廃食油からディーゼル燃料を作る
有限会社 染谷商店
ふだん何げなくてんぷらや唐揚げに使っている食用油。昔は貴重品とされ、何度も何度もろ過し、最後は炒め物にして使いきっていたそうだ。てんぷら屋やレストランから出る大量の廃油も、回収業者が買い取り、工業製品の原料、肥料の油カスや家畜のえさなどにしたりして、ちゃんとリサイクルされていた。
しかし、10年ほど前に輸入油脂の関税が下がり、海外の安い油が大量に輸入されるようになった。リサイクルするよりも、新しいものを買った方が安くつくようになり、油のリサイクルシステムはつぶれてしまったのである。
現在は、固め剤で固めたり、新聞紙に含ませて捨てている人が多いようだが、焼却時に高温になるため焼却炉を傷めてしまうという問題もでている。もちろん、海や川に流すなんてとんでもない話。大さじ一杯の油を、魚が住める水にまで薄めるには風呂桶約10杯分も必要なのだ。
この厄介者の廃食油を精製し、ディーゼル燃料V.D.F(ベジタブル・ディーゼル・フューエル)を作ったのが染谷商店。
メチルアルコールと触媒を入れて廃食油を反応させ、グリセリンを除去してできあがった。グリセリンを除くと粘性がとれ、サラサラの油になるそうだ。
100リットルの廃食油からできるV.D.F.は95リットル。ほとんどの油が再生できる。
実際に給油して走るようになって約3年。嫌いな人が多い排気ガスの匂いも、ほのかに揚げ物の香りで、地域の人にも好評のようだ。
また、エンジンを改造する必要がなく、ディーゼルエンジンがそのまま使える。燃費も価格(1リットル80円)も軽油とほとんど変わらない。そのうえ、硫黄酸化物を排出しないクリーン・エネルギー。黒煙も軽油に比べて3分の1に減る。
現在、日本全国で出る廃食油の量は年間約40万トンと言われている。そのうち、リサイクルされているのは、たったの20万トンぐらいだとか。その他は何らかの方法で廃棄されている。もし、廃棄されている廃食油を全部有効に使えば、自動車の燃費にもよるが、年間1万キロメートル走るディーゼルエンジン車が約20万台賄えるという計算になる。
染谷商店では、廃食油の処理に困っていたら、ペットボトルなどフタのしっかり閉まる容器に入れて郵送すれば、ひきとるというシステムも作っている。廃食油を送った人は、染谷商店が運営する福島県南郷村にある「ユーズの森」という2,000平方メートルにも及ぶ森で自由に遊ぶことができるなどの特典がつ く。つまり、私たちは、邪魔になっていた廃食油と森林浴を自由に交換できるというわけだ。
このようにして、森林保護に一役かうのもリサイクルのひとつ。
なぜなら、廃食油を燃料にリサイクルしたとしても、自動車から二酸化炭素を排出してしまうからである。その二酸化炭素を酸素に変えてくれる森をつくるのもリサイクルの一環なのだ。森から出た酸素は、大豆などの植物を育て、そして、その大豆は油となり、ちゃんと循環していく。これこそ本当のリサイクルといえるだろう。
有限会社染谷商店 TEL 03-3613-1616
バックナンバーへ
もどる
トップページへ
すすむ