審査の受審手続きと受審対策

 ISO9001・ISO14001の審査を受ける手順・要領を紹介します。

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1.審査の申請

 自社に見合った審査登録機関は一体どこなのか、情報がないと判断するのは難しい。認証取得した同業他社の事例を調べたり、JABに登録された適合事業者の情報(http://www.jab.or.jp)を検索すれば、幾つかの候補は見い出せよう。
 場合によっては取引上の問題で審査登録機関を決めざるを得ないケースもあるし、顧客や親会社などの意向によって選定しなければならないケースもある。困ったときはアイソ・ワールド株式会社に相談する手もありえる。
 候補となる幾つかの審査登録機関から見積を取り、これはという審査登録機関を決めたら審査の申請を行う(審査申請書は審査登録機関から取り寄せる)。
 受審企業の審査対象従業員数によって審査工数や審査費用が異なるから、審査申請書に審査対象従業員数を記載するときは、エンピツを舐め舐め(鉛毒で体には良くないが)よく考えること。例えば、ISO9001の場合はJABの基準によると審査対象従業員数が11〜25人のときは審査工数は3人日(現地最小で2.7人日)、26〜45人のときは4人日(現地最小3.6人日)となり、25人の場合はおそらく受審企業を訪問しての実際の審査は2人の審査員で1.5日(1人のときは3日)で済むが、26人になると2人の審査員で2日間となる。大きな声では言えないが、エンピツの舐め具合によって審査費用も審査の日数も変わるのだ(審査員が審査に来ても従業員の数を数えることはない)。

2.文書(書類)審査

 審査登録機関によって手順は多少異なるかも知れないが、最初に品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)の審査があるので、審査登録機関からの求めにより品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)を提出する。
 数ヶ月くらい実際に品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)を運用してみて不具合点を直し、改訂が2〜3回進んでから提出するのが望ましい。出来たてホヤホヤの初版では絵に描いた餅みたいなもので、そのとおり運用できるかどうか分からない品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)で審査を受けるのでは価値が半減する。それに、そんな品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)ではホントにシステムが動いているのかぃ、と審査員は心の中で疑ってしまう。
 この審査で品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)に指摘のあった場合は、是正(改訂)を行うこと。

3.初回(事前)訪問

 本審査(初回審査)に先だって審査員が半日〜1日間、受審企業を訪問する。目的は適用規格・登録範囲・組織(建設業では作業所も含む)など審査条件に関する種々の確認をするほか、文書の整備状況・システムの運用状況など受審企業の現状を調べ、いつ頃審査ができるかを判断する。
 形式上はこの初回(事前)訪問から審査がスタートするが、受審企業では経営者と管理責任者が応対するくらいでも間にあう。用意するものは、品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)と関連文書(手順書)、機能と役割が分かるような組織図くらい。可能な限り、審査の日程やプログラムもここで決める(経営者、管理責任者、その他の受審関係者の都合を確かめること)。

4.予備審査

 予備審査はオプションであるが、多くの場合は予備審査を受ける。予備審査はシステムに潜んでいる欠陥や欠落その他の不具合を事前に見つけ、本審査(初回審査)で致命的な問題を出さないようにするのが目的であるが、予備審査は社内にハッパをかけたり、審査慣れするという活用方法もある。
 予備審査は現状の問題点をさらけ出すのが目的であるから、予備審査で良い格好をしてうまく切り抜けるよりも、具合が悪い(自信がない)ところもそのまま見てもらうようにすることが大切だ。
 予備審査をどのタイミングで行うかは原則として自由であるが、品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)がそれなりに出来上がり、運用実績が2〜3ヶ月できた時点で行うのが望ましい。内部監査とマネジメントレビューが済んでいれば、より一層望ましい。
 本審査(初回審査)を受ける時期は予備審査受審後2ヶ月ほど経ってからが目安だが、予備審査の結果によって1〜3ヶ月くらいの間で調整するのがよい。
(注)予備審査はコンサルティングになりかねないとしてJABから問題の指摘が多く、平成17年頃から取り止めている(予備審査は行わない)審査登録機関が多くなっている。予備審査を必要とする場合はアイソ・ワールド株式会社に相談ください(次項参照)。

5.模擬審査

 予備審査は審査登録機関が行うものであるのに対して、模擬審査は審査登録機関以外の組織が行うものである。実施のタイミングは予備審査と同じようなものである。
 何が違うかというと、予備審査であれ審査登録機関はコンサルティングすることが認められておらず、審査はしても問題点に対してどう処置すべきか、改善の余地があるとすればどこなのか、に助言や指導をすることができない。

 審査登録機関ではない組織が行う模擬審査ではそのような制約がなく、模擬審査した結果にもとづいて引き続きその受審企業に必要なコンサルティングをすることが可能なのである。ただし、模擬審査を実施する前や模擬審査の実施過程でコンサルティングすることはできず、模擬審査を終了してから行うことになる。
 模擬審査の中味やクォリティ(質・レベル)は模擬審査実施組織や模擬審査をする審査員に依存するが、アイソ・ワールド株式会社が行う模擬審査は審査登録機関が行う予備審査に決して引けを取らない(主任審査員の資格を有する者が対応する)。むしろ本来の審査の手口を知り尽くした模擬審査と効率の良い対策・指導をしてもらえる可能性がある。

6.審査の事前準備

 審査予定日の1ヶ月〜1週間くらい前になると、次の項目の再確認を行う。
  ・審査の日程
  ・審査プログラム(時間割)
  ・審査員
 これにもとづき、受審関係部門の各責任者にはオープニングミーティング(初回会議)およびクロージングミーティング(最終会議)への参加も含めて、受審の日程・時間の再確認をとる。
 審査予定日の1ヶ月くらい前には審査登録機関から審査プログラム(時間割)が届くはずである。受審関係者には通知漏れのないようにしておく。
 ISO14001の場合は、二段階審査方式(二審査制)が採用される。ISO9001の場合は、これまで一段階審査方式(一審査制)がほとんどであったが、平成17年頃から二段階審査方式(二審査制)に移行する審査登録機関が増えている(ただし、いずれも初回審査に限ってのことである)。
 二段階審査の第一段階目の審査では、主に環境マネジメントマニュアルおよび関連文書(手順書)の整備状況が見られる。第一段階目の審査で大きな問題がなく、認証登録のための審査が受けられる目処があれば第二段階目の審査が計画される。第一段階審査と第二段階審査は、ふつうは2ヶ月程度間を置くが、第一段階審査の結果によって1〜3ヶ月くらいの間で調整する。
(注)第一段階審査と第二段階審査については7項を参照ください。

7.直前の点検と対策

 審査の1〜2週間前になると受審予定の各部署を巡回し、面接しながら次の事項のできばえを点検する。詳しくは「サロンで議論」の受審対策を参照のこと。これはつまらないミスの指摘を避けるためだけのもので、重要なことは本来からできていなければならない。
  • 経営者への品質マネジメントシステム(環境マネジメントシステム)の実施状況の報告内容、マネジメントビューの記録
     特に経営者に報告したことが漏れなくレビューされているか、レビューの結果、アクションが必要な事項が放置されていないか、前回のマネジメントレビューの課題は解決したか、などを点検する。
  • 品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)の維持管理状況
  • 内部監査の実施記録
     期限までに是正が漏れなく完結していること、是正に効き目が出ていること。
  • 各種の台帳
     期限切れで未解決なものがないこと、台帳と中味に食い違いがないこと。
  • 前回の審査の是正要求実施状況
     前回の審査で是正を要求されたことが実施でき再発していないこと、未然防止・水平展開ができていること。
  • 主要な品質記録(環境記録)の状況
     欠落がないか、捺印・記入漏れはないか、記録の内容が他のものと比べて特異なもの・異質なものは念入りに点検する。
  •  ISO9001の場合は上記のとおりであるが、ISO14001の場合は第一段階審査では環境マネジメントマニュアル・関連文書(手順書)に矛盾がなく、関連文書の相互関係が分かるようになっているか、を点検する。第二段階審査では、著しい環境側面の特定と環境方針・目的・目標に矛盾がなく、管理漏れなく実施・運用されており、遵法性の評価がきちんとなされていることなどを確認するのがよい。
     審査の直前になって不具合が発見され、是正する時間がないときは、正規の内部監査を実施して是正要求事項に上げておく。審査が始まったら、審査員に見つけられ指摘される前に、是正プロセスに入れた不具合は白状してしまう。審査で指摘されるのは、審査員が自分で発見した不適合や観察事項である。先に白状され、システム的に是正のプロセスに入っている不具合は、審査員にとって指摘に上げにくい。ただし重大な不具合の場合は考えもので、必ずしもそうはいかないかも知れないが。
     とくにISO14001の場合は、法規制からの逸脱などがあったものに対して、その処置がきちんと出来ていること。

    8.審査内容の傾向と対策

     審査でどういう点を突かれるかは、次の点から想定できる。
  • 本審査(初回審査)
     登録のための最初の審査(本審査、初回審査)では、広く浅く全般的なことが訊かれ、登録範囲全体に亘ってISO9001(ISO14001)の全要求項目に適合しているかどうかが判断される。
  • 定期審査(サーベイランス)
    ISO9000の場合
     ・経営者の責任(マネジメントレビュー)、品質システム(品質マニュアルの維持状況)、文書管理、是正処置・予防処置、内部監査、品質記録など
     ・前回の審査での是正要求項目の実施状況
     ・ロゴマークの使用状況
     ・(初回審査の場合は)予備審査での重点指摘事項の是正状況
    ISO14000の場合
     ・マネジメントレビュー、遵法性の定期評価状況、環境目的・目標の達成状況、継続的改善の状況、是正処置・予防処置、内部監査
     ・前回の審査での是正要求項目の実施状況
     ・ロゴマークの使用状況
     ・(初回審査の場合は)予備審査での重点指摘事項の是正状況
  •  また、審査対象となりうる部署は次の点から想定する。
     ・初回審査では、原則として登録範囲に入っているすべての部署が審査対象となる。建設業では作業所も抜取で審査対象となる。
     ・定期審査での毎回の審査対象部署:経営者、管理責任者
     ・前回の審査で是正要求があった部署
     ・前回は審査がなかった部署(3年ごとの更新審査までにはどの部署も一巡するように審査計画が組まれる)

    (参考)ISO14001の二段階審査について

     ISO14001の審査ではISO/IECガイド66により二段階審査方式(二審査制)を採用する原則となっている。これに従ったJABの指針では次のように示されている(記述・表現は変えてあります)。

    第一段階審査

    (1)第一段階審査の目的
     組織の環境側面及びそれに伴う影響、環境方針・目的の観点からそのEMSを理解し、並びに、特にその組織の審査準備が次の点でどこまで整っているかを調査し理解することにより、第二段階審査の立案をする際の焦点を絞ることが第一段階審査の目的となっている。
    a) 組織の環境側面の特定、及びそれに続くその重要度の判定を行うための適切なプロセスがEMSに組み込まれているか。
    b) 組織の該当する活動について、環境ライセンス(操業許可等)が取得されているか。
    c) EMSが組織の環境方針を達成するように設計されているか。
    d) EMSの実施プログラムから判断して、第二段階審査に移行できるか。
    e) 内部監査がEMS規格の要求事項に適合しているか。
    f) 審査を要する追加文書はあるか、及び/又は審査員が事前に取得しておかなければならない知識は何か。

    (2)第一段階審査で行うこと
     第一段階審査では次のことが行われる。
    a) 文書審査する。文書審査に追加が必要な場合は第二段階審査までに行えるように審査の資源を計画し、配分する(文書審査は第二段階審査を開始するまでに完了しておかなければならない)。
    b) 第二段階審査の審査チームに必要と思われる能力が用意できるかどうかを検証する。
    c) 第二段階審査の際に特に注意が必要になる課題を明確にする。
    d) 受審企業に情報がフィードバックできる機会を用意する。
    e) 第二段階審査の詳細について、受審企業と合意する。

    (3)第一段階審査で見られるもの
    a) 手順書を含むEMS文書
    b) 受審企業の説明・そのサイトにおけるプロセスの説明
    c) 環境側面及びそれに伴う影響・著しい環境側面
    d) 継続的改善の具体的実施手段
    e) 法規制(ライセンスを含む)の概要・協定の内容
    f) 内部監査プログラム・その実施報告書

    第二段階審査

    (1)第二段階審査の目的
     第二段階審査は第一段階審査の結果(所見)をベースにして計画される。第二段階審査の目的は次の2点である。
    a) 受審企業が、自らの方針、目的及び手順を守っていることの確認
    b) 受審企業のEMSがEMS規格のすべての要求事項に適合していること、及び受審企業の方針・目的を達成されつつあることの確認

    (2)第二段階審査でみられるもの
     第二段階審査では次の点に焦点を絞ってみられる。
    a) 環境側面の特定・著しい環境側面の決定
    b) 環境目的・目標
    c) 目的・目標に照らしたパフォーマンスの監視、測定、報告、見直し
    d) 内部監査・経営層による見直し
    e) 環境方針に対する経営管理者の責任
    f) 環境方針、環境側面及びそれに伴う環境影響、環境目的・目標、責任、プログラム、手順、パフォーマンス・データ、内部監査及び経営層による見直しの間のつながり(有機的につながってシステムとして機能し、実効を上げるようになっているか)

    (注)ISO9001の審査スキームはISO/IECガイド62、ISO14001の審査スキームはISO/IECガイド66で規定されていたが、これを統合してISO/IEC 17021(審査登録機関に対する一般要求事項)に一本化しようという作業がISO/IECで進んでいる。ISO/IEC 17021によって審査スキームにも変更があり、ISO9001でもISO14001と同様に初回審査は二段階審査にしなければならないことになっている。審査登録機関では、先を見込んでISO9001も初回審査は二段階にするところが増えている。

    9.受審の準備

     審査を受ける準備(手配)を整える。
  • 日程・審査員・審査プログラム(時間割)・事前準備物の再確認
     品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)および関連文書(手順書)は審査員の数だけセットして用意する。
     組織図や職場環境によってはヘルメット・安全靴・クリーン服なども必要。
  • ホテルの予約
     審査員から依頼があった場合に手配する(支払いは審査員が行う)。
  • 昼食・送迎車・接待・お土産・その他の手配
     どこまで気配りするかは審査員の了解をとっておく(接待・お土産は受け入れられない場合もある。10.項も参照のこと)。審査で現場に出たときはお手拭きを出した方がよい。また審査では喉が渇きやすいので、常時飲み物(水でよい)を用意しておくと喜ばれることがある。
  • 受審プログラムの作成・配布
     受審関係者に通知する。
  • 受審場所の確保
     受審する職場の近くに応接室や会議室などの受審場所を確保しておく(上の写真を参照のこと)。オープニングミーティング(初回会議)およびクロージングミーティング(最終会議)は経営者、管理責任者も含めて参加者が多い。受審場所では机を挟んで審査員と対面形式になるように配置するとよい。机は審査員一人につき左右に手を広げられる広さがほしい。座敷・ソファは審査に向かないから注意のこと。このほか、審査員控室も用意する(審査員同士の打合せや審査結果をまとめる作業が伴うため)。
  • 役割分担
     受審関係者の他に受審窓口責任者、ガイド役(審査の行方に横からコメントできる人)、審査の記録係を用意しておくのがよい。お茶は適当に見計らって出す(よくしゃべる審査員ほど、喉が渇くものだ)。
  • 10.当日の対応

     当日は次のように対応する。
  • 受審関係者の出席可否状態の確認
     緊急事態で特定の受審関係者が受審できなくなった場合は、代行者を立てるか、オープニングミーティング(初回会議)の際に審査員の判断を仰ぐ。
  • 関係者による出迎え・挨拶
  • 受審
     審査の手順は、大きく分けると次のようになる。  ・オープニングミーティング(初回会議)
     ・審査の実施
     ・不適合の確認・審査員によるまとめ作業
     ・クロージングミーティング(最終会議)

     オープニングミーティング(初回会議)では、次のようなことが行われる。審査の基本的な取り決めをお互いに確認し、審査手順の説明がなされるものなので、重要なため注意深く臨むこと。

    審査員・スペシャリスト・オブザーバの紹介
    受審者の紹介
    受審企業・受審部署・場所(サイト)の確認
    審査の目的(登録のための審査、認証維持のための審査など)の確認
    登録範囲(scope)の確認
    適用規格(審査基準)とマニュアルの版の確認
    審査プログラムの確認
    審査の手順・方法(文書とエビデンス(客観的証拠)に基づく審査であること)の説明
    サンプリング(抜取)審査であることの説明
    指摘事項(不適合、観察事項)の種類・定義とその取り扱いの説明
    審査を進めるにあたっての注意・制限事項・要望事項などの確認
    機密保持の誓約
    クロージングミーティング(最終会議)の説明
     クロージングミーティング(最終会議)では次のことの説明と相互確認が行われる。
    オープニングミーティング(初回会議)で取り決めたことの再確認
    発見された不適合の確認
    審査の結論の説明
    サンプリング(抜取)審査であることの再説明
    審査(結果)の苦情処理手続きの説明
    審査員の所見(講評)
    不適合の是正報告手順の説明
    認証登録の手続きの説明
  • 不適合に対する是正処置の手続
     内容の確認、責任者のサイン、是正期限の設定、是正報告書の提出のしかたの説明などが行われる。
  • 挨拶・審査員の見送り
     審査登録機関によってはお土産程度のお礼は渡してもOKな場合と全く受け取らない場合があるので、様子を見て判断すること。金券・現金の提供は厳禁。
  • 接待について
     9.項と一部重複するが、審査の中日に接待することは(もちろん過大にならない常識的な範囲で)審査登録機関によってOKの場合とNGの場合がある。接待を考えるのならそれとなく打診しておくのがよいが、必ずしも歓迎されるわけではない。審査員は何日も各地のホテルを泊まり歩きながら食事も提供されることが多いので健康管理が難しく、薬を常用している人が珍しくない。加えて60歳前後の年輩者も多いので、余計な気遣いをしない方がかえってよいかも。
     もっともたまには飲みたい人もいるかも知れないし、アルコール好きな審査員もいるかも知れない。それに審査員とコミュニケーションし、審査の席では聞けない話が聞けるのは、こういう席でしかない、という見方もある。
  • 11.不適合の種類と指摘を受けたときの対応

    不適合の種類
     指摘事項には、大きく分けて不適合と観察事項(オブザベーション)がある。通常、不適合には次の2つに分かれる。
    ・重欠点(重大な不適合)
     システム的欠落・欠陥、システム的機能不全に関する不適合。軽微な不適合が多数ある場合や、特定の問題に軽微な不適合が偏って出ている場合も重欠点と見なされることがある。
    ・軽欠点(軽微な不適合)
     偶発的に発生したシステムの欠陥・機能不全に関わらない不適合。
     重欠点/軽欠点の名称は審査登録機関によって異なる。また重欠点/軽欠点の定義も審査登録機関によって異なるため、オープニングミーティング(初回会議)での審査員の説明をよく聞いておくこと。
     なお、観察事項は不適合といえる根拠・客観的証拠がないもの、好ましく(適切ではない)ないもの、いずれ不適合になりかねない(と審査員が懸念している)ものを指し、不適合には入らない。したがって観察事項は幾ら出ても審査結果には影響しない。

    不適合の指摘を受けたときの対応
     審査で不適合を指摘されても慌ててはいけない。まず、次のことを確認すること。

    (1)指摘された事実関係の確認
     審査員が把握した「不適合の証拠」(記録などのエビデンス、つまり動かぬ証拠)がどれであるか(審査員に、または社内関係者に)確認すること。審査員の誤解や思い違いであったり曖昧な証拠(客観性のないもの)の場合は、審査員に(その場で)申し出る。
    (2)不適合の根拠となる規格
     指摘された事実がどの要求事項(適用規格、社内文書、顧客仕様、関連法規制など)に不適合なのか、その根拠となる規格の条文や基準を審査員に確認すること。もちろん審査員の価値観や考えを判断根拠にすることはできない。
    (3)不適合であることの説明
     (1)と(2)によって不適合であることの説明を求める。納得できるまで聞くのがよい。
     (1)(2)(3)のどれひとつも納得(合意)できない場合は、不適合にはできない。ただし見解の食い違いはありうる。この場合は不適合にせずに見解の食い違いがあったということを審査記録にとどめるに過ぎない。納得(合意)できないまま審査員に押し切られたときは、後で苦情を文書で申し立てることができる。
     納得いかないまま合意(同意)してしまう(捺印/サインする)と、爾後(クロージングミーティング終了後)に取り消すのが難しくなるので、注意すること。

    12.審査終了後の処理

     審査の結果、軽欠点(軽微な不適合)を何点か指摘されても悲観することは、全くない。軽欠点がゼロという優秀なケースがないこともないが、本審査(初回審査)で多少の軽欠点が出るのはふつうである。軽欠点は少ないに超したことはないが、完璧な状態になるまで準備万端整えて審査を受けることはない。
     しかし、重欠点(重大な不適合)の指摘が出るのは、いただけない。審査で重欠点など喰らうことはない、という甘い考えを持っている人もいるようだが、そんなこともない。審査登録機関によって違いはあるが、重欠点はありうる。
     もっとも初回(事前)訪問で現状のできばえが審査員によって確認されているはずだし、模擬審査や予備審査を受け指摘されたことに真面目に対応している限り、重欠点など喰らう可能性は低い。

     審査の結果、軽欠点の指摘を受けた場合は、設定された期限までに「是正処置」が進むように計画し、管理責任者などが中心になってフォローアップすると共に、是正内容が妥当であるかよく見る必要がある。審査終了時に是正処置の仕方について審査員から説明があると思われるので、あとの対応はそれに従うこと。ふつうは是正処置ができた時点で審査登録機関にその報告を提出し、その内容の審査を受ける。
     観察事項(オブザベーション)は是正する義務はなく、自らの胸に手を当てて「やっぱり具合が悪い」「改善した方が良さそうだ」「良いことを言われた」と思えば処置すればよいし、「審査員からつまらないことを言われた」「処置に値しない(何の役にも立たない、参考にならない)」と思えば、放っておけばよい。

     認証がとれそうな状態(重欠点がない状態)で審査が終了すれば、とりあえず1日だけは関係者同士で「ご苦労さん」と声をかけあい、労いもかねてアルコールで喉を潤してもよい。だが、審査の無事終了は活動の終了では決してない。世界共通の土俵に立ち、これから(システムの維持・改善が)スタートするのだという認識・気構えが必要であり、翌日からはまた気を引き締めて仕事をすることである。認証を取得した途端に気がゆるみ、定期審査(サーベイランス)で重欠点を喰らうことは案外あるから、ご注意あそばせ。

     審査の記憶が新しいうちに、審査での反省点や次回以降の審査の課題をまとめて受審議事録を作っておこう。また、審査登録機関からの請求に基づいて審査費用の支払も必要になってくる。

     定期審査(サーベイランス)では前回の審査で指摘されたことの是正状況の確認がなされるほか、どんなシステム(の有効性)の改善をしたかも訊かれる可能性があるので、そうした準備を今からしておくことが賢明だ。

    13.是正処置の決め手

     ISO9001でもISO14001でも同じなのだが、「是正」処置とは不適合の「原因」に対して手を打つことをいう。ところがよくある初歩的な誤りは、指摘された「不適合」に対して手を打つこと(これも必要だが…)に終始しており、原因を突き詰めてそれに対して手が打たれていないことだ。「不適合を除去すること」はISO9001では不適合品(不適合製品)の管理、ISO14001では緩和処置の一環にあたり、是正処置にはならない。指摘されたことに手を打つのは手直し・修正と言われ、別の観点ではそういう対応を「モグラ叩き」と称する。
     もっとも、このことをよく承知していても、不適合の「原因」を適切に突き止めているケースは少ない。「不適合の原因」はシステムの弱点や欠点を突いたもので、品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)・手順書・様式(書式)の不備を示唆していればよい。
     したがって、「是正処置」の内容が品質マニュアル(環境マネジメントマニュアル)・手順書・様式の見直し改訂や新規制定になっていれば、まず問題ない。
     アイソ・ワールド株式会社に問い合わせのあった実際の事例でQ&A形式によってこれを説明しよう。
    Q:「真の原因を探るためにはナゼナゼを最低5回繰り返す必要がある」とも言われておりますが、この「ナゼナゼ」のやり方が難しく、時系列の説明やただの状況説明に終始したり、最終的には「知識が足りなかった」「教育訓練が不足していた」という形にしてしまいがちです。すると、真の原因はどの現象に対しても「教育訓練不足」になってしまいます。何か良いやり方はありますか。参考書等をご存知でしたら教えて いただけますでしょうか。

    A:「真の原因を探るためにはナゼナゼを最低5回繰り返す必要がある」というのはその通りです。もっとも、真の原因にたどり着くためには、かなりの練習と経験が必要で、慣れないうちは、いい加減なところで原因の追求が止まってしまいます。
     これをうまくやる成功の秘訣を教えましょう。結論が先になりますが、「真の原因はすべて手順書の不備や未整備など、システムの欠陥や弱点にある」と常に思っておけば間違いありません。
     例えば「知識が足りなかった、教育訓練不足の形にしてしまいがちです。すると、真の原因はどの現象に対しても教育不足になってしまいます」についてコメントすると、「教育訓練不足になったのは、なぜか」を更に追求すればよいわけです。教育訓練不足というのは単なる「症状」であって、原因ではありません。
     この結論を言えば、「教育訓練の手順書が不備で、教育訓練を受けた相手が理解して必要なレベルまで到達し、その業務に対応できるだけの能力が十分に備わったかどうかを教育訓練した講師(責任者)が確かめること(手順)を規定していなかった。また、どのレベルまで到達すべきか教育訓練の到達レベル(基準)を明確に決めておらず、その評価の手法も定めていなかった」という具合になるでしょう。
     結局、教育訓練のシステムに欠陥があるわけで、そのための手順書などを整備して「教育訓練が不足していた」などという事態にならないようにする必要があります。
     そうすれば、今後、教育訓練不足によって問題が起こることはあらゆる場合においてなくなります。もしあるとすれば、教育訓練のシステム、またはその実行にまだ問題を含んでいることになります。

     なお、不適合の対処には「原因の除去」だけではなく、次のことも実施するのがよい。
    @不適合の除去(指摘された問題に手を打つこと)
     現物処置(手直し・修理)、応急処置、緩和処置など。
    A波及範囲の特定と処置
     その不適合の影響が及んでいる範囲を特定し、必要な手を打つ。例えば、ISO9001では設計検証に不適合の指摘があった場合、その設計の有効性を確認し問題があるときはその設計によって製造された製品にまでも手を打たねばならない。ISO14001では土壌汚染の不適合が指摘された場合、土壌汚染によって汚染された地下水を近隣で摂取している人の健康状態まで調べて手を打つ必要がある。
    B水平(横)展開
     類似の問題が指摘されたところ以外(他の部署・場所・事例)にもないか、水平展開して手を打つ。

    14.認証取得の活用

     最近では(認証取得は珍しくないので)認証取得しても特に取り立ててPRや宣伝をするケースは減ったが、せっかく認証取得したのだから、これを利用しない手はない。
     認証取得は「システムが認められた」のであって製品認証ではないから、認証取得のPRや宣伝の仕方には注意がいる(多くの場合、審査登録機関からそのあたりの説明があるはずである)。認証ロゴマークの使用が適切に行われているかは定期審査(サーベイランス)で確かめられるから、注意しよう。
     よくある「活用事例」は認証取得を会社案内や名刺に刷り込むことだが、テレフォンカードにしたり、レターヘッドや封筒に印刷するケースもあるし、ホームページに掲げるのは安上がりで最近の傾向になっている。
     認証取得がまだ珍しい事例であれば、新聞発表すると効果があるし、アイソ・ワールド株式会社に連絡いただければいろいろな機会を利用して紹介しますので、お気軽に連絡を。


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