ISO 14001:2015(JIS Q 14001:2015)の解説    作成:2016年6月5日
(内容は逐次加筆修正していきます。その都度ご覧ください)


1.改定に至る経緯

 ISOのマネジメントシステム規格には原則として5年以内に見直しが必要かどうか検討するルールがあります。それは社会や規格利用者から求められることが時代とともに変化し、組織経営のツールであるマネジメントシステム規格もこれに見合ったものにする必要があるからです。
 旧規格(ISO 14001:2004)もISO/TC207(環境マネジメント専門委員会)の分科委員会SC1がISO 14001を改定をする提案を加盟国に出し、投票の結果、2011年11月に賛成多数で承認され、改定することが決まりました。

 環境に対する世界の問題意識は時代とともに変化し、技術の進歩も社会的な要請も変ってくるからです。また、旧規格には表現に曖昧な点があって、各国での翻訳で本来の意味とはすれ違った解釈がなされていたこともありましたし、依然としてISO 9001をはじめとする様々なマネジメントシステム規格との間に整合性が欠ける面が残っていました。

 今回の改定を前にして「利用者が容易に一つ、または複数のマネジメントシステム規格を実施できることを確かなものにするのが望ましい」「マネジメントシステム規格は容易に理解でき、明瞭で、文化的偏りがなく、容易に翻訳でき、ビジネス全般に適用可能であることが望ましい」という注文が出ていました。

 これより先行してISO/TMB(技術管理評議会)/TAG13-JTCG(合同技術調整グループ)で各マネジメントシステム規格の整合性を図るための作業が進められていて、マネジメントシステム規格の上位構造(基本的な章立て)、共通テキスト(要求事項)、用語&定義が作られました。
 これらは2012年2月にISO/TMBで承認され、2012年5月に発行された「ISO/IEC専門業務用指針 統合版ISO補足指針」の附属書SLに上位構造、共通テキスト、共通用語&定義などが取り込まれ、今後のマネジメントシステム規格の制改定には原則としてこれを採用しなければならないことを義務付けています。
 これ以外の環境マネジメントシステムに固有の要求事項は、共通部分に付け加えることになります(右図も参照ください)。

 附属書SLはマネジメントシステム規格はかく作るべしという義務事項(マネジメントシステム規格の提案)をしたためたものです。そこの一般原則には(1)市場適合性、(2)両立性、(3)網羅性、(4)柔軟性、(5)自由貿易、(6)適合性評価の適用可能性、(7)除外、(8)使いやすさ が規定されています。

 この附属書SLにはAppendix(添付)が幾つかあって、私たち規格利用者にいちばん関心が深い上位構造、共通テキスト、共通用語&定義はAppendix3に規定されています(これらの規定はマネジメントシステム規格の制改定には原則として変更せずに取り込まなければなりません)。

 ISO 14001の改定作業はこれを受けてISO/TC207(環境マネジメント専門委員会)で進められ、各国関係者の意見やコメントも反映してISO 14001:2015が2015年9月15日に国際規格として発行されました。

2.改定規格の要点

 改定規格を一見すると、旧規格から大きく変わったように見えますが、内容を精査すると、そうでもありません。内・外の課題を明らかにすべき要求事項が新規に出ていますが、経営者なら要求されなくても出来ているはずで、これを文書化するまでことは求められていません。旧規格への対応を継承しながら経営者として当然の自然体で環境マネジメントに取組めばいいのです。

意図した結果の達成

 会社経営にとって大事なことは意図した結果を達成することでしょう。経営者が目論む結果を出せなければ、会社がうまく行くはずがありません。改定規格はこの「意図した結果」が出せるような環境マネジメントが出来るように軸足を移していくように求められています。
 意図した結果には少なくとも「環境パフォーマンスの向上」「順守義務の履行」「環境目標の達成」を含まないといけません。

 この意図した結果を出すためには、それに影響がありそうな外部・内部の課題を明らかにすることから始めます。影響というのは、便宜上とりあえず支障とか障害としておきますが、実は好ましくない要因(状態)だけに限らず、好ましい要因(状態)も含めます。好ましい要因(状態)というのは意図した結果以上の成果をもたらすものです。

 内外の課題と共に大事なことは、利害関係者が何を求めているのかも明らかにしないといけません。
 利害関係者には、例えば株主・顧客・ユーザー(消費者)・親会社・融資機関・行政・監督官庁・NGO・取引先・協力会社・従業員・地域社会…などがありえます。環境への取組みに利害関係者が何を求めているのか(もしあれば)です。

リスクと機会

 これらを考慮して、経営にリスクとなるものと改善の機会になるものを特定し、そのリスクと機会に取組むための計画を策定して環境マネジメントシステムに組み込まなければなりません。ここで言う計画は必ずしも××計画書のようなイメージではなく、プロセス(あるいはシステム)を作ることと理解し、リスクと機会に取組むための仕組み作りをすることです。

事業プロセスへの組み込み

 この環境マネジメントシステムは形だけの(事業実態とは乖離した)ものであってはならず、事業プロセスに組み込んでビジネスと一体不可分なものにすべきこと(integration)が改定規格で明確に要求されています。

手順からプロセスへ

 旧規格では要所要所で「手順を確立し…」というのが出てきましたが、改定規格ではそれが「プロセスを確立し…」に変っています。何が違うのでしょうか。

 手順(procedure)は「活動又はプロセスを実行するために規定された方法」と旧規格で定義されていました。手順は方法や手続きを決めたものであり、それでは意図した結果が達成できる確かなものがありません。

 一方、プロセスは「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義され、このプロセスを確立するためには手順だけではなくインプット、アウトプット(とくに意図した結果)、資源、知識、監視・測定、評価・アクションなど、結果を達成するために必要なことが組み込まれて出来るようになっていなければなりません。

 意図した結果を達成するためには、手順を定めて実行するだけでは不十分で、個々のプロセス内にもP⇒D⇒C⇒Aの管理サイクルが回っていないといけないわけで、今回の規格の見直し改定にはそういう考えがベースにあります。
3.改定規格の解説

 ここで改定規格の内容をひとつひとつ解説するのは…やめます。インターネットにはすでに多くの解説が出ていますし、関係書籍もたくさん出版されていますので、詳しくはそちらを参照ください。ここでは見落としがちな点にだけ言及しておきます。

 その前に改定規格を読んで理解を深めるための注意をひとつだけしておくと、ある要求事項に関連する規定文が改定規格の前の方に出てきたり後ろの方に出てきたりで、複雑に絡みあっています。
 たとえば6.1.1で取組むべきリスク・機会を決めるために4.1と4.2を振り返り、6.1.2と6.1.3も参照する必要がありますし、このリスク・機会を含めた取組み計画の策定と、それに次ぐ環境目標の設定との関係も規格全体を読み込まないと釈然としません(それでも分かりにくい)。
 順守義務も4.2、6.1.3、9.1.2などで出てきます。

 附属書 A(参考) この規格の利用の手引には、この点も含めてどう解釈すればよいか、どう考えればよいかの役立つ手引きが詳しく載っていますから、それをぜひ参考にしてください。

 規格の規定文を読む場合に、「考慮する(consider)」と書かれている場合は、その事項について考える必要がありますが、その結果として除外してもよいことを意味しています。しかし「考慮に入れる(take into account)」となっている場合は、その事項について考える必要があり、かつ除外してはいけない意味になっています。

序文

0.1 背景

0.2 環境マネジメントシステムの狙い

0.3 成功のための要因

 「環境マネジメントシステムの成功は、組織内の全階層と機能(役割をもつ部門)からのコミットメント(やるぞという言質)にかかっており、それはトップマネジメントが先頭に立って導かれるものだ」という意味のことが書いてあります(JIS訳では分かりにくいのですが)。

0.4 Plan-Do-Check-Actモデル
Plan
組織の環境方針に沿った結果を出すために必要な環境目標とプロセスを構築する
Do
計画どおりにプロセスを実施する
Check
コミットメントを含む環境方針・環境目標・運用基準に照らして、プロセスを監視・測定し、その結果を報告する
Act
継続的に改善するための処置をとる
0.5 この規格の内容

 この規格は次のために使えます。

  • 自己適合宣言
  • 第二者監査
  • 自己宣言の第二者・第三者監査
  • 認証機関による審査・登録
  • 1 適用範囲

     適合を表明する場合には、どの要求事項も適用除外できないことになっています。

    2 引用規格

     引用規格はありません。

    3 用語及び定義

    3.1 組織及びリーダーシップに関する用語
  • 環境マネジメントシステム ⇒ マネジメントシステムの一部で、環境側面をマネジメントし、順守義務を満たし、リスク及び機会に取り組むために用いられるもの
  • 3.2 計画に関する用語
  • 目標 ⇒ 達成する結果
  • リスク ⇒ 不確かさの影響
     「リスク」の用語の定義には理解を深める必要があります。
     用語の意味は、ここに定義されているもの以外に附属書 A(参考)「この規格の利用の手引」に説明のあるものがあります。たとえば、影響(effect)は、組織に対する変化の結果を表わすために用いている、と書かれています。とくに環境に対する変化の結果を言う場合は、環境影響(impact)としてあります。
  • リスク及び機会 ⇒ 潜在的で有害な影響(脅威)及び潜在的で有益な影響(機会) ← ISO 14001ではこちらの定義を優先させて理解してください!!
  • 3.3 支援及び運用に関する用語
  • ライフサイクル ⇒ 原材料の取得又は天然資源の産出から、最終処分までを含む、連続的でかつ相互に関連する製品(又はサービス)システムの段階群
  • 3.4 パフォ−マンス計画及び改善に関する用語
  • 指標 ⇒ 運用、マネジメント又は条件の状態又は状況の、測定可能な表現
  • パフォーマンス ⇒ 測定可能な結果
  • 4 組織の状況

    4.1 組織及びその状況の理解

     環境マネジメントシステムの「意図した結果」を達成するのに影響がありそうな外部・内部の課題に何があるのかを明らかになければなりません。それには外部から影響を受けるもの、外部に影響を与えるものも含めます。

    4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

     利害関係者は誰で、その利害関係者が組織に何を求めているかを明らかにしなければなりません。これには法規制やRoHS指令のような順守すべき決め事も含めます(より詳細には6.1.3で実施します)。

    4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定

     環境マネジメントシステムの境界(物理的境界)とそれがカバーすべき範囲を見極めて、適用範囲を定めます。これにはどこまで管理でき影響力を及ぼせるかも考慮することです。この適用範囲は文書にも記載して利害関係者が入手できるようにしなければなりません。利害関係者が入手可能にするのは環境方針だけではなくなりました。

    4.4 環境マネジメントシステム

     環境マネジメントシステムに必要な文書と記録は用意しないといけません。意図した結果を達成するため、必要なプロセスとそれらの相互作用を含めた環境マネジメントシステムの構築・実施・維持・継続的改善が必要です。

     なお、この改定規格全体に亘って「文書化した情報を維持する」と書かれているのは決め事を定めた文書を指し、適宜見直し改訂すべきことを意味しています。また「文書化した情報を保持する」と書かれているのは記録のことを指し、事実関係を記載して改変することなく保管しておくことです。7.5(文書化した情報)も参照のこと。

    5 リーダーシップ

    5.1 リーダーシップ及びコミットメント

     環境マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う、環境マネジメントシステム要求事項の事業プロセスへの統合を確実にする、環境マネジメントシステムがその意図した結果を達成することを確実にするなど、経営者には事業実態に合い結果が出せるシステムにすることのリーダーシップがいっそう強く求められています。

    5.2 環境方針

    5.3 組織の役割、責任及び権限

     環境管理責任者という役職者を割り当てる要求はなくなりましたが、それ相応の責務を果たす人は必要です。

    6 計画

    6.1 リスク及び機会への取組み

    6.1.1 一般
     環境マネジメントシステムを計画するときに配慮すべき事項です。a)項、b)項、c)項に加えて、(1)環境側面 (2)順守義務、(3)内外の課題と利害関係者の要求事項 の3つに関連するリスク・機会(ただし取組むべきもの)を特定し、文書として定めなければなりません。それを実施するプロセスの文書と記録も必要です。
     あわせて緊急事態の特定もしておかなければなりません。これへの対応は8.2で取扱います。
     ここで言う計画とは、××計画書のようなイメージというより、「意図した結果を達成」する環境マネジメントシステムの計画(構築)であり、取組みのための考え、仕組み、プロセスを準備することを意味します(6.1.4参照)。
     特定したリスク・機会は取組みの計画策定(6.1.4)と環境目標の策定(6.2)のインプットにすることになります。
    6.1.2 環境側面
     ライフサイクルの視点に立って環境側面(これには緊急事態を含めること)を確定し、設定した基準によって著しい環境側面を決めなければなりません。これらは文書に定めることも必要です。
    6.1.3 順守義務
     4.2で特定した順守義務について、どの環境側面に当てはまるのか、組織内のどのサイト・部署で対応させるのか、などを詳細に決めます。順守義務に関する文書化も必要です。
    6.1.4 取組みの計画策定
     ここで言う取組み計画は、6.1.1で特定したリスク・機会に対して環境マネジメントシステムで取組む高レベルの計画を指します(高レベルとは経営レベルを意味します)。これには環境目標の策定を含めてもよいし、環境マネジメントシステムに組み込んでも構いません(それが計画になります)。

    6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定

    6.2.1 環境目標
     環境目標の設定には著しい環境側面と順守義務を優先的に入れるようにします。リスク・機会は考慮するだけで構いません。
    6.2.2 環境目標を達成するための取組みの計画策定

    7 支援

    7.1 資源

    7.2 力量

    7.3 認識

    7.4 コミュニケーション

    7.4.1 一般
     コミュニケーションは双方向のプロセスです。コミュニケーションには順守義務を考慮に入れることが欠かせません。
    7.4.2 内部コミュニケーション
    7.4.3 外部コミュニケーション

    7.5 文書化した情報

    7.5.1 一般
    7.5.2 作成及び更新
    7.5.3 文書化した情報の管理

    8 運用

    8.1 運用の計画及び管理

     外部委託したプロセスの運用「管理の方式と程度」という表現は、ISO 9001:2008にあったものです。管理の方式(type)とはどういうタイプの管理をするのかという型式を、程度(extent)はどこまで深く広く管理するのかという踏み込み具合を意味します。
     製品(サービス)の設計・開発には、ライフサイクルの視点に立ちその各段階に環境上の要求事項が取り組まれる管理が求められています。製品(サービス)の源流から使用後の処理や最終処分まで、可能な範囲で考慮できることをしなければなりません。
     設計管理手順書や関連帳票(記録様式)がもしあれば、それを見直し改訂して環境への取り組み要領を追加するのがお勧めです。

    8.2 緊急事態への準備及び対応

     6.1.1で特定した緊急事態への対応をここで決めます。

    9 パフォーマンス評価

    9.1 監視、測定、分析及び評価

    9.1.1 一般
     監視・測定・分析・評価の対象に環境目標、著しい環境側面、順守義務、運用管理事項を含めるのがふつうです。監視・測定機器の管理もここで求められています。
    9.1.2 順守評価

    9.2 内部監査

    9.2.1 一般
    9.2.2 内部監査プログラム

    9.3 マネジメントレビュー

     マネジメントレビューはすべての項目を同時にレビューする必要はありません。なお、適切性・妥当性・有効性の意味は次のとおりです。

     適切性(suitability):
    環境マネジメントシステムが組織の実態に合っている程度(組織の身の丈に合った相応しいものか)
     妥当性(adequacy):
    規格の要求事項を満たし十分なレベルで実施されている程度(量・質ともに過不足なく十分か)
     有効性(effectiveness):
    望ましい結果を達成している程度(意図した結果が出せているか)
    10 改善

     改善とは、修正・是正処置も含まれますが、ブレークスルー(現状打破)、革新、組織再編などもありえます。何が改善の機会になるのか、どれを手がけるのかを決め、必要なアクションを取ります。

    10.1 一般

    10.2 不適合及び是正処置

     是正処置では類似の不適合が潜んでいないか総点検し、それにも必要な処置を講ずることになりました。いわゆる水平展開・横展開です。
     また必要により、特定したリスク&機会の情報も更新しないといけません。

    10.3 継続的改善

     継続的改善は環境マネジメントシステムの適切性・妥当性・有効性を向上させることに尽きます。

    附属書 A(参考)この規格の利用の手引

    附属書 B(参考)JISQ 14001:2015とJISQ 14001:2004との対応

    ISO 14001:2015(JISQ 14001:2015)への移行対応サービスについて…

    アイソ・ワールド株式会社では、環境マネジメントシステムのISO 14001:2015(JISQ 14001:2015)への
    移行コンサルティングを無料で提供しています(ただし訪問のための交通費・宿泊費は実費の範囲でご負担いただきます)。


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