、水分・栄養・適温の程度、流行の状況
    (注)コレラ・赤痢・腸チフスなどは従来は法定伝染病として扱われ、食中毒には含まれてこなかった。

     ハザードにはアレルゲン(アレルギー抗原)も含まれることに十分注意すること。たとえば遺伝子組み換えトウモロコシ(スターリンク)。
    アレルギーの原因となる特定原材料5品目:卵・乳・小麦・そば・落花生
    同特定原材料に準じる19品目:あわび・いか・いくら・えび・オレンジ・かに・キウイフルーツ・牛肉・くるみ・さけ・さば・大豆・鶏肉・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン

     「食品衛生法施行規則」の別表第二に「食品衛生上の危害の原因となる物質」が清涼飲料水/食肉製品/魚肉練り製品/容器包装詰加圧加熱殺菌食品ごとにリストアップされている。

    7.4.1 一般
     食品安全チームはハザード分析を行い、管理が必要なハザード、食品安全の確保に必要な管理の度合い、必要な管理手段の組合せを決定すること。
     精力的な調査と分析により、どこにどんなハザードが潜んでいるかを把握することが、FSMSの経営管理の原点となる。ハザード分析の手法として、品質管理のFMEA(Failure Mode & Effective Analysis、故障モードと影響分析)が参考になろう。

    7.4.2 ハザードの明確化と受容水準の決定

    7.4.2.1 (ハザードの特定)
     製品のタイプ、工程のタイプ、現実の加工処理施設に関して発生することが当然予想されるすべての食品安全ハザードを明確にし、記録すること。明確化は次の事項に基づくこと。
     どこにどんな食品安全ハザードが潜んでいるかを調査で洗い出すためには、少なくとも製品(食材など)、工程、施設(設備・機器・器具など)の3つの切り口で網羅的かつ詳細に調べ上げる必要がある。そのために利用する工程流れ図などの事前準備事項(7.3参照)は、少なくともこの3つの点で十分正確かつ詳細で漏れなく用意されていなければならない。できれば通常の操業(作業)とは違う非通常時のケース(たとえば休業時の定期補修、臨時作業など)も考慮に入れるのがよい。

  • a) 7.3に従って収集した準備情報とデータ
  • b) 経験
     食品安全に関する過去のトラブル事例や従業員・関係者のもっている経験をできるだけ集めるのがよい。異物混入も忘れないこと。
  • c) 可能なところまでの疫学的・経過的なデータを含む外部情報
     ここでいう疫学的(epidemiological)とは、感染・中毒の広がり(の速さや範囲)とその抑制・対策の効果を科学的・学術的に調査することをいう(これはOXFORDの辞書によるもので、食品衛生法施行令に出てくる疫学的調査を解説したものではない)。食品安全に関する外部からの情報も可能な限り集めるのがよい。
  • d) 食品安全ハザードについてのフードチェーンからの情報で、最終製品・中間製品・消費時の食品の安全に関係しそうなもの
  •  それぞれの食品安全ハザードが入り込みそうな段階(原材料・加工処理・配給から)は表示すること。

    7.4.2.2 (ハザードを特定する際の考慮事項)
     ハザードを特定にする場合は、次の事項に考慮すること。

  • a) 規定した作業の前及び後の段階
  • b) 工程にある機器・ユーティリティ又はサービス・周辺環境
     ユーティリティとはインフラストラクチャー(6.3参照)のひとつで、ガス・水道・電気・エア・蒸気などを指す。
  • c) フードチェーンの前及び後の繋がり
  • 7.4.2.3 (食品安全受容水準の決定)
     特定されたそれぞれの食品安全ハザードに対して、最終製品における食品安全受容水準を可能なところには必ず決めることが求められている。決められた水準は特定した法令規制要求事項、顧客の食品安全要求事項、顧客によって意図された用途、その他の関連データを考慮に入れていること。
     そのように決めたことの正当性と結果は、記録に残すことが必要である。

    7.4.3 ハザードアセスメント
     ハザードアセスメント(調査・評価)を実施し、明らかにしたそれぞれの食品安全ハザード(7.4.2参照)に対して、除去又は受容水準までの低減が安全な食品の生産に必須であるかどうか、所定の受容水準を満たせるように管理が必要かどうかを決定すること。
     それぞれの食品安全ハザードは、健康に与える悪影響の重大性とその発生の起こりやすさ(これをリスクという)に応じて評価すること。これに使用する評価方法論は記述し、食品安全ハザードアセスメントの結果は記録すること。

    7.4.4 管理手段の選択とアセスメント
     7.4.3のハザードアセスメントに基づき、適切な管理手段の組合せを選択する。これは食品安全ハザードを予防し、除去し、又は決定した受容水準まで低減できるものであること。この選択においては、明らかになった食品安全ハザードに対する有効性という観点で、7.3.5.2で記述したそれぞれの管理手段をレビュー(点検・見直し)する。
     選択した管理手段は、OPRPかそれともHACCPプランか、どちらで管理する必要があるかをカテゴリー分け(分類)すること。
     選択とカテゴリー分けは、次の事項に関するアセスメントを含めた論理的手法を使って実施する。

  • a) 適用する厳しさに対比した、明確にされた食品安全ハザードへの効果
  • b) 監視の実施可能性(即時修正を可能にするタイムリーに監視する能力など)
  • c) 他の管理手段と対比した、システム内の位置
  • d) 管理手段の機能不全、又は重大な加工処理上の変動の起こりやすさ
  • e) 機能不全の場合の結果の重大性
  • f) 管理手段が規定どおりに確立され、ハザードの除去又はそのレベルを顕著に低減するのに適用できるかどうか
  • g) 相乗効果(ふたつ以上の管理手段の相互作用によって、単独の効果の合計よりも高い組合せ効果が結果に出ること)
  •  HACCPプランに入るカテゴリーの管理手段は、7.6に従って実施する。他の管理手段は、7.5に従ってOPRPとして実施すること。
     このカテゴリー分けに使用した方法論とパラメータは文書に記述し、そのアセスメント結果は記録すること。

    7.5 OPRPの確立
     OPRPは文書化し、個々のプログラムには次の情報を含むこと。
     OPRPはOperational PRPのことで、3.9にあるようにハザード分析の結果にもとづき、食品の安全衛生のために環境面(システム面)から見たハザードの予防・除去・低減の重点管理プログラムをいう。OPRPはその管理状態を何らかの方法で監視でき、問題があれば修正・是正できるものでなればならない。たとえば、従業員の手・手袋・器具・包丁・まな板などから食品への交差汚染を予防・低減するために、その衛生管理状態はATP(アデノシン三リン酸)測定器やスタンプ検査によって測定可能なので、これはOPRPにできる。ミキサー内側・調理台・シンクなどの清掃・消毒状態もスタンプ検査で判明するから、これもOPRPにできる。

  • a) プログラムによって管理すべき食品安全ハザード(7.4.4参照)
  • b) 管理手段(7.4.4参照)
  • c) OPRPが実施されていることが実証できる監視手順
  • d) OPRPが管理状態にないことが監視で分かった場合に取るべき修正及び是正処置(修正は7.10.1、是正処置は7.10.2を参照)
  • e) 責任及び権限
  • f) 監視の記録
  • 食品衛生法施行規則(第十三条):
     食品衛生法第十三条第二項(同条第四項 及び法第十四条第二項において準用する場合を含む)の厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
     製品の総合衛生管理製造過程につき、次に掲げる文書が作成されていること。
     イ 製品の名称及び種類、原材料その他必要な事項を記載した製品説明書
     ロ 製造又は加工に用いる機械器具の性能その他必要な事項を記載した製造又は加工の工程に関する文書
     ハ 施設設備の構造、製品等の移動の経路その他必要な事項を記載した施設の図面
     製品の総合衛生管理製造過程につき、次に掲げるところにより定められた事項を記載した文書が作成されていること。
     イ 製品につき発生するおそれのあるすべての食品衛生上の危害について、当該危害の原因となる物質及び当該危害が発生するおそれのある工程ごとに、当該危害の発生を防止するための措置を定めるとともに、当該措置に係る物質が別表第二の上欄に掲げる食品につきそれぞれ同表の下欄に掲げる危害の原因となる物質を含まない場合にあつては、その理由を明らかにすること。
     ロ イの措置のうち、製品に係る食品衛生上の危害の発生を防止するため、その実施状況の連続的な又は相当の頻度の確認を必要とするものを定めること。
     ハ ロの確認の方法を定めること。
     前号ロの確認により同号ロの措置が適切に講じられていないと認められたときに講ずるべき改善措置の方法を記載した文書が作成されていること。
     製品の総合衛生管理製造過程に係る衛生管理の方法につき、施設設備の衛生管理、従事者の衛生教育その他必要な事項に関する方法を記載した文書が作成されていること。
     製品の総合衛生管理製造過程につき、製品等の試験の方法その他の食品衛生上の危害の発生が適切に防止されていることを検証するための方法を記載した文書が作成されていること。
     次に掲げる事項について、その記録の方法並びに当該記録の保存の方法及び期間を記載した文書が作成されていること。
     イ 第二号ロの確認に関する事項
     ロ 第三号の改善措置に関する事項
     ハ 第四号の衛生管理の方法に関する事項
     ニ 前号の検証に関する事項
     製品の総合衛生管理製造過程につき、次に掲げる業務(次号に規定する業務を除く。)を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせる者が置かれていること。
     イ 第二号ロの措置及び確認が適切になされていることを点検し、その記録を作成すること。
     ロ 第二号ロの確認に用いる機械器具の保守管理(計器の校正を含む。)を行い、その記録を作成すること。
     ハ その他必要な業務
     第五号の検証につき、次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせる者が置かれていること。
     イ 製品等の試験を行うこと。
     ロ イの試験に用いる機械器具の保守管理(計器の校正を含む。)を行い、その記録を作成すること。
     ハ その他必要な業務
    SSOP(Sanitation Standard Operating Procedures、衛生標準作業手順):
     水・氷の衛生管理、機械・器具の洗浄・殺菌、交差汚染の防止、手指の洗浄・消毒、要員の健康管理、有毒有害物質・異物の混入防止、飛沫・ドリップによる汚染防止、トイレの清潔・清掃・洗浄、防鼠・防虫などの衛生管理手順(書)を指す。これらの手順を定めるときは、5W1H+1A1Rを明確にしておくことが肝要である。
    食中毒予防3原則
    (1) つけない 食材に食中毒細菌を入り込ませない。魚のうろこを取れば腸炎ビブリオが飛散して周辺の食材を汚染する。鶏肉を捌いた俎板を通じて次の食材にサルモネラやカンピロバクター(解体中に混入する)が移り込む。調理人からは手に付いている黄色ブドウ球菌が食材に付着する。
    (2) 増やさない 食材中の食中毒細菌を増殖させない。細菌の増殖には水分・栄養・適温が必要であり、食材を適温(6℃〜60℃)に放置しない。低温で保管・保存するのがよい。
    水分活性増殖阻止される微生物
    0.98ボツリヌス菌の毒素産生
    0.97〜0.96ウエルシュ菌
    0.97〜0.94サルモネラ菌
    0.96〜0.94ボツリヌス菌、大腸菌
    0.88酵母
    0.88〜0.86黄色ブドウ球菌
    0.80真菌
    0.7微生物の生育限界
    水分活性(Aw)=(測定時の温度における食品を入れた密閉容器内の水蒸気圧)/(測定時の温度における純水の蒸気圧)

    (3) 生かさない(殺す) 加熱処理によって食材中の細菌やウィルスを死滅させる。75℃・1分(ノロウィルスは85℃・1分)が目安となる。ただし、ボツリヌス菌・ウエルシュ菌・セレウス菌は100℃でも死滅しない。また、加熱で黄色ブドウ球菌は死滅するが、その腸管毒は消滅しない。

    7.6 HACCPプランの構築
     HACCPとはHazard Analysis Critical Control Pointの略で、食品などの衛生管理に使われる危害分析重要管理点を指す。
    HACCPの7原則12手順
     手順1: HACCPチームの編成
     手順2: 製品特性(名称・種類・原材料・添加物・性状・特質・消費期限・容器形態など)の記述
     手順3: 製品の使用方法(生食用・加工用・原材料用・普通食用・患者用などの消費方法と消費販売対象)の記述
     手順4: 工程流れ図・SSOPの作成
     手順5: 工程流れ図・SSOPの現場確認
     手順6: ハザードの分析(原則1)
     手順7: 重要管理点の設定(原則2)
     手順8: 管理基準の設定(原則3)
     手順9: 監視方法の設定(原則4)
     手順10: 改善措置の設定(原則5)
     手順11: 検証方法の設定(原則6)
     手順12: 記録の維持管理方法の設定(原則7)

    7.6.1 HACCPプラン
     HACCPプランは文書化し、明確にされた個々のCCP(重要管理点)には次の情報を含むこと。

  • a) CCPで管理すべき食品安全ハザード(7.4.4参照)
  • b) 管理手段(7.4.4参照)
  • c) 許容限界(7.6.3参照)
  • d) 監視手順(7.6.4参照)
  • e) 許容限界を超えた場合に取るべき修正及び是正処置(7.6.5参照)
  • f) 責任及び権限
  • g) 監視の記録
  • HACCPプランの例滋賀県県民文化生活部生活衛生課食の安全推進室のウェブページに掲載された情報です)

    7.6.2 CCPの明確化
     HACCPプランで管理すべきハザードごとに、明確にされたどの管理手段にするかをCCPで特定すること(7.4.4参照)。
     CCPの数を多くするとかえって重点管理すべき点が散漫になるので、3〜5箇所に絞るのがよい。

    7.6.3 重要管理点の許容限界の決定
     それぞれのCCPごとに定めた監視項目に対して許容限界を決定する。この許容限界は、最終製品の食品安全ハザードについての所定の受容水準を超えないことを確実にできるように決定すること。
     許容限界は測定可能であること。選択した許容限界の根拠は文書化する。
     主観的データ(製品・工程・取扱いの目視検査など)に基づく許容限界は、指図(instruction)・仕様書・教育訓練のいずれかで証拠づけられるものにすること。

    7.6.4 重要管理点の監視システム
     それぞれのCCPごとに監視システムを構築し、CCPが管理されている状態にあることを実証できるようにする。このシステムでは許容限界についてスケジュールされた測定又は観察をすべて含むこと。
    スケジュールとは単に日程的な予定を組むことではなく、必要な段取り・計画・行事も含まれる。
     監視システムは次の事項をカバーする関連手順・指図・記録で構成すること。

  • a) 適切な時間内に結果を出せる測定又は観察
  • b) 使用する監視機器
  • c) 適用すべき校正方法(8.3参照)
  • d) 監視頻度
  • e) 監視及び監視結果の評価に関する責任・権限
  • f) 記録についての要求事項とその方法
  •  監視方法と頻度は、許容限度を超えたときに製品が使用又は消費される前に隔離する決定が間に合うものであること。

    7.6.5 監視結果が許容限界を超えたときの処置
     許容限界を超えたときに取るべき計画された修正及び是正処置は、HACCPプランの中で規定しておくこと。ここに限らず、計画とは取決めや手順などで定めた決め事までも指すと考えてよい。
     この処置によって不適合の原因を特定し、CCPで管理されているパラメータは管理状態に戻し、再発防止が確実になされること(7.10.3参照)。
     安全ではない可能性のある製品が、その評価を終えるまでは出荷(次工程引渡し)がなされないことを確実にする適切な取扱いについて、文書化した手順を確立し維持すること(7.10.3参照)。

    7.7 PRPとHACCPプランを規定する準備情報と文書の更新
     OPRP及び/又はHACCPプランを構築したあとは、必要により次の情報を更新すること。

  • a) 製品の特性(7.3.3参照)
  • b) 意図した用途(7.3.4参照)
  • c) 工程流れ図(7.3.5.1参照)
  • d) 工程の段階(7.3.5.2)
  • e) 管理手段(7.3.5.2参照)
  •  必要によりHACCPプラン及びPRPを規定した手順及び指図は修正すること。

    7.8 検証の計画
     検証計画では検証活動の目的・方法・頻度・責任を明らかにする。検証活動は次の事項を確かめるものであること。

  • a) PRPが実施されている
  • b) ハザード分析へのインプットが継続的に更新されている
  • c) OPRPとHACCPプラン内の要素が実施され、効果的である
  • d) ハザードのレベルが明確にされた受容水準に収まっている
  • e) その他の手順が実施され効果的である
  •  この計画のアウトプットは、組織の運用方法に合った様式(やりかた)にすること。検証結果は記録し、食品安全チームにコミュニケーションされること。また、検証結果は検証活動結果の分析ができるように供すること(8.4.3参照)。
     システムの検証が最終製品のサンプルテストに拠っており、そのサンプルテストが製品安全ハザード(7.4.2参照)の受容水準に適合していないことが分かった場合は、その影響を受ける製品ロットは7.10.3に従って安全ではない可能性があるものとして取扱うこと。

    7.9 トレーサビリティ(追跡性)システム
     ISO 9001の7.5.3(識別及びトレーサビリティ)よりもかなり踏み込んでトレーサビリティ(追跡性)のことが規定されている。食品ではトレーサビリティが重要で、いざとなった場合にトレーサビリティの機能がどこまで充実しているかによって、最終的に被る被害(組織自身にも顧客にも消費者にも)の大きさは、大きく違ってくる。
     製品ロットと原材料のバッチ・加工処理・配給記録との関係を特定できるトレーサビリティシステムを構築し、適用すること。このトレーサビリティシステムでは、直接の供給者からの納入される材料と、最終製品の最初の配送経路を特定できること。
     トレーサビリティは上流(供給源)に遡ることと、下流(出荷先)を辿ることの両方の機能が必要である。問題が組織内にあればその状態の履歴(要員、設備、工程パラメータなど)も遡及して調べられることが必要である。
     トレーサビリティの記録は、システムアセスメントで安全ではない可能性のある製品の取扱いができるために、また製品回収の場合のために、所定の期間は維持すること。この記録は、法令規制要求事項及び顧客要求事項に従うものとし、たとえば最終製品のロットの特定に基づくものでもよい(最終製品ロット番号などに基づいて記録を作成してもよい)

    トレーサビリティの管理手順例滋賀県県民文化生活部生活衛生課食の安全推進室のウェブページに掲載された情報です)

    7.10 不適合の管理
     不適合が発生した場合にとるべき処置には、修正と是正処置の2つがある。両者はまったく異なり、修正は「検出された不適合を除去するための処置」と定義されているように、具合の悪いもの(現物)を正常な状態に直すことであり、問題の製品(現物、回収製品も含む)を再加工して良好な状態にするか、廃棄処分などを行うことになろう。
     是正処置は「検出された不適合…の原因を除去するための処置」であり、なぜそういう事態を起こしてしまったかの原因を調査し、その原因に対して手を打つことになる。これは修正のような現物対応にはならず、「管理のまずさ」の是正、つまりPRP、OPRP、CCP、HACCPプラン、手順(書)、指図(書)など仕組み(システム)上の不備を直すことになる。是正処置は再発防止でもあり、根本的な仕組み(システム)上の不備にテコ入れしなければ再発しやすい。

    7.10.1 修正
     組織は、CCPの許容限度を超えた場合又はOPRPに管理の不具合があった場合、その影響を受ける製品を特定し、使用及び出荷(次工程引渡し)を管理すること。
     次の事項を規定した文書化した手順を確立し、維持すること。

  • a) 適切な取扱いが決定できる、影響を受ける最終製品の識別とアセスメント
  • b) 実施した修正のレビュー
  •  許容限界を超えた条件のもとで製造された製品は安全ではない可能性がある製品であり、7.10.3に従って取扱うこと。OPRPに適合しない条件のもとで製造された製品は不適合の原因と食品安全という意味で及ぼす結果について評価すること。必要により、7.10.3に従って取扱うこと。評価は記録すること。
     すべての修正は責任者の承認を受け、不適合の性質、原因と結果についての情報とともに記録すること。この記録には不適合ロットに関するトレーサビリティのために必要な情報も含めること。

    7.10.2 是正処置
     OPRP及びCCPの監視から出て来る情報は、是正処置を発動するために十分な知識(6.2参照)と権限(5.4参照)を有する指名された要員が評価すること。
     是正処置は、許容限界を超えた場合、又はOPRPに適合性の欠如があった場合に発動させる。
     組織は、検出された不適合の原因を特定して除去し、再発を防止し、不適合が生じた後は工程又はシステムを管理状態に戻すための、適切な処置を規定した文書化された手順を構築し、維持すること。
     この処置には次の事項を含む。
     項目としてはa)〜g)項まであって、ISO 9001の8.5.2(是正処置)とほぼ同様の項目が並んでいるが、次のように新たな追加がb)項にあり、g)項には追記がある。当然ながら是正処置の記録も求められている。

  • b) 管理から外れる方向に進んでいることを示していそうな監視の結果は、その傾向をレビューする
  • g) とった是正処置はレビューし、それが効果的であることを確実にする
  • 事故等処理手順例滋賀県県民文化生活部生活衛生課食の安全推進室のウェブページに掲載された情報です)

    7.10.3 安全ではない可能性がある製品の取扱い

    7.10.3.1 一般
     組織は次の事項が確実にできなければ、不適合製品がフードチェーンに入ることを防止する処置を講じることによって、不適合製品を取扱うこと。

  • a) 関心の対象となる食品安全ハザードが所定の受容水準まで低減済みである
  • b) 関心の対象となる食品安全ハザードがフードチェーンに入る前に所定の受容水準まで低減されることになっている
  • c) 製品が、不適合にも関わらず、関心の対象となる食品安全ハザードの所定の受容水準を今なお満たしている
  •  不適合の状況に影響を受けていそうなすべての製品ロットは、評価が終了するまで組織の管理下に置くこと。組織の管理下を離れた製品がそのために安全ではないと決定された場合には、組織は関連する利害関係者に通達し、回収を発動する(7.10.4参照)。
     管理及び関連対応、ならびに安全ではない可能性のある製品を取扱う権限は、文書化すること。

    7.10.3.2 出荷(次工程引渡し)のための評価
     不適合の影響を受けるそれぞれの製品ロットは、次の条件のいずれかが当てはまる場合にのみ安全であるとして出荷(次工程引渡し)すること。

  • a) その監視システム以外の証拠によって管理手段が効果的であったと実証できる
  • b) 特定製品に対する管理手段の組合せ効果が意図したパフォーマンス(7.4.2に従って明確にした所定の受容水準)に合致していることを示す証拠がある
  • c) サンプリング、分析、その他の検証活動の結果によって、影響を受けた製品ロットは関心の対象となる食品安全ハザードの所定の受容水準に合致していることを実証できる
  • 7.10.3.3 不適合製品の処分
     評価の結果としてその製品ロットが出荷(次工程引渡し)を認められない場合は、次の活動のひとつによって取扱うこと。

  • a) 組織内/外で再加工処理するか更なる加工処理を行い、食品安全ハザードを除去するか受容水準まで低減させる
  • b) 潰すか廃棄処分する
  • 7.10.4 回収
     安全ではないものとなった最終製品ロットの回収を完全かつタイムリーに可能ならしめ、それを促進するために次のようにする。

  • a) 経営者は、回収を発動する権限を持たせた要員と回収を実行する責任のある要員を任命する
  • b) 組織は、次の文書化した手順を確立し、維持する
     1) 関連する利害関係者(法令規制監督機関、顧客、消費者など)への通達
     2) 回収製品と影響を受ける既在庫製品ロットの取扱い
     3) 取るべき一連の処置
  •  回収製品は、潰すか、もともと意図した以外の用途に使用するか、同じ(あるいは別の)意図した用途に(再評価の結果として)安全であるとの決定を下すか、安全になることを確実にできるやりかたで再加工処理するまでは、確保又は監督下に置くこと。
     回収することになった原因、回収の程度、回収の結果は記録し、マネジメントレビューのインプットとして経営者に報告すること(5.8.2参照)。
     組織は適切な技法(模擬回収、回収演習など)を使って回収プログラムの有効性を検証し、記録すること。


    8 FSMSの妥当性確認、検証及び改善

    8.1 一般
     ISO 9001の8.1(一般)と似た趣旨の規定が書かれているが、記述は少々異なる。
     食品安全チームは、管理手段及び/又はその組合せの妥当性を確認し、FSMSの検証と改善をするのに必要なプロセスを計画し、実施すること。
     妥当性確認とは、HACCPプランおよびOPRPによって経営管理される管理手段が有効(効果的)なものになる(食品安全の)証拠を得ることを指す。

    8.2 管理手段の組合せの妥当性確認
     OPRP及びHACCPプランに含める管理手段の実施に先立って、かつそれらに如何なる変更(8.5.2参照)があった後でも、組織は次の事項の妥当性確認を実施する。

  • a) 選択した管理手段は、所定の食品安全ハザードの意図した管理を達成することが可能である
  • b) それらの管理手段は、所定の食品安全ハザードの管理を確実にならしめるのに組合せた状態で有効かつ有能であり、最終製品が所定の受容水準を満たすことが得られる
  •  妥当性確認の結果として上記事項の一方又は両方が確かめられなかった場合は、管理手段及び/又はその組合せは修正し、かつ再アセスメントすること(7.4.4参照)。
     修正には管理手段(工程パラメータ、厳密さ、それらの組合せなど)の変更、及び/又は原材料、製造技術、最終製品の特性、配送方法、最終製品の意図した用途の変更も含まれよう。

    8.3 監視及び測定の管理
     ISO 9001の7.6(監視機器及び測定機器の管理)とほぼ同様の規定が書かれているが、最初の部分の記述が次のようになっており、少し違いがある。管理すべき事項の詳細はISO 9001の7.6を参照のこと。
     組織は、規定された監視及び測定の方法と機器が適切で、監視及び測定の手順のパフォーマンスが確保できることの証拠を提供しなければならない。少し分かりにくい表現であるが、所定の監視・測定においてはその方法もその機器も適切に管理されていることを実証できるように求めている。何が適切かといえば、監視・測定のことを定めた手順がそのパフォーマンス(出来ばえ・達成成果)を確保できるようになっていればよい、ということである。

    8.4 FSMSの検証

    8.4.1 内部監査
     ISO 9001の8.2.2(内部監査)と同様の規定が書かれているが、監査プログラムはこれまでの監査結果からの更新活動を考慮して策定するように求めており、表現に若干の修正がある(より合理的な規定になった)。
     内部監査に関する要求事項の詳細はISO 9001の8.2.2を参照のこと。

    8.4.2 個々の検証結果の評価
     食品安全チームは、計画した検証の個々の結果を体系的に評価すること。検証によって計画した取決めへの適合性を実証できない場合は、要求された適合性を達成するための処置を取ること。そのような処置には、次の事項を含めること。ただし、これに限定されない。

  • a) 既存の手順及びコミュニケーション経路(5.6及び7.7参照)
  • b) ハザード分析の結論(7.4参照)、構築したOPRP(7.5参照)、HACCPプラン(7.6.1参照)
  • c) PRP(7.2参照)
  • d) 人的資源の管理及び教育訓練活動の有効性(6.2参照)
  • 8.4.3 検証活動結果の分析
     ここはISO 9001の8.4(データの分析)を思い起こさせる。
     食品安全チームは、内部監査(8.4.1参照)及び外部監査の結果を含めた検証活動の結果を分析すること。この分析は次の事項のために実施する。

  • a) システムの全パフォーマンスが組織の計画した取決め及びFSMSを満たしていることを確かめる
  • b) FSMSの更新又は改善の必要性を明確にする
  • c) 安全ではない可能性のある製品の出現が高まる傾向を見極める
  • d) 監査の対象となる領域の状態と重要性に関しての内部監査プログラムを策定する情報を確立する
  • e) とられたどの修正及び是正処置も効果的であるという証拠を提供する
  •  分析結果とその結果として行った活動は記録し、マネジメントレビューへのインプットとして適切な形で経営者に報告すること(5.8.2参照)。これはFSMSの更新(8.5.2参照)のためのインプットとしても使用すること。

    8.5 改善

    8.5.1 継続的改善
     ISO 9001の8.5.1(継続的改善)とほぼ同様の規定が書かれ、FSMSの有効性を継続的に改善することが求められている。違いは、FSMSではそれを経営者(トップマネジメント)が実施すべきことになっており、食品安全では経営者の責任をより明確にしている。
     FSMSの有効性の継続的改善のために、個々の検証結果の評価(8.4.2参照)、検証活動結果の分析(8.4.3参照)、管理手段の組合せの妥当性確認(8.2参照)、FSMSの更新(8.5.2参照)の情報も活用することが項目として追加され、逆に、予防処置に関する項目がない。

    8.5.2 FSMSの更新
     経営者はFSMSが継続的に更新されることを確実にすること。これを達成するために、食品安全チームはFSMSを計画した間隔で評価する。食品安全チームはその次にハザード分析(7.4参照)、OPRP、HACCPプランをレビューすることが必要かどうかを考慮すること。
     評価と更新活動は次の事項に基づくこと。

  • a) 5.6に示すとおり、内部/外部コミュニケーションからのインプット
  • b) FSMSの適切性・妥当性・有効性に関するその他の情報からのインプット
  • c) 検証活動結果の分析(8.4.3参照)からのアウトプット
  • d) マネジメントレビュー(5.8.3参照)からのアウトプット
  •  FSMSの更新活動は記録し、適切な形で経営者に報告すること(5.8.2参照)。


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