
北九州市ゼロ・エミッション計画
通産省が今年度から取り組みを始めた「エコタウン」のモデル地域として川崎市、北九州市、岐阜県、長野県飯田市が指定された。ここではかつて厳しい産業公害と戦い、克服した経験を持つ北九州市の取り組みを報告する。
![]() | 「エコタウン」とは? |
![]() | 自治体・企業から出る地域の廃棄物をリサイクルによってゼロにする「ゼロ・エミッション」の実現に向けて、リサイクル事業の支援をしようというものです。 |
![]() | 北九州市と「環境」との関係は? |
![]() | 同市は30年ほど前、大気汚染や水質汚濁等の深刻な公害に悩んだすえ、これを克服したという経験があります。このとき蓄積した環境関連のノウハウや技術の集積を活かし、末吉興一市長が提言する「環境技術の援助、協力からビジネスへ」の実現に向けて、環境・リサイクル産業を新分野のビジネスとして育成することを打ち出しています。 |
![]() | 北九州市の「ゼロ・エミッション」計画について教えてください。 |
![]() | 物流に有利な響灘地域にある広大な埋め立て地(2,000ha)の東部(約60ha)に、環境・リサイクル産業の振興拠点となる環境コンンビナート(エコ団地)を整備する予定です。 エコ団地にはすでに新日本製鉄、三井物産、日本通運、山久、日鉄運輸の他、「西日本PETボトルリサイクル」(北九州市が出資する使用済みPETボトルの再生処理工場)が98年春から操業を開始することが決まっています。また、響灘開発と栗田工業による都市ごみ焼却灰のリサイクル実証テストもスタートしています。 |
![]() | 地場企業も環境ビジネスに取り組んでいるのですか。 |
![]() | 公害を克服した経験を持つ地場企業ももちろん活発に取り組んでいます。特に新日鉄関係の仕事が減少した関連企業の意欲が高いと言えます。まさに「環境産業を地盤沈下からの再生の切り札に!」というわけです。具体的には、九築工業(焼酎廃液処理装置)、吉川工業(自動車部品リサイクル)、アステック入江(IC生産で発生する廃液の再生処理)、日本磁力選鋼(金属資源回収、リサイクル装置)、クロサキ(有機廃棄物の高速発酵乾燥処理装置)、環境テクノス(水質、大気などの調査、測定、分析)、大石産業(パルプモールド)、石川金属工業(排水処理装置)などの他、村上精機工作所、アダブテクノ、板井築炉、ソフィアエンジニアリング、九州メタル産業、エコ・テック、イマナカ、三島興産、浜田重工など、挙げればきりがないほどです。 |
![]() | 北九州市はごみ排出量が非常に多いと聞きましたが? |
![]() | 一般家庭からの廃棄物は、のびがようやく少し頭うちになってきましたが、まだ年間で49万トンにもなっています。このため、資源化減量化対策をすすめています。また、素材型産業が多いことから産業廃棄物の発生が多いのも問題となっています。再利用も進んでいますが、年間80万トンが埋立地に最終処分されているのが現状。埋立地は他の自治体にくらべて余裕はありますが無限ではなので、今後の環境産業の展開が必要と考えています。 |
![]() | 具体的に、廃棄物処理の取り組みを教えてください。 |
![]() | 出先工場の環境ビジネスへの取り組みが本腰に入りつつあります。下水汚泥に関しては、三菱マテリアルと共同開発した下水汚泥プラントを利用して、市の下水汚泥の半分、日量約100トンをセメント原料化しています。これにより99年には汚泥の海洋投棄を全面的に中止する予定です。 また一般ごみに関しては、93年度より缶・瓶の分別収集を開始しています。今年度11月からはPETボトルの分別収集も開始し、来年春から操業する第三セクター「西日本PETボトルリサイクル」に搬入し、処理します。また、新日本製鉄はごみ発電工場やRDFシステム(Refuse Derived Fuel;ごみ固形化燃料)の開発に取り組んでいます。 |
![]() | 北九州市の「ゼロエミッション」計画は産学官の協力のもとに事業が進められるそうですが、具体的には? |
![]() | この計画には、九州大学の井村教授、福岡大学の花田教授などの専門家の意見を積極的に取り入れています。また響灘地区に福岡大学資源循環・環境制御システム研究所が開設されます。さらに、市民や企業の理解、協力なくしてエコタウンの実現はありえないため、環境関連の見本市、セミナー、講習会を開催し、関心を高めています。 |
![]() | では、この計画は万事好調に進められているのですね。 |
![]() | いいえ、必ずしもそういうわけにはいきません。この計画にもいくつかの問題点があります。第1に企業が持つ蓄積されたノウハウや技術の集積が、どのような条件のもとに最適な技術選択なのかが明確ではないこと。第2に、これらの技術の実験の場にはつながりますが、はたして環境産業都市化に結び付くものなのかという疑問があること。第3に、企業主導での事業は各々の技術利用のアピールにはなりますが、それらが本当に環境配慮型の技術として最適なのかという疑問があること。また地場企業に関しては、総合エンジニアリング会社がないこと。大手を含め待ちの姿勢が強すぎる、などの問題点が指摘されています。これらの問題解決のために「環境産業推進会議」を8月20日に設立しました。今後、産学官一体となった環境産業都市構築システムを早急に確立しなければならないと考えています。 |
![]() | 最後に、ISO14001の認証を取得される企業の支援もされているそうですが? |
![]() | 北九州市は製造業が多いこともあり、ISO14000シリーズについての関心は非常に高いということがアンケート調査によりわかっています。このため、監査法人や先進的企業などの全面的な協力を得て、北九州テクノセンターや北九州商工会議所と協力しあいセミナーを実施しています。毎回、定員(100名)の倍以上の申し込みをうけており大変好評な様子です。今後は、もっと拡充していく予定。支援措置としては、情報提供やセミナー開催だけでなく、コンサルティング企業の北九州誘致を働きかけています。 |
北九州市の発展の歴史は、そのまま環境との共生を模索する過程である。現在、中国の都市と環境技術提供を行っている同市が、環境産業都市の他地域のモデルとしての役割を担えるのか、今後も注目される。